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漢方の基礎と臨床 産婦人科における漢方薬の使い方

2018年9月号
漢方の基礎と臨床 産婦人科における漢方薬の使い方の画像

医師の8割が処方しているといわれる漢方薬。薬剤師にとっても身近な薬剤となっています。しかしながら、西洋医学的に同じ病名であっても異なる漢方薬が処方されるなど、漢方医学独特の診断法や薬剤選択に戸惑うことがあるという声もよく聞かれます。いまや高齢者医療や緩和ケアなどでも欠かせない存在になっている漢方薬について、今号では基本に立ち返り、第1部と第2部に分けて、漢方の基本的な考え方と産婦人科における臨床の実際を学びます。

女性のライフステージと疾患月経は女性の身体の鏡

いまでこそ、西洋医学の現場でもさまざまな疾患に使われている漢方薬ですが、産婦人科領域では以前から頻用されてきました。
漢方薬の特徴として、①検査をしてもわからない愁訴に強い、②複数の症状に1剤(複数の生薬を配合)で対応できることもある、③病名がつかない症状にも対応できることがある、などがあります。産婦人科で扱う疾患の中には、月経異常、不定愁訴、冷え症、更年期障害など機能的な異常も多く、当然のことながら漢方薬の出番が多くなります。たとえば「頭が痛い」「食欲がない」「むくむ」「イライラする」などの症状があり、病院でいろいろな検査を受けても特に異常がなく、通常の治療に当てはまらない場合など漢方薬は強い味方になってくれます。更年期などには心身の複数の症状を訴える人が少なくないのですが、さまざまな生薬の効能・作用がある漢方薬なら1剤で複数の症状に効果がみられることもあります。冷え症や不定愁訴のように、西洋医学では病気としてとらえにくい不調や症状に対しても漢方薬なら効果が期待できます。
漢方医学では、女性の一生を7歳ごとの変化ととらえています。「7歳には永久歯に生え替わり頭髪も伸びて、14歳には月経が始まり妊娠能力を獲得する。21歳になると身体全体の均整がとれ、28歳で極に達する。35歳になるとそろそろ衰えがみえ、42歳になると顔がやつれ、白髪が生じる。49歳になると閉経となる」(『黄帝内経・素問』より)というわけです。そして、ライフステージの場面ごとに特徴的な疾患・不調が起こりやすいと考えられています。現在でも閉経年齢はほとんど変わっていません。
しかし近年、女性の社会進出などに伴って晩婚化、晩産化、少子化が進み、女性を取り巻く環境や生活は大きく変わりました。その結果、女性の疾病構造も大きく変化しました。月経に関連する疾患・症状が急増し、月経前症候群や月経困難症、月経不順などに悩む女性が増えているのです。月経は女性の身体の鏡です。月経に何らかの問題が起こったときは、自分の身体のバランスがどこか崩れているシグナルと考えます。治療を考えると同時に生活を見直し、自分の身体に目を向けてあげることが大切です。そうした身体のバランスが崩れる主要な原因の1つになっているのが「冷え」です。

婦人科疾患における「冷え」の重要性

現代の日本では「冷え症」に悩む女性が多くみられます。「冷え症」とは、何らかの原因で自律神経がうまく機能しなくなり、血液の循環が悪くなる状態です。一般に、「通常の人が苦痛を感じない程度の温度環境下において、全身あるいは身体の一部に異常な冷えを感じやすいもの」を「冷え症」と呼んでいます。男性よりも筋肉量が少ない女性のほうが冷え症になりやすく、女性の7割、男性の1割が冷えに悩まされているといわれます。
現代の女性は、冷えやすい生活習慣と環境にあります。たとえば過度の冷房や冷たい飲食物は、身体を内外から冷やします。過度なストレスは体温調節に関わる自律神経を乱し、冷えを生じさせます。運動をしなくなると筋肉量が減り、体内の熱産生がされにくくなります。激しい食事制限なども体内の熱産生を低下させることにより、過食は血流を滞らせることにより、冷えを生じます。鎮痛薬の乱用も問題です。頭痛や月経痛を抑えるために鎮痛薬を使用している人も多いのですが、鎮痛薬を飲むと体温は約0.5℃下がる…

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