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【特定薬剤管理指導加算】「最初に処方された1回に限り算定」って?
専門医+エキスパートに聞くよりよい服薬指導のための基礎知識

【逆流性食道炎】意外に多い相互作用と重複投与 薬剤師のチェック機能に期待

2017年3月号
逆流性食道炎 Part2 意外に多い相互作用と重複投与 薬剤師のチェック機能に期待の画像
胃から食道への酸逆流が引き金となって発症する逆流性食道炎は良性疾患だが、胸やけ、呑酸症状は患者のQOLを著しく低下させる。酸逆流の主なメカニズムは一過性の下部食道括約筋(LES)の弛緩であることから、食道内の過剰な酸曝露時間を正常化する薬物療法と、一過性LES弛緩を誘発しない生活指導がポイントである。今回は、日本医科大学大学院 医学研究科 消化器内科学 大学院教授の岩切勝彦氏に逆流性食道炎の原因、薬物療法、生活指導などについて解説していただいた。また、日本医科大学付属病院 薬剤部の林 太祐氏には、治療に用いられるプロトンポンプ阻害薬(PPI)と他薬剤の相互作用、薬物療法を行っている患者への指導法などについて聞いた。

Part2 意外に多い相互作用と重複投与 薬剤師のチェック機能に期待

H2ブロッカーとPPIまたはPPIとPPIの重複投与に注意

逆流性食道炎は、高齢者だけでなく、ストレスや食事の欧米化の影響により中年層にも少なからずみられる。
逆流性食道炎では、第一選択薬であるPPIの他、胃内容物の滞留時間を低減する目的で、消化管運動機能改善薬や漢方薬の六君子湯が用いられることが多く、制酸剤やアルギン酸塩も使用されている。
これらの薬剤は比較的副作用が少なく、定期的な血液像、肝機能障害のチェックは必要だが、それほど心配する必要はない。ただ、「PPIは比較的下痢の頻度が高く、中には消化剤を併用している患者さんも少なくないようです。やはり、維持療法で長期に服用している患者さんでは胃もたれ感を抱く方がいるのではないでしょうか」と日本医科大学付属病院 薬剤部の林 太祐氏は語る。
逆流性食道炎に用いられる薬剤が処方されている場合、薬剤師はどのような点に注意したらいいだろうか。この点について尋ねると、林氏は、「相互作用と重複投与に注意すべきでしょう。複数の病院を受診している患者さんは、別々の病院から異なるPPIやH2ブロッカーを処方してもらっているケースがみられます。あるいは注射でPPIやH2ブロッカーを使い、内服でPPIを使用しているケースもあります」と話す。
こうしたケースは決して珍しいことではない。PPIはNSAIDs潰瘍の予防にも使えるため、整形外科領域から処方されている場合もある。また低用量のアスピリン処方例にもPPIの適応がある。外来では、PPIは、薬剤性消化性潰瘍の予防薬として位置づけられているため、循環器内科や神経内科外来などにおける低用量のアスピリン処方例でPPI使用頻度は高い。
このような場合、保険薬局でのチェック方法は、第一に「おくすり手帳」での履歴チェックである。患者の中には病院ごとに異なる「おくすり手帳」を持っている人もいる。一冊にまとめてもらうのが望ましいが、複数の「おくすり手帳」を持っているかどうかの確認も必要だ。

肝代謝に関連した相互作用に注意する 必要に応じて患者モニタリングを

相互作用で気をつけたいことは、肝臓の薬物代謝酵素に関連した相互作用である。表2にPPIとH2ブロッカーの主な副作用および相互作用をあげる。CYP2C19で代謝されるPPIは、抗血栓薬のクロピドグレルの効果を減弱させる可能性がある。一方、クロピドグレルもCYP2C19で活性体になるので、CYP2C19をPPIと競合的に取り合ってしまい、その結果、PPIのオメプラゾールでは分解が遅くなり、効果が増強される可能性がある。

表2 PPI・H2受容体拮抗薬の種類と主な副作用、相互作用
  薬剤名 用量(内服に限る)※1 主な副作用※2 主な相互作用※3 製品名
プロトンポンプ
阻害薬
(PPI)
オメプラゾール 1日1回20mg(維持療法除く逆流性食道炎8週間まで)、再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法;1日1回10mg〜20mg 下痢・軟便、AST・ALT・ALP・γ-GTP上昇・WBC減少ショック、アナフィラキシー、汎血球減少症、無顆粒球症、溶血性貧血 など
  • アタザナビル硫酸塩、リルピビリン塩酸塩
  • ジアゼパム、フェニトイン、シロスタゾール、ワルファリン、タクロリムス、ジゴキシン、メチルジゴキシン など
  • イトラコナゾール、ゲフィチニブ、クロピドグレル など
オメプラール(アストラゼネカ)、
オメプラゾン(田辺三菱)
ほか
ランソプラゾール 1日1回30mg(維持療法除く逆流性食道炎8週間まで)、再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法;1日1回15mg。効果不十分の場合1日1回30mg Plt・顆粒球減少、貧血、発疹、瘙痒、便秘、下痢、口渇、頭痛ショック、アナフィラキシー、汎血球減少症 など
  • アタザナビル硫酸塩、リルピビリン塩酸塩
  • タクロリムス、ジゴキシン、メチルジゴキシン など
  • テオフィリン、イトラコナゾール、ゲフィチニブ など
タケプロン(武田)
ほか
ラベプラゾール
ナトリウム
1日1回10mg、病状により1日1回20mgまで。通常8週間まで。PPIで効果不十分;1回10mg(重度の粘膜傷害では20mg)、1日2回。さらに8週可。再発・再燃を繰り返す場合の維持療法;[5mg、10mg錠のみ]1日1回10mg 肝障害、発疹、瘙痒感、WBC減少・増加、好酸球増加、貧血、AST・ALT・ALP・γ-GTP・LDH上昇汎血球減少、無顆粒球症、Plt減少 など
  • アタザナビル硫酸塩、リルピビリン塩酸塩
  • ジゴキシン、メチルジゴキシン など
  • イトラコナゾール、ゲフィチニブ など
パリエット(エーザイ)
ほか
エソメプラゾール
マグネシウム
水和物
1日1回20mg(維持療法除く逆流性食道炎8週間まで)、再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法;1日1回10mg〜20mg 肝酵素上昇ショック、アナフィラキシー、汎血球減少症、無顆粒球症、Plt減少、劇症肝炎 など
  • アタザナビル硫酸塩、リルピビリン塩酸塩
  • ジアゼパム、フェニトイン、シロスタゾール、ワルファリン、タクロリムス、ジゴキシン、メチルジゴキシン など
  • イトラコナゾール、チロシンキナーゼ阻害薬 など
ネキシウム
(アストラゼネカ・第一三共)
ボノプラザンフマル
酸塩
1日1回20mg、4週間まで、効果不十分:8週間まで
再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法;1日1回10mg。効果不十分の場合1日1回20mg
下痢、便秘、腹部膨満、発疹、AST・ALT上昇 など
  • アタザナビル硫酸塩、リルピビリン塩酸塩
  • CYP3A4阻害薬
  • ジゴキシン、メチルジゴキシン など
  • イトラコナゾール、ゲフィチニブ など
タケキャブ(武田)
H2
受容体
拮抗薬
ファモチジン 1回20mg、1日2回(朝・夕食後または就寝前)、または1回40mg、1日1回就寝前 WBC減少、便秘、肝障害、ショック、アナフィラキシー、汎血球減少、無顆粒球症、再生不良性貧血 など
  • アゾール系薬
ガスター(アステラス)
ほか
ラニチジン塩酸塩 1回150mg、1日2回(朝食後または就寝前)、または1回300mg、1日1回就寝前 発疹、肝障害、便秘、下痢、ショック、アナフィラキシー、再生不良性貧血、汎血球・Plt減少、無顆粒球症 など
  • ワルファリン、トリアゾラム など
  • アタザナビル、デラビルジン、ゲフィチニブ など
ザンタック(GSK)
ほか
シメチジン 1回200mg、1日4回または1回400mg、1日2回(朝食後・就寝前) 発疹、女性化乳房、便秘、ショック、アナフィラキシー、再生不良性貧血、汎血球減少 など
  • ワルファリン、ベンゾジアゼピン系薬、抗てんかん薬、三環系抗うつ薬などのP-450で代謝される薬剤 など
タガメット(大日本住友)
ほか
ロキサチジン酢酸
エステル塩酸塩
1回75mg、1日2回(朝食後、就寝前または夕食後)または1回150mg、1日1回就寝前 好酸球増多、便秘、AST・ALT上昇、ショック、再生不良性貧血、無顆粒球症、汎血球・Plt減少 など アルタット(あすか・武田)
ほか
ニザチジン 1回150mg、1日2回(朝食後、就寝前) 発疹、便秘、肝機能異常、ショック、アナフィラキシー、再生不良性貧血、無顆粒球症、汎血球・Plt減少 など
  • ゲフィチニブ、プルリフロキサシン、アタザナビル硫酸塩 など
アシノン(ゼリア)
ほか
ラフチジン 1回10mg、1日2回(朝食後、夕食後または就寝前)、
※重症の逆流性食道炎に対する有効性及び安全性は確立していない。
WBC増加、RBC減少、AST・ALT上昇、尿蛋白異常、ショック、アナフィラキシー、肝障害 など プロテカジン(大鵬)
ほか
  1. 逆流性食道炎の適応
  2. 太字は頻度が高い。下線は重大な副作用。
  3. (▲)併用薬の作用を増強、(△)併用薬の作用を減弱、(●)本剤の作用を増強

添付文書をもとに編集部作成

相互作用としては見落としがちだが、酸分泌抑制状態では効果が減弱する薬剤もある。酸がないと活性化しない、あるいは、酸がある状況で吸収される薬剤は意外に多い。たとえば、HIVに用いる抗ウイルス薬(アタザナビルやリルピビリン)は併用禁忌となっている。またチロシンキナーゼ阻害薬のゲフィチニブやエルロチニブは吸収低下により、ポリカルボフィルカルシウムや、ジゴキシンなどは胃酸により活性化されるためPPI服用の影響を受けやすい。また一方の添付文書には記載があるが、一方の添付文書には記載がないこともあり注意が必要である。
こうした薬剤がPPIと併用されていた場合、「代替薬品があれば、疑義照会で薬剤の変更を提案すべき」と林氏。疑義照会しにくいケースでは「(併用により)こんな症状(副作用)が出る可能性があるので、症状が出たら知らせてほしい。また、効果がないと感じた場合も、教えてほしい」と患者に伝えることも1つの方法だ。
医師によっては、適用用量を超えた処方せんを出す場合もある。H.pyloriの除菌療法では倍量のPPIを処方するケースは珍しくない。「GERD治療では、倍量のPPIで97%の酸分泌抑制が得られるというデータもあるので、逆流性食道炎でも倍量を処方するケースはあると思われますが、保険適用外の処方がみられたら医師に問い合わせることは必須です」と林氏は語る。

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服薬指導で常に問題になるのが、服薬アドヒアランスである。

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