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赤ちゃんの啼泣(ていきゅう)の法則

2017年6月号
赤ちゃんの啼泣の法則の画像

“座って抱っこ”よりも“抱っこして歩く”と、赤ちゃんの泣く割合は10分の1になる

赤ちゃんが泣く回数や時間は、国によって大きな違いがみられるようです。英国、イタリア、オランダ、ドイツ、デンマーク、日本、米国、カナダなどの赤ちゃん8690人のデータをもとに、Dieter Wolke氏らが分析して報告しています1)。それによると、生後9週間までに他国に比べてよく泣く赤ちゃんが多い国は英国、カナダ、イタリアで、逆に泣くことが少ないのはデンマーク、ドイツ、日本の赤ちゃんでした。この差の原因は、養育方法の違いによるものなのか、遺伝子と関連があるのかは不明ですが、研究チームは「さらに検証を進めると発見があるかもしれない」と述べています。
また、泣き時間(1日あたりの全体平均値)については、生後1~2週間では約2時間、5~6週間で2時間15分という最大値を示し、8~9週間で1時間50分程度に減り、10~12週間ではさらに減って1時間10分になることが分かりました。ただし、個人差が大きく、1日に30分しか泣かない赤ちゃんもいれば、5時間以上泣く赤ちゃんもいたそうです。
一方、赤ちゃんの泣き方のイントネーションについて検証した報告があります2)。フランス語またはドイツ語を話す両親のもとに生まれた生後3~5日の新生児60人の泣き声を録音し、音声パターンを分析したところ、フランスの赤ちゃんは低音から高音へ上がり調子で泣き、ドイツの赤ちゃんは下がり調子で泣くという結果が得られました。研究チームは「ヒトの新生児は、妊娠後期に胎内で聞いていた言語と同じメロディーパターンで泣くことを好む」との見解を示しており、胎児は子宮の中で母親の声を記憶しているという考えを裏づけるものといえそうです。
赤ちゃんが泣く時の原因別パターンについても研究されています。泣く原因としては、空腹、甘え、苦痛、怒り、眠気などが考えられ、それぞれの泣き方の違いがわかれば、親は的確に対処できます。そこで、泣き声の周波数で原因を明らかにする研究などが行われていますが、科学的に証明され、かつ親が利用しやすい対処法は見つかっていません。
泣いている赤ちゃんをあやす場合、親はおもちゃを使ったり、歌を聞かせたり、テレビを見せたりと、様々な方法を使います。古来用いられているのは、抱っこするという方法ですが、抱っこの仕方で効果は異なるようです。理化学研究所やトレント大学などの共同研究チームの報告3)によると、母親が抱っこして歩いている時は、椅子に座って抱っこしている時に比べて赤ちゃんの泣く割合が約10分の1に減ったそうです。単なる立ち抱っこでも、立ち抱っこで揺さぶるのでもないことに注意が必要です。同研究では、マウスの母子を使った実験で「体が持ち上げられ、運ばれている(carrying)」という感覚がおとなしくなる反応を引き出すことも突き止めています。“抱っこして歩く”ことは、赤ちゃんをあやす効果が大きそうですが、親にとっては大変、時には泣きたいこともあるかもしれません。

  1. Dieter Wolke, et al.: THE JOURNAL OF PEDIATRICS; DOI:
    http://dx.doi.org/10.1016/j.jpeds.2017.02.020
  2. Mampe B, et al.: Curr Biol. 2009; 19(23): 1994-1997
  3. Esposito G, et al.: Curr Biol. 2013; 23(9): 739-745

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