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ハイリスク薬加算の薬歴の書き方は?服薬指導例についても解説
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手指衛生の法則

2017年4月号
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手指の細菌数減少には、アルコール消毒が最も効果的

感染症を防ぐため、医療従事者にとって手指の消毒は欠かせません。従来、感染症対策としては、石鹸と流水による手洗いが推奨されていました。しかし、CDC(アメリカ疾病管理予防センター)が2002年に発行した『医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン』において、「手の細菌数減少には、アルコールベースの手指消毒剤が最も効果的である。次に効果が期待されるのは抗菌石鹸/界面活性剤であり、非抗菌石鹸は最も効果が低い」と明記したことにより、アルコール手指消毒が高く評価されるようになりました。
アルコール手指消毒のメリットとしては、消毒効果のほかにも、消毒で費やされる時間が石鹸と流水による手洗い(30~60秒)の約半分で済むこと、手洗い設備が不要でどこでも使用できることなどが挙げられます。もちろん、目に見える汚れが手指に付着した場合は、石鹸と流水による手洗いの後、必要に応じてアルコール消毒を行います。
エタノールやイソプロパノール、または両者の混合を有効成分としたアルコール手指消毒剤は、多くの細菌に優れた効果を示します。ウイルスに対しては、エンベロープと呼ばれる外膜を持つもの(インフルエンザウイルス、ヒトヘルペスウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなど)に効果があります。エンベロープはその大部分が脂質から成るため、アルコールや石鹸などで処理すると容易に破壊でき、ウイルスを不活化できるわけです。
一方、エンベロープを持たないものに対しては、アルコール消毒はほとんど効果がないとされているのですが、近年の研究で必ずしもそうとは言い切れないことが分かりました。例えば、わが国における食中毒の原因の第1位となっているノロウイルスは、エンベロープを持っていません。ところが、ヒトノロウイルスの代替としてマウスノロウイルス(MNV)とネコカリシウイルス(FCV)を用いた研究では、70%エタノールによりMNVは30秒後に約99.7%減少し、FCVに対しては酸性pHのエタノールで効果があった、という結果が示されました(CDC『最新ノロウイルスのアウトブレイクの管理と疾病予防のガイドライン』2011年)。
こうした知見を踏まえ、厚生労働省はWebサイトで掲載している「ノロウイルスに関するQ&A」を修正し、ノロウイルスを減らす最も有効な方法として手洗いを推奨するとともに、消毒用エタノールによる手指消毒を手洗いの補助として認めています。
最近は、リン酸を加えてエタノールのpHを弱酸性にし、より広範囲の細菌・ウイルスに効果のあるアルコール手指消毒剤も発売されています。もっとも、用量をきちんと確認し、WHO(世界保健機関)などが推奨する方法(図)で、手の甲、指の間、指先まで満遍なく擦り込むことが大切です。

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