薬剤師トップ  〉 ファーマスタイル  〉 臨床・疾患  〉 特集  〉 2018年度調剤報酬・調剤報酬改定のポイント 病院薬剤師編
check
【特定薬剤管理指導加算】「イ(RMP)」「ロ(選定療養)」算定Q&A
特集

2018年度調剤報酬・調剤報酬改定のポイント 病院薬剤師編

2018年5月号
2018年度診療報酬・調剤報酬改定のポイント病院薬剤師編の画像
2018年度診療報酬・調剤報酬改定が4月1日よりスタートしました。病院・薬局で働く薬剤師にどのような影響があるのか、今回の改定結果を活かすために知っておくべきポイントを、現場をよく知る専門家に解説していただきました。
病院薬剤師編
2018年度診療報酬改定は、診療報酬本体の改定率が+0.55%(国費ベース約600億円)で、薬価の改定率は、マイナス(▲)1.65%(約1,800億円)、材料価格は▲0.09%(約100億円)で両者を合わせて▲1.74%であり、診療報酬全体の改定率は▲1.19%(約1,300億円)となりました。その他、本体の外枠として、いわゆる大型門前薬局に対する評価の適正化で0.06%(約60億円)の措置が講じられました。
今回の診療報酬改定の重点課題は、地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進です。その具体的な方向性として、・地域包括ケアシステムの構築のための取り組み強化、・かかりつけ薬剤師・薬局などの機能の評価、・医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価、・外来医療の機能分化、重症化予防の取り組みの推進、・質の高い在宅医療・訪問看護の確保などが具体的方向性の例として示されています。病院薬剤師関連では、チーム医療等の推進等の勤務環境の改善、感染症対策や薬剤耐性対策・医療安全の推進、後発医薬品の使用促進、医薬品の適正使用の推進などが挙げられています。主な改定内容について解説します。

感染防止対策加算の評価

薬剤耐性(AMR)対策の推進、特に抗菌薬の適正使用の観点から、感染防止対策加算の要件が見直されました。さらに抗菌薬適正使用支援チームの取り組みに対して「抗菌薬適正使用支援加算100点」が新設されました。抗菌薬適正使用支援チームは、医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師で構成され、薬剤師は3年以上の病院薬剤師経験を持つ感染症診療に関わる専任の薬剤師とされ、構成員のうち1名を専従配置することが必要です。
チームとしての主な業務は、広域抗菌薬等の使用患者などのモニタリング実施、モニタリング結果の主治医へのフィードバック、抗菌薬使用状況などのアウトカム指標の評価、抗菌薬の適正使用を目的とした職員研修の実施、使用可能な抗菌薬の種類・用量等の定期的な見直しなどが挙げられています。

入退院支援の推進

入院を予定している患者が入院生活や入院後にどのような治療過程を経るのかイメージでき、安心して入院医療を受けられるように、より優しく丁寧な医療を推進する観点から、外来において、入院の予定が決まった患者に対し、入院中に行われる治療の説明、入院生活に関するオリエンテーション、持参薬の確認、褥瘡・栄養スクリーニング等を実施し、支援を行った場合に「入院時支援加算200点」が新設されました。算定対象患者は、自宅等(他の医療機関から転院する患者は除く)から入院する患者であり、入院前支援を行う担当者を入退院支援部門に配置することなどが施設基準となっています。

サリドマイド及びその誘導体の安全管理

サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミドは多発性骨髄腫等の治療薬ですが、催奇形性を有する薬剤であることから、胎児暴露防止の観点から安全管理手順(TERMSおよびRevMate)が承認要件として定められています。処方や調剤に際し、医師及び薬剤師が患者の服薬状況や遵守事項を確認し、確認票を製薬企業へ送信することとされています。
この度、服薬による安全管理の遵守状況を確認し、その結果を所定の機関(TERMS管理センター又はRevMateセンター)に報告し、投与の妥当性を確認した上で、患者に必要な指導を行った場合に算定できる「特定薬剤治療管理料2 100点」が新設されました。昨年は、入院患者における誤投与が数多く発生していますが、今後は医師や看護師との連携を強化し薬剤による胎児暴露を完全に防止する必要があります。

後発医薬品の使用促進

「骨太の方針2017」において、2020年(平成32年)9月までに後発医薬品の使用割合を80%とし、できる限り早い時期に達成できるよう、更なる使用促進策を検討するとされました。医療機関における後発医薬品の使用促進のため、「後発医薬品使用体制加算1」が85%以上、「加算2」が80%以上85%未満、「加算3」が70%以上80%未満、「加算4」が60%以上70%未満の4段階に変更されました。院内処方を行う診療所において、「外来後発医薬品使用体制加算1」が85%以上、「加算2」が75%以上85%未満、「加算3」が70%以上75%未満の3段階となっています。また、後発医薬品の使用促進に一定の効果があるとの調査結果等を踏まえ、より一般名による処方が推進されるように一般名処方加算の点数を倍増する評価が行われました。後発医薬品の使用を促進するため、薬剤師には、適切な後発医薬品の選択や医師等への情報提供が求められています。

向精神薬処方の適正化

向精神薬の多剤処方やベンゾジアゼピン系の抗不安薬等の長期処方を是正するため、処方料や処方箋料の要件が見直され、報酬が引き下げられました。今回より、減算となる多剤処方の範囲に4種類以上の抗不安薬及び睡眠薬が加わります。ベンゾジアゼピン系薬剤を12か月以上処方している場合の処方料や処方箋料も引き下げられました。また、薬剤師や看護師が医師と連携して向精神薬が多剤処方されている患者の減薬に取り組んだ場合に「向精神薬調整連携加算12点」が新設されました。

表 主な改定項目
増減等 改定項目 点数
新設 入院時支援加算 200点
新設 薬剤適正使用連携加算 30点
同額 在宅患者訪問薬剤管理指導料1 650点
増額 在宅患者訪問薬剤管理指導料2 320点
新設 在宅患者訪問薬剤管理指導料3 290点
減額 感染防止対策加算1 390点
減額 感染防止対策加算2 90点
新設 抗菌薬適正使用支援加算 100点
同額 医療安全対策加算1 85点
減額 医療安全対策加算2 30点
新設 医療安全対策地域連携加算1 50点
新設 医療安全対策地域連携加算2 20点
減額 緩和ケア診療加算 390点
減額 外来緩和ケア管理料 290点
増額 後発医薬品使用体制加算1 45点
増額 後発医薬品使用体制加算2 40点
増額 後発医薬品使用体制加算3 35点
新設 後発医薬品使用体制加算4 22点
増額 外来後発医薬品使用体制加算1 5点
増額 外来後発医薬品使用体制加算2 4点
増額 外来後発医薬品使用体制加算3 2点
増額 一般名処方加算1 6点
増額 一般名処方加算2 4点
減額 (向精神薬等の多剤投与)処方料 18点
減額 (向精神薬等の多剤投与)処方箋料 28点
新設 (抗不安薬等の長期投与)処方料 29点
新設 (抗不安薬等の長期投与)処方箋料 40点
新設 向精神薬調整連携加算 12点
新設 特定薬剤治療管理料2 100点

編集部作成

おわりに

今回の改定では、地域包括ケア病棟入院料に包括されていた薬剤総合評価調整加算が出来高へ移行したこと、退院時共同指導料で病院の薬剤師による共同指導が算定対象とされたこと、在宅患者訪問薬剤管理指導料が居宅場所に応じた評価になったことも注目されます。また、医療安全対策で医療機関の連携を評価したこと、チーム医療における専従要件を緩和したこと、カンファレンスなどに情報通信技術(ICT)を活用できること、無菌製剤処理料の算定要件に皮内・皮下・筋肉内注射が加わったこともポイントです。病院薬剤師の業務は、病院内の業務から、医療連携による地域の医療チームとしての活動も求められています。チーム内での薬剤師として責任ある活動が質の高い薬物療法につながり、患者や他の医療者からの評価が次の評価に結びつきます。薬剤師には、患者のため、薬物療法の質の向上のため、積極的な活動が求められています。

この記事の関連キーワード

この記事の冊子

特集

超高齢社会で訪れる認知症との共生

認知症になってもその人らしく生きるためにはどうしたらよいのでしょうか?さらに家族や社会は認知症の人とどう向き合い、どう接したらよいのでしょう?

認知症との共生を目指しての画像
専門医+エキスパートに聞くよりよい服薬指導のための基礎知識

“75歳以上の高齢者”に潜む薬物療法のリスク

75歳以上の高齢患者では多剤併用による服薬量の増加や身体機能の衰えなどによって有害 事象が増加する。薬剤師には処方薬剤だけでなく、全身のデータを管理した上での服薬管理が求められています。患者のQOL向上の鍵とは?

“75歳以上の高齢者”に潜む薬物療法のリスクの画像
専門医+エキスパートに聞くよりよい服薬指導のための基礎知識

“医学的に若返りを示す高齢者”への服薬指導

「薬が何のために処方されているのか」「どのような効果があるのか」「どのような有害事象があるのか」を理解している患者さんは少ない。高齢患者の薬物療法の見直しに必要とされる薬剤師の主体性とは?

“医学的に若返りを示す高齢者”への服薬指導の画像
ここに注目!知っているようで知らない疾患のガイセツ

知っているようで知らない 疾患のガイセツ 多発性骨髄腫

血液細胞の1つである形質細胞が「がん化」して増殖する多発性骨髄腫。近年新しい治療薬が続々と登場し、治療効果をもたらした新薬は、延命から治癒へと治療法の転換を促し、発症予防の可能性も期待されるようになりました。

知っているようで知らない 疾患のガイセツ 多発性骨髄腫の画像
special Interview

薬価制度の抜本改革がめざす方向性とは

「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」の両立という、困難な命題のもとで進められた薬価制度の抜本改革が取りまとめられました。厚生労働省で改革を進めた一人である目黒朗氏に改革の狙いを聞きました。

薬価制度の抜本改革がめざす方向性とはの画像
special Interview

2018年度調剤報酬改定まとめ

「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」など4つの柱を掲げ、調剤報酬では地域医療に貢献する薬局や対人業務の評価を充実した一方、いわゆる門前薬局等の評価を引き下げる内容となりました。

2018年度調剤報酬改定まとめの画像
特集

2018年度調剤報酬・調剤報酬改定のポイント 病院薬剤師編

2018年度診療報酬・調剤報酬改定が4月1日よりスタートしました。病院薬剤師にとってどのような影響があるのか、今回の改定結果を活かすために知っておくべきポイントを、現場をよく知る専門家に解説していただきました。

2018年度調剤報酬・調剤報酬改定のポイント 病院薬剤師編の画像
特集

2018年度調剤報酬・調剤報酬改定のポイント 薬局薬剤師編

2018年度診療報酬・調剤報酬改定のポイント 薬局薬剤師編 2018年度診療報酬・調剤報酬改定が4月1日よりスタートしました。薬局薬剤師にとってどのような影響があるのか、今回の改定結果を活かすために知っておくべきポイントを、現場をよく知る専門家に解説していただきました。

2018年度調剤報酬・調剤報酬改定のポイント 薬局薬剤師編の画像
Medical Diagram

私たちは「ドーパミンの奴隷」なのか?

ある団体に所属するときに、希望すれば誰でも入会できる場合と、試練(儀式や試験など)を経ないと入会できない場合とでは、どちらのほうがその団体への帰属意識や愛着が強くなるでしょうか。

私たちは「ドーパミンの奴隷」なのか?の画像
はじめる在宅 現場で役立つ基礎知識

はじめる在宅現場で役立つ基礎知識4 栄養指導

老老介護や認認介護の世帯は食事・栄養に関するさまざまな問題を抱えています。薬局に勤務する管理栄養士による訪問栄養指導とは?

はじめる在宅現場で役立つ基礎知識4  栄養指導の画像
Early Bird

前立腺がんの診断と治療に新技術導入

東海大学医学部付属八王子病院泌尿器科では、前立腺がんの診断効率を高める検査法を導 入し、さらに侵襲が小さく、がん殺傷効果が高い治療を行っている。3次元画像による標的生検で検出率の精度向上について解説します。

前立腺がんの診断と治療に新技術導入の画像

この記事の関連記事

人気記事ランキング