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2型糖尿病の新薬「イメグリミンの推定作用機序と他剤併用」

2021年12月号
糖尿病治療薬の新たな可能性の画像

2型糖尿病患者の10~30%は心不全を合併し心不全患者の30~40%は糖尿病を合併しているといわれています。SGLT2阻害薬の適応拡大が昨年から話題です。また、糖尿病に新規作用機序の薬剤が登場しました。

SGLT2阻害薬の心血管イベント抑制

2型糖尿病の罹患は心不全のリスクとなることが知られていましたが、糖尿病治療薬の心不全予防はエビデンスが乏しい状況でした。しかし、2016年のエンパグリフロジンや2017年のカナグリフロジンの各ランダム化比較試験1,2)で、SGLT2阻害薬が2型糖尿病患者の心血管イベントリスクを低下させることが明らかになり、コホート研究3,4)でもSGLT2阻害薬が心不全入院や心血管死を低下させる結果が出ました。

慢性心不全に対するSGLT2阻害薬の適応

そして2020年、ダパグリフロジン(フォシーガ)が慢性心不全に対する効能効果の追加承認を取得しました。2型糖尿病合併の有無に関わらず、左室駆出率が低下した心不全に対し、ダパグリフロジンは心血管死と心不全悪化のリスクを抑制しました(ダパグリフロジンは慢性腎臓病の適応も取得しています)。
2021年11月にはエンパグリフロジン(ジャディアンス)も慢性心不全の適応を取得しました。カナグリフロジン(カナグル)も慢性心不全患者を対象とした試験が進行しています。

なぜSGLT2阻害薬は慢性心不全を改善するのか

慢性心不全には利尿薬が用いられます。また、2020年に発売したサクビトリルバルサルタン(エンレスト)にはナトリウム利尿ペプチドの作用増大作用があります。SGLT2阻害薬にもナトリウム利尿による利尿作用があり、ダパグリフロジンの心不全を改善させる機序として、ナトリウム利尿を起点とした一連の機序が推定されています。ただし、現時点ではまだ明確になっていません。

【心不全に対するSGLT2阻害薬の推定機序5)
ナトリウム利尿間質浮腫の減少前・後負荷の減少、左室壁ストレスの減少心腎連関の改善心筋内イオン電流の改善心筋エネルギー、代謝の改善

SGLT2阻害薬以外の薬剤は?

近年、GLP-1受容体作動薬についても心血管イベント抑制や腎保護に関する多くの研究が報告されました。3種類の主要な心血管イベント(心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中)の複合発生率はプラセボより低いという結果が複数の臨床試験で得られています6)
最近の海外のネットワークメタ解析では、GLP- 1 受容体作動薬は、SGLT2阻害薬に比べ、非致死性脳卒中を減少させたと報告されています7)。現時点では、GLP- 1 受容体作動薬は、慢性心不全というより動脈硬化性疾患の再発予防に向いているようです8)
GLP-1受容体作動薬は、2021年に初めての経口薬のセマグルチド(リベルサス)が発売されました。セマグルチドは、他のGLP-1受容体作動薬に比べ減量効果が大きいといわれ、若年層の肥満2型糖尿病患者によい適応と考えてられています8)。また、セマグルチドは、投与開始初期に用量を漸増することで、胃腸障害の回避や軽減が認められています。
なお、セマグルチドは、胃の内容物により吸収が低下するため、1日のうちの最初の食事又は飲水の前に、空腹の状態でコップ約半分の水(約120mL以下)ととも服用すること、とされています。

参考文献

  1. Neal B et al. N Engl J Med. 2017 ;377(7):644-657.
  2. Fitchett D et al. Eur Heart J. 2016 ;37(19):1526-34.
  3. Kosiborod M et al. Circulation. 2017 ;136(3):249-259.
  4. Birkeland et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 ;(9):709-717.
  5. Farkouh ME et al. J Am Coll Cardiol. 2018 ;71(22):2507-2510
  6. 三好秀明 日本臨牀 2020 ; 78(7): 1139-1145.
  7. Palmer SC et al. BMJ. 2021 Jan 13;372:m4573.
  8. 窪田紗希ほか 糖尿病プラクティス 2021 ; 38(6): 682-687

イメグリミン 久しぶりの新規作用機序薬

2021年9月に、2型糖尿病の新薬として「ツイミーグ錠 500mg」(イメグリミン)が発売されました。糖尿病治療の新規作用機序の薬剤としては7年ぶりです。イメグリミンは、テト…

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