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外国語様アクセント症候群の法則

2019年10月号
外国語様アクセント症候群の法則の画像

ノルウェー人がドイツ人に、日本人が中国人に変身

世の中には不思議な病気があるもので、「外国語様アクセント症候群(foreign accent syndrome:FAS)」は、その一例といえます。FASは、たとえばイギリス人がフランス語訛りの英語を話すといったように、同じ母国語を使用する第三者が「外国語のようだ」と違和感を持つような発話になってしまう障害です。その特徴として、音の高低や強弱、リズムなどのイントネーションの異常がみられ、一方で語彙・文法機能はほぼ正常に保たれています。
最初の報告は1919年で、左脳卒中によってポルトガル語訛りになったチェコ人男性のケースでした1)。しかし、詳細な検討は行われておらず、病巣や言語所見についての学術的な検討を行った初期代表例としては、ノルウェーの神経学者であるMonrad-Krohnが1947年に発表した報告が挙げられます2)。同報告で紹介されているのが、30歳のノルウェー人女性Astrid.Lさんです。Astridさんは1941年9月、オスロで空爆の被害にあい、8mの高さから転落しました。左脳が露出するほどの大きな脳損傷を負いましたが、4日間の昏睡の後に目覚め、残存した右麻痺や言語障害も徐々に改善して2年後には歩けるようにもなりました。しかし、周囲の人々は奇異な印象を抱きました。彼女がドイツ語訛りになっていたからです。不運なことに、当時のノルウェーはドイツ軍に侵攻されていたため、敵国語の訛りになってしまった Astridさんは、さまざまな不当な扱いを受けることになったそうです。
このAstridさんのケースを含め、国内外のFAS88例の概要をまとめた論文を、横浜市立大学大…

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