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専門医+エキスパートに聞くよりよい服薬指導のための基礎知識

アトピー性皮膚炎Part.1 新薬の登場で治療選択肢が増えたAD治療抗体医薬は患者の適応を見極めて使用

2019年1月号
part.1 アトピー性皮膚炎の画像

抗体医薬の登場とガイドライン改訂で転換期を迎える
皮膚科のコモンディジーズであるアトピー性皮膚炎(AD)の患者は、日本では40万人以上で増加傾向にあり、経過は長期にわたる。2018 年、重症者の治療薬として、初めての生物学的製剤(抗体医薬)であるデュピルマブが承認され、ガイドラインが改訂されるなど大きな転換期を迎えている。京都大学大学院医学研究科皮膚科学講師の本田哲也氏と同医学部附属病院薬剤部の山嶋仁実氏、岡村みや子氏に、AD 治療のポイントを解説いただいた。

Check Point

 増悪と寛解を繰り返す慢性疾患
 保湿と炎症の改善が治療の基本
 ステロイド外用薬は病勢に応じ調整する
 内服免疫抑制薬の選択と副作用に注意する

新薬の登場で治療選択肢が増えたAD治療抗体医薬は患者の適応を見極めて使用

遺伝と環境が複合的に関与約45万人が罹患

アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚バリア障害と免疫の制御異常による慢性湿疹を特徴とする皮膚疾患で、痒みを伴う皮疹を生じ、増悪と寛解を繰り返すのが特徴である。
先進国ではAD患者は増加傾向にあり、厚生労働省の平成26年患者調査によると患者数は45万6,000人に上る。小児の疾患で成人すれば治るものと考えられがちだが、有病率は4ヵ月~ 6歳で11%前後、20歳~ 30歳代で9%前後と、成人でも一定割合の患者が認められている(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018)。
発症には、遺伝要因と環境要因が関わっており、前者では、いわゆるアトピー素因が知られている。家族歴、アレルギー疾患の病歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数)、IgE抗体を産生しやすい素因を持っていることなどが含まれる。
また、環境要因には、乾燥などにより皮膚のバリア機能が保てなくなっていることがあり、発症予防においても重要である。ADの発症機序については、なお解明されていないことが多いが、病因に基づく分類も試みられており、例えば、内因性と外因性という考え方がある。ほとんどは外因性ADであるが、内因性ADでは金属アレルギーの合併が多く、IgEが上がらないなどの特徴がある。
皮疹は、乳児期では頭、顔に多く、その後、体幹や手足へと拡大していく(図1)。強い搔痒を伴い、一般に季節によって増悪と寛解を繰り返す。乾燥しやすい冬季や春先、あるいは夏の運動時に増悪する傾向がある。典型例では、小児期に発症して、中学生ぐらいになると病勢が落ち着いて寛解に至ることが多いとされる。一方、症状を持ち越すケースもあり、成人で初めて発症する例もある。寛解しても、遺伝要因として、いわゆる敏感肌の体質が維持されることが多い。

図1 アトピー性皮膚炎の臨床写真

図1 アトピー性皮膚炎の臨床写真の画像

提供 本田 哲也氏

臨床症状の数値化と臨床検査値で重症度や病勢を診断

ADに特徴的な臨床症状は、①搔痒、②ADの特徴的皮疹と分布、③慢性・反復性経過の3つで、これらをすべて満たすものは重症度を問わずADと診断される。ただし、ADは発症部位により重症度が異なりそれらの重症度に応じて治療薬が選択されるため、部位ごとの重症度の判定が重要となる。アトピー性皮膚炎診療ガイドラインには、重症度の分類の簡便な方法として、個々の皮疹を、軽度の皮疹または強い炎症を伴う皮疹の2つに分け、それらの体表面積に占める割合によって4段階(軽症、中等症、重症、最重症)に分類する方法などが記載されている。
一方で、ADの病勢診断では、臨床症状の視診だけでなく臨床検査もしばしば行われる。血清IgE値は多くのAD患者で高値を示し、ADの長期的な病勢を確認する際に参考とされる。また、短期的な確認には、末梢血好酸球数や血清LDH値、血清TARC値などが用いられる。中でも、血清TARC値はさまざまな論文でその有用性が示されており、血清LDH値などに比べ病勢を鋭敏に反映する指標であると考えられている。ただし、小児AD患者においては、年齢が低いほどに血清TARC値が高くなる傾向があるなど、年齢によって基準値が異なることは注意すべきとされている。
なお、ADの特徴的な臨床症状である搔痒の評価としては、VAS(visual analogue scale)が有用とされているが、最近では、夜間就寝中の引っ搔き行動を自動的に記録するためのスマートウォッチ用アプリなども開発されている。

治療はステロイドを中心とした外用が基本 内服療法や心身医学的治療も

日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018年版では、ADの治療目標は「症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、その状態を維持すること」とされている。つまり、まずは速やかに寛解状態へ導き、その状態を維持することがAD治療の基本的な考え方となる(図2)。この考え方に基づき、AD治療では、個々の病態に沿って、①薬物療法、②皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア、③悪化因子の検索と対策の3点が組み合わされて行われている。

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