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メニエール病

2019年4月号
メニエール病の画像
メニエール病は、ぐるぐると目が回るような回転性のめまい発作が繰り返され、難聴や耳鳴といった聴覚症状や吐き気も伴う辛い疾患です。メニエール病に対しては、生活指導や、薬物治療、中耳加圧治療、手術など様々な治療が行われます。順天堂大学医学部附属練馬病院 耳鼻咽喉・頭頸科 先任准教授の角田篤信氏に、メニエール病の病態や治療法を解説していただきました。

内リンパ腔拡大により難聴やめまい発作を起こす

メニエール病は、「難聴、耳鳴、耳閉感などの聴覚症状を伴いめまい発作を繰り返す疾患」と定義されます。めまい発作が長時間持続すると悪心や嘔吐が現れることもありますが、致死的なものではありません。19世紀半ばのフランスの医師メニエールに因んで病名が付けられました。
耳は、聴覚と平衡機能を司っている感覚器官です。内耳(耳の最深部)は、聴覚に関わる蝸牛(かぎゅう )、平衡器官に関わる前庭(ぜんてい)、体の回転運動に関わる半規管の三つで構成されています。内耳の内部は、内リンパと外リンパという2種類の液体がそれぞれ内リンパ腔と外リンパ腔という二重構造に満たされています。メニエール病では、内リンパ腔が拡大(内リンパ水腫)することで感覚細胞が圧迫され、難聴やめまい発作が起こると考えられています。メニエール病のうち、症状の中心が難聴の場合は蝸牛型、めまいの場合は前庭型として分類されます。

自律神経との関連が指摘されている

メニエール病の国内患者数は4万~6万人と推計され、女性に多いとされています。平均発症年齢は男女とも50歳前後ですが、中には10歳以下の症例も報告されています。発症の背景として、ストレスや睡眠不足、過労、季節の変わり目、気圧の変化などが挙げられ、自律神経との関連が指摘されていますが、明確な原因はまだ判明していません。近年ではメニエール病に関する遺伝学的検討も多数報告されていますが、家族内で発症するのは生活様式が似通っているためとも考えられます。実臨床での所感としては生真面目な性格の患者さんに多い印象です。

最重要は問診、平衡機能や聴力なども含めて診断

めまい発作はQOLを大きく低下させるため、メニエール病の患者さんの多くは積極的に医療機関を受診します。めまいの程度によっては、救急外来に搬送されることもあります。メニエール病を診断する上では問診が最も重要になります。まず、重篤な脳卒中などから生じる中枢性めまいや、寝返りや起き上がるときなど体勢の変化によって誘発されるめまい(良性発作性頭位めまい症)を除外します。また、メニエール病のめまいは、難聴や耳鳴を伴って一回につき約30分から6時間程度持続し、その発作を反復することが特徴ですので、これに該当しない場合も除外します。問診で難聴の有無や、ストレスの有無について確認します。
問診でメニエール病が疑われた場合、両足を閉じた状態で立ち体の揺れの度合いを測定する体平衡検査や、めまい症状に伴い眼球が回転する眼球振しん盪とう症状の有無を調べる眼振検査を実施します。また、メニエール病は低音部の感音難聴が特徴的ですので、その傾向がみられるか聴力検査で調べます。難聴は片側の場合が多いですが、長期の経過に伴って両耳に至るケースもあります。
また、2017年からメニエール病の診断基準として造影MRIによる画像検査が加わりました。これは、世界に先駆けて日本で定められた診断基準で、国際学会ではまだ認められていません。画像診断ができる医療機関は限られており、他機関に依頼して確定診断をすることもあります。今後は検査の普及と共に、精度の向上が期待されています。

発作急性期と発作間欠期に分けて治療薬を選択

メニエール病に対して行う薬物治療は、発作急性期と発作間欠期の2つに分けて考えます。急性期は主に、めまい発作の鎮静や、それに伴う悪心や嘔吐などの自律神経症状の鎮静、難聴の不可逆的変化の予防を目的に、間欠期は主にめまい発作の再発予防を目的に、それぞれ治療が行われます(表)。

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