Check Points
骨粗鬆症は、骨の病的老化を示す、予防や治療が必要な疾患骨粗鬆症治療においては、作用機序や骨量低下部位の違いから、様々な薬剤が選択される
治療継続による骨折率の低下を目指すために、多職種連携システム「骨粗鬆症リエゾンサービス」の拡充が求められている
アドヒアランスが低下しやすい骨粗鬆症の薬物治療では、薬剤師が寄与する部分が大きい
関連施設と協力し小規模病院でリエゾンサービスを実現
治療率が低い骨粗鬆症 予防と治療が必要な骨の疾患
WHOによると、骨粗鬆症は「低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患」と定義される。骨粗鬆症の患者数は1,280万人(男性300万人、女性980万人)と推定されるが、医療機関で治療を受けているのは、全体の20〜30%にすぎないともいわれている。武蔵台病院の理事長で整形外科部長の河野義彦氏は「骨粗鬆症は単なる『骨の老化現象』ではなく、『骨の病的老化』を示す、予防や治療が必要な疾患であることを認知していただくことが非常に重要です」と語る。
脆弱性骨折の有無や骨密度から診断 骨密度はYAMからの変化量で評価を
原発性骨粗鬆症の診断においては、続発性骨粗鬆症や、骨密度の低下をきたす骨粗鬆症以外の疾患と鑑別する。その上で、脆弱性骨折の有無とその部位、骨密度を合わせた診断基準により確定診断を行う。「原発性骨粗鬆症の診断基準2012年度改訂版」では、①椎体骨折または大腿骨近位部骨折を有する、②その他の脆弱性骨折があり骨密度が若年成人平均値(Young Adult Mean:YAM)の80%未満、③脆弱性骨折はないが骨密度がYAMの70%以下または−2.5SD以下、のいずれかを原発性骨粗鬆症とし、治療開始の対象にしている。また、骨粗鬆症ではないものの、骨量が減少していると診断される例においても、将来骨粗鬆症を発症するリスクが高いとして、一部薬物治療の対象にもなる。
骨粗鬆症の診断について、河野氏は、専門外の医師の骨粗鬆症に対する意識はまだ低いことを指摘する。「非専門医では、骨密度測定の結果を同年齢比較で捉えてしまい、年齢相応の骨量であるから大丈夫と判断してしまうこともあるようですが、骨密度はYAMで評価して、骨質の劣化と併せて診断することが重要です」と話す。
骨吸収と骨形成のバランスが低下 予備群の予防法は栄養や運動、検診
全身の骨は、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成を繰り返し、一生を通じて再構築(リモデリング)し続けている。このリモデリングは約3ヵ月で一周期のペースで行われる。
骨密度を維持するためには、骨吸収と骨形成の量が等しくなければならないが、加齢や、閉経によるエストロゲンの欠乏などによって骨吸収が異常に活性化し、骨形成によって十分に補充できないと骨密度が低下することになる。また、骨密度の他に骨質も骨の強度に関与している。骨質は加齢や閉経、生活習慣病の罹患などによって劣化すると言われている。骨密度と骨質のいずれか一方が低下または劣化すると骨強度が低下し、骨折のリスクが高まる。
こうした骨強度が脆弱した骨粗鬆症予備群では、予防の観点が極めて重要となる。「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」では、骨粗鬆症予防の有効な手段として、カルシウムやビタミンDなどの積極的な摂取や、軽度の動的荷重運動(歩行など)と強度の動的荷重運動(ジョギングなど)の両者の実施を推奨している。また、骨粗鬆症検診の積極的な実施も望まれるとしている。なお、食事指導については予防だけでなく治療としても推奨されており、同ガイドラインに食品の種類が示されている(表1)。
推奨される食品 | カルシウムを多く含む食品(牛乳・乳製品・小魚・緑黄色野菜・大豆・大豆製品) |
ビタミンDを多く含む食品(魚類・キノコ類) | |
ビタミンKを多く含む食品(納豆・緑色野菜) | |
果物と野菜 | |
タンパク質(肉・魚・卵・豆・牛乳・乳製品) | |
過剰摂取を避けるべき食品 | リンを多く含む食品(加工食品・一部の清涼飲料水) |
食塩 | |
カフェインを多く含む食品(コーヒー・紅茶) | |
アルコール |
参考文献1)を参考に編集部作成
年齢や骨密度を考慮した薬剤選択 アドヒアランスの維持が課題
骨粗鬆症治療の薬剤には様々な種類があり、「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」で位置づけられている特徴や各有効性に対する評価も様々である(表2)。
武蔵台病院では、年齢や骨密度に応じて薬剤が選択されている。年齢が若く骨密度がそれほど低くない症例では選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)や活性型ビタミンD3製剤のエルデカルシトールが選択されることが多いとい…