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増え続けるうつ病 正しい理解とサポートで自殺を防ぐ

2020年10月号
増え続けるうつ病 正しい理解とサポートで自殺を防ぐの画像

昨今のコロナ禍で社会全体に今までにないストレスが蔓延し、「コロナうつ」といった言葉も出てきましたが、コロナ以前から、うつ病患者数は増加の一途を辿っています。うつ病は自殺を引き起こす大きな原因のひとつで、社会全体でうつ病よる自殺を防いでいかなければなりません。今回は、長年うつ病診療に携わってこられた、日本うつ病センター理事/六番町メンタルクリニック名誉院長の野村総一郎氏に、うつ病の病態や治療、サポートについて解説していただきました。

うつ病の多彩な症状 身体の変化や周囲からみた変化も

うつ病の症状の中心は抑うつ気分で、精神的なエネルギーが極端に低下し、ひどく憂うつな気持ちが続き日常生活に支障をきたしている状態です。憂うつ感とともに、何に対しても興味が持てない、喜びを感じないという興味や喜びの喪失、意欲の低下、焦燥感や罪悪感などの精神症状がみられます。さらに、多くの患者さんで精神症状に加えて睡眠障害や食欲低下、倦怠感、易疲労感など様々な身体症状や、周囲からみてわかる変化が出現します(表1)。

表1 うつ病の症状
精神症状 抑うつ気分(憂うつ、気分が重い)、何をしても楽しくない、何にも興味がわかない、イライラする、何かにせき立てられているようで落ち着かない、悪いことをしたように感じて自分を責める、自分には価値がないと感じる、思考力が落ちる、死にたくなる
身体症状 睡眠障害(不眠、過眠)、食欲低下(または増進)、倦怠感、易疲労感、無気力、性欲減退、頭痛、肩こり、動悸、胃部不快感、便秘、めまい、口渇
周囲からみた変化 元気がない、表情が暗い、涙もろくなった、反応が遅い、落ち着かない、飲酒量が増える

厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」ホームページおよび野村氏の話を参考に編集部作成

このような多彩な症状を呈するうつ病の診断には、世界的にアメリカ精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」の診断基準が用いられるようになってきています。まず、「抑うつと気分」または「意欲・興味の低下」の2項目のいずれかひとつ以上に当てはまり、「食欲低下(または増進)」、「不眠(または傾眠)」、「焦燥感あるいは制止(行動の低下)」、「倦怠感」、「自責感」、「集中力低下・決断困難」、「自殺念慮」の7項目のうちの3~4つが当てはまる場合、うつ病の可能性が疑われます(図1)。抑うつを呈する類似疾患として双極性障害がありますが、うつ病は抑うつエピソードだけを呈するのに対し、双極性障害は抑うつエピソードだけでなく、反対に元気があり過ぎる躁エピソードの両方を呈する疾患です。

図1 うつ病自己診断テスト

うつ病自己診断テストの画像

野村総一郎氏提供

うつ病の様々なタイプ

一口にうつ病といってもいろいろなサブタイプがあります(表2)。どのタイプのうつ病なのかを判定することもその後の治療において重要となります。

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