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専門医+エキスパートに聞くよりよい服薬指導のための基礎知識

part.1 食物アレルギー 専門医療機関での正確な診断と、適切な治療・管理を

2019年6月号
食物アレルギー:専門医の処方を読むの画像
食物アレルギーは、乳幼児期に発症、成長とともに耐性が獲得され、多くの場合寛解するが、その間の日常生活は制限される。また、重症例では、生涯を通じて原因食物の誤食によるアナフィラキシーが出現する可能性がある。食物アレルギーの診断や治療、管理では、正確な対処が求められる。今回は、独立行政法人国立病院機構 相模原病院 臨床研究センターの副臨床研究センター長・アレルギー性疾患研究部長である海老澤元宏氏と、同センター薬剤師の杉崎千鶴子氏、湘北短期大学 生活プロデュース学科の准教授で管理栄養士の林典子氏に、食物アレルギー診療のポイントについて伺った。

専門医療機関での正確な診断と、適切な治療・管理を

Check Points

 典型例は、蕁麻疹やアナフィラキシーなどが原因食物摂取後2時間以内に出現
 原因食物の多くは、鶏卵、牛乳、小麦
 出現した症状に応じて、抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬の投薬やアドレナリン筋注
 必要最小限の食物除去により耐性獲得を目指す

典型例は摂取から2時間以内の症状出現原因抗原は鶏卵、牛乳、小麦が多い

食物アレルギーは、「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義される。本来は人体に害を与えるものではない食物を免疫システムが異物として認識し、過剰なアレルギー反応が引き起こされてしまうのだ。日本における有症率は乳児で約10%、保育所児が5.1%、学童以降が1.3 〜4.5%とされている。全年齢を通して、わが国では推定1 〜2%程度の有症率であると考えられる。
食物アレルギーは、臨床型によって表1のように分類される。この臨床型のうち、最も典型的なのは蕁麻疹やアナフィラキシーといった即時型症状で、原因食物摂取から2時間以内にアレルギー反応による症状を示すことが多い。アレルギー専門医の協力により実施された本邦の調査によれば、原因抗原は鶏卵39.0%、牛乳21.8%、小麦11.7%で、これら上位3種が即時型症状の原因全体の72.5%を占めている。その他の食物としては、ピーナッツ、果物、魚卵、甲殻類、ナッツ類、そば、魚類などが報告されている。
一般的に、乳児から幼児早期の主要原因食物である鶏卵、牛乳、小麦、大豆の自然耐性化率は高く、その他の原因食物の自然耐性化率は低いと考えられている。しかし、食物アレルギーの自然歴に関する報告は少なく、特に主要原因食物以外の耐性化率は臨床経験的なものであり、実際のところは不明といわざるを得ない。自然耐性獲得の機序としては、成長による消化管の消化機能、物理化学的防御機構、経口免疫寛容の発達などが考えられている。

表1 食物アレルギーの臨床型
臨床型 発症年齢 頻度の高い食物 耐性獲得(寛解) アナフィラキシーショックの可能性 食物アレルギーの機序
新生児・乳児消化管
アレルギー
新生児期
乳児期
牛乳
(乳児用調製粉乳)
多くは寛解 (±) 主に
非IgE依存性
食物アレルギーの
関与する乳児アトピー
性皮膚炎
乳児期 鶏卵、牛乳、小麦、大豆など 多くは寛解 (+) 主に
IgE依存性
即時型症状
(蕁麻疹、
アナフィラキシーなど)
乳児期~成人期 乳児~幼児:鶏卵、牛乳、小麦、そば、魚類、ピーナッツなど
学童~成人:甲殻類、魚類、小麦、果物類、そば、ピーナッツなど
鶏卵、牛乳、小麦、大豆などは寛解しやすい
その他は寛解しにくい
(++) IgE依存性
特殊型 食物依存性運動誘発
ナフィラキシー(FDEIA)
学童期~成人期 小麦、エビ、果物など 寛解しにくい (+++) IgE依存性
口腔アレルギー症候群(OAS) 幼児期~成人期 果物・野菜など 寛解しにくい (±) IgE依存性

AMED研究班による食物アレルギーの診療の手引き2017より引用

複数臓器において症状が出現 症状に対する適切な薬剤の投与を

食物アレルギーでは、皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、神経、循環器など全身の多岐にわたる症状がみられる(表2)。このうち、皮膚症状の出現頻度が突出して高く、次いで呼吸器症状、粘膜症状と続く。
アナフィラキシーとは、「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」をいう。「アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」を、アナフィラキシーショックという。食物によるアナフィラキシーは、特異的IgE抗体が関与する即時型反応であるため、典型例では原因食物の摂取後数分以内に症状が出現するが、30分以上経ってから症状を呈する場合もある。また、症状の発現は二相性のこともあり、すべての症状が同時に出現するとは限らないため、注意深い観察が必要となる。
アナフィラキシー発生時の対応としては、グレード3(重症)の症状、または気管支拡張薬吸入で改善しない呼吸器症状がある場合にはアドレナリン筋注の使用が適応となるが、過去の重篤なアナフィラキシーの既往がある場合や、症状の進行が激烈な場合などでは、グレード2(中等症)でもアドレナリン筋注の使用を考慮する。また、原則的にはグレード2(中等症)以上の症…

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