
Part.2 治療継続のポイントは患者の病気に対する正しい理解
かかりつけ薬局だからこそできること
COPDは症状をコントロールすることが重要な疾患である。コントロールすることで増悪を防ぎ、病気の進展を抑制できる。COPDのように症状をコントロールすることでQOLを高め、予後を改善できる病気は少なくない。
「患者さんは治りたい、治してほしい。しかし医師にはコントロールが大事だと言われる。医師や薬剤師の指導を守ってひどい息切れが改善すると、患者さんはコントロールできていることを治ったと解釈して薬を服用しなくなる」。こんなケースも少なくないのだ、と日本大学医学部附属板橋病院薬剤部部長の吉田善一氏は言う。
COPDに限らず、服薬指導では、まず患者が自分の病気のことを正しく理解しているかどうかをチェックすることが大切だ。薬剤師における患者指導のスキルアップをめざして日本大学医学部附属板橋病院薬剤部では、板橋区、豊島区、北区、練馬区の薬剤師会とともに年4回勉強会を開催している。さらに、疑義照会があれば、医局が回答する態勢を整えている。
「言葉遣いや説明の仕方は個々の患者さんによって違うが、この薬を使っていないと将来的に苦しむことになると理解してもらうことが大切」だと吉田氏。
処方される薬剤の作用についてもきちんと説明するが、患者がその説明をどう受け取るかが問題だという。吸入デバイスの使い方についても、患者が説明を正しく理解できたかどうかで使えたり使えなかったりということが起こる。「COPDにおける吸入療法は、副作用を考えたとき最も適切な方法」(吉田氏)なので、デバイスの使い方をマスターすることは必須である。
患者に説明をきちんと受け止めてもらうためには、かかりつけ薬局として患者の性格を把握し、適切な言葉を選んで根気強くつき合うこと以外に対処法はない。COPD患者への服薬指導で重要なポイントをあげると、第一に有害物質(タバコ煙など)の曝露を避けるように指導する。次に医師の処方意図を理解した上で薬剤の作用と使い方を説明すること、そして増悪時の対処法である。このポイントをいかに個々の患者に理解してもらえるように話すかが治療継続、よりよい治療効果につながる。
吸入療法指導における病薬連携は治療継続に必須
東京都板橋区で内科・小児科を開設している萩原医院(萩原照久院長)は、月に20人程度のCOPD患者を管理し、近くのクオール薬局中板橋店と患者の吸入指導で病薬連携を進めている。連携に際しては、帝京大学医学部附属病院薬剤部が作成した吸入指導依頼書・同意書(図4)を活用している。患者は吸入指導依頼書・同意書を処方せんとともに保険薬局に持参し、保険薬局が吸入指導を行う。その後、吸入指導情報提供書を依頼元の医療機関にFAXで送信して担当医に状況を伝える。薬局にタブレット端末があれば「吸入カルテ」を活用してクラウド上で医療機関とやり取りできる。
図4 吸入指導依頼書・同意書(主に気管支喘息患者の対応例)

帝京大学医学部呼吸器内科教授の長瀬洋之氏と同附属病院薬剤部の前田光平氏が作成し、城北地区(東京都)の病薬連携のツールとして使用されている。
吸入デバイスは繰り返し指導することが重要だが、「長く同じデバイスを使っている患者さんの中には、使えていないことを知られたくない方もいます」と語るのは、クオール薬局中板橋店の薬剤師。吸入レッスンの復習テストはこうした患者を指導するきっかけにもなる。
10種類以上もある吸入デバイスを、日常診療の場で医師が説明しつくすのは容易ではない。萩原氏も説明に時間を割くが、保険薬局に指導を依頼できればより効果的だ。前述の中板橋店でも「病院で指導して、さらに薬局でも指導できれば患者さんの不安もなくなるだろう」と病薬連携の効果を期待する。
「一度、デバイスの誤った使い方を身につけてしまうと、症状の改善が期待できないだけでなく、アドヒアランスも悪くなります。それを防ぐ意味では、