加齢によって筋タンパク質の合成反応は減弱する
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の転帰において、「低栄養」との関連が指摘されています。たとえば、2020年の報告では、「軽度栄養リスク/リスクなしの患者」に比べ「中等度/重度の栄養リスクがある患者」のほうで生存率が有意に低いことが示され、「中等度/重度の栄養リスク」と「PaO2(動脈血酸素分圧)/FiO2(吸入中酸素濃度)比の低値」が、独立した死亡リスク因子であることが同定されています1)。
COVID-19に限らず、「低栄養」はサルコペニア(加齢による骨格筋量の低下)やフレイル(加齢によって生じる可逆的 な身体衰弱)につながり、寝たきりのリスクを増加させます。65歳以上の日本人4,341例を対象とした前向きコホート研究では、健康な人の集団と比べてフレイルを有する集団は要介護となるリスクが約5倍であることが示されています2)。
このため、高齢者の栄養状態を把握することは、寝たきりや疾患の重症化を防ぐポイントの1つとなりますが、思いのほか、栄養状態が不良の高齢者は多いことがわかっています。居宅サービス利用者1,142人(男性460人、女性682人、年齢81.2±8.7歳)を対象とした検討では、「栄養状態良好」は318例(27.8%)に過ぎず、「低栄養のおそれあり」は633例(55.4%)、「低栄養」は191例(16.7%)と、およそ70%の高齢者が栄養状態に問題を抱えていました3)。
高齢者が「低栄養→フレイル」を招く原因として挙げられるのが「タンパク質同化抵抗性」です。体内では、筋タンパク質の合成(同化作用)と分解(異化作用)が常に生じています。栄養の摂取により筋タンパク質の合成が促され、空腹時やストレス、疾患時に分解されます。この合成量と分解量が等しければ、骨格筋…