特集

緑内障を理解し失明を防ぐ-眼圧メカニズムから禁忌の最新情報まで-

2021年2月号
緑内障を理解し失明を防ぐ-眼圧メカニズムから禁忌の最新情報まで-

「40歳以上の20人に1人は緑内障」です。進行すると失明にいたることもある緑内障。しかし、ある程度進行していても自覚症状がほとんどないことから、潜在患者が非常に多いことが推測されています。今回は、緑内障専門医の井上眼科病院院長 井上賢治氏に、緑内障のメカニズムや治療、禁忌の情報、治療経過における重要なポイントについて解説いただきました。

緑内障の発症に関わる眼圧は房水の量で決まる

緑内障は、視神経(眼が見た情報を脳へ伝えるケーブルのような組織)の障害と、それに対応する視野の障害が認められる疾患です。視神経障害および視野障害は進行性、非可逆性であり、進行すると失明にまで及ぶこともあります。
緑内障は、視神経乳頭と呼ばれる部分が眼圧により障害されることが発症の機序とされています。もっとも最近では、眼圧が正常範囲内でも緑内障を発症する症例や、治療により眼圧を十分に下降させても進行する症例が見られ、眼圧以外の因子についても論じられていますが、眼圧が重要な因子であることは間違いありません。
眼圧とは、その名が示すとおり眼球内の圧力です。眼圧によって眼球の形状が保持されています。眼圧は、眼球内を満たす「房水」によって生じます。房水は、毛様体で毎日一定量産生され、角膜・水晶体・硝子体など血管のない組織に栄養を与えた後に、虹彩の裏側を通り隅角から排出されます(図1)。この房水の産生量と排出(流出)量のバランスにより眼圧が規定されるのです。つまり、産生量が増える、あるいは流出量が減ると眼圧は上がり、逆の場合には眼圧は下がることになります。
眼圧は10~20mmHgが正常範囲とされています。また、眼圧は日内変動や季節変動があります。一般的には、1日の中で午前中が高く、季節の中では冬に上がるといわれています。

図1 眼圧を保つ房水

眼圧を保つ房水
井上賢治氏ご提供

緑内障のタイプとタイプ別の緑内障有病率

緑内障は、原発緑内障、続発緑内障、小児緑内障の3種に大別されます。そのうち、原発緑内障は、「閉塞隅角緑内障」と「開放隅角緑内障」に分かれます。閉塞隅角緑内障は、隅角の角度(角膜と虹彩の角度)が狭くなっているために、房水が排出されず眼圧が上がるタイプ、開放隅角緑内障は、隅角の角度は正常ですが、その先の部分が詰まっているため房水の排出量が十分でない状態で、結果的に閉塞隅角と同様に眼圧が上がってしまうタイプです。
日本緑内障学会が2000~2001年に実施した疫学調査の結果では、40歳以上の緑内障の有病率は5.0%と推計されていますが、これを病型で見ると原発開放隅角緑内障が3.9%、その中で眼圧が正常域の正常眼圧緑内障が3.6%と、日本人では原発開放隅角緑内障、特に正常眼圧緑内障の有病率が非常に高いことが示されています。また、性別の差として、原発閉塞隅角緑内障は、女性は男性の約3倍の有病率とされています1,2)
原発閉塞隅角緑内障では、形態学的な異常により房水の流出に異常をきたしていることから、まれに急激な眼圧上昇を起こすことがあり、その際は激しい眼痛や頭痛などを発症する「急性緑内障発作」をきたすことがあります。一方、原発開放隅角緑内障では特に大きな症状はありません。

予備群の段階で視神経が障害されている

緑内障性の視神経変化は、視神経乳頭が障害を受けることで発生します。視神経乳頭に流入する部分には生理的に凹みがあります。また、その後方にある部位は脆弱な組織のため、眼圧による機械的な圧迫を受けることで陥凹が拡大し視神経が障害されてしまうのです(図2)。緑内障では、これらの視神経障害が視野障害に先行して出現します。この視野障害が出現する前の状態は「前視野緑内障」と呼ばれ、いわば緑内障予備群です。診断学、診断機器が進歩した現在では、この段階で発見し注意深く経過を観察することが非常に重要となっています。

図2 緑内障性視神経変化

緑内障性視神経変化 眼球の構造(眼の横断面)
緑内障性視神経変化2 正常眼の眼底(正面からの写真)
緑内障性視神経変化3 緑内障眼の眼底

色調の明るい部分が視神経乳頭。陥凹が拡大すると色調が部分的にさらに明るくなるが、色調だけでなく血管の走行から陥凹の拡大の程度(凹み具合)を判定する。右の緑内障眼では上下方向に乳頭陥凹が拡大し、緑内障に特徴的な所見の一つである網膜視神経線維層欠損(帯状の陰のような部位)が認められる。この部位に対応する鼻側上下の視野に視野障害が存在することが予想される。

井上賢治氏ご提供

この記事の関連キーワード

この記事の冊子

特集

【緑内障の最新情報】点眼薬の第一選択と禁忌、副作用を網羅

緑内障のメカニズムや治療に関する内容です。慢性疾患を発症した場合の禁忌薬、点眼指導のポイントなど薬剤師として明日から役立つ情報となっています。

緑内障を理解し失明を防ぐ-眼圧メカニズムから禁忌の最新情報まで-の画像
Special Report

選ばれる薬局づくり、コンセプトはランタンの灯り

カフェ風薬局、ランタン千歳鳥山店を考案・デザインした田辺正道氏へのインタビュー記事です。服薬指導やコミュニケーションツールを工夫し、患者との距離感を大切にする調剤薬局が掲載されています。

野菜を積極的に販売するカフェ風薬局の画像
Early Bird

新型コロナウイルスの気になる情報を一挙公開

日本と海外の状況を比較しつつ、2021年1月31日時点での情報を公開しました。後遺症や変異株についての疑問、ワクチンの安全性や供給数、副反応などを一問一答式で回答します。

新型コロナウイルス一問一答 続編の画像
カフェ

ファーマスタイル編集部がお届けするカフェMENUVol.8「加湿器」

風邪やインフルエンザなどへの感染予防対策として利用する「加湿器」に関する情報です。加湿器の衛生管理不足による疾患や感染者数のデータが掲載されています。

ファーマスタイル編集部がお届けするカフェMENUVol.8「加湿器」の画像
keyword

医薬品の安定確保へ、医薬品供給調整スキーム導入

日本製薬団体連合会(日薬連)と厚生労働省が連携し、13成分に対して医薬品供給調整スキームを発動。大規模な供給不安の混乱を防ぐために、発生時の手順とフェーズ別の対応方向性を提示しました。

医薬品の安定確保へ、医薬品供給調整スキーム導入の画像
Medical Diagram

ウイルス学研究「コロナウイルスと新型コロナウイルス」の二面性

ウイルスを学問から解説。歴史からコロナウイルスを分析し、ウイルスと他の生物の「共進化」について考察しています。生物にとってウイルスが命を奪うものなのか、それとも発達に寄与するのか、実験結果より言及した内容です。

ウイルス学研究「コロナウイルスと新型コロナウイルス」の二面性の画像

人気記事ランキング