ここに注目!知っているようで知らない疾患のガイセツ

知っているようで知らない 疾患のガイセツ 坐骨神経痛

2018年2月号
坐骨神経痛の画像
腰痛を伴い、お尻、太もも、足などの下肢にしびれや痛みが生じる坐骨神経痛。歩行に支障をきたすことから外出が困難になって引きこもりがちになったり、排尿障害をもたらす場合もあり、生活の質を大きく低下させることになります。しかし、早めに適切な薬を用いて痛みを除去し、運動療法などを行えば、症状の軽減が期待できます。今回は坐骨神経痛について、日本赤十字社医療センター副院長の久野木順一氏に解説していただきました。

坐骨神経痛とは

坐骨神経痛とは、お尻から太ももの後ろなど、下腿の外側ないし後ろに交差する坐骨神経に沿って発生するしびれや痛みなどの症状を指します。左右両下肢に症状が出る患者さんは2〜3割で、大抵は片側に強く出ます。痛み方には個人差があり、長時間正座をした際のしびれのような痛みを感じる患者さんもいれば、針で刺されたような痛みを感じる患者さんもいます。
症状を引き起こす原因で最も多いのは、加齢による椎間板や脊柱管の変性です。背骨は椎骨という骨が積み重なってできていて、椎間板は椎骨と椎骨の間でクッションの役目を果たしています。脊柱管は、椎骨の椎体と椎弓の間にある空洞が、積み重なることでできる骨の管(隙間)で、中には脊髄が通っています。
加齢によって、最初に椎間板が変性します。椎間板の変性に伴って周辺の椎間関節や靭帯も加齢変化が進みます。次第に骨の変形やずれで脊柱管の内部が狭くなって脊髄の末梢にある馬尾神経を圧迫し、炎症や血流障害を起こしてしびれや痛みが生じるのです。つまり、坐骨神経痛は坐骨神経そのものの苦痛ではなく、腰部に生じた加齢性疾患の症状が坐骨神経に沿って表出するということです。

3つのタイプと日常生活への影響

加齢が根本的な原因ですが、変性がどこに生じるかで、坐骨神経痛は大きく「椎間板ヘルニア型」(以下、ヘルニア型)(図1)と「腰部脊柱管狭窄症型」(以下、狭窄症型)(図2)の2つのタイプに分かれます。さらに椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症を併せ持つ「混合型」の坐骨神経痛の患者さんもいます。加齢が原因のため患者さんは中高年に多いのですが、ヘルニア型の坐骨神経痛は40歳代の比較的若い患者さんに多く、狭窄症型は60歳代以降の高齢者に多くみられます。

図1 椎間板ヘルニア型

椎間板ヘルニア型の画像
久野木 順一 監修「スーパー図解 坐骨神経痛(第3版)」法研、2013年を参考に作成

図2 腰部脊柱管狭窄症型

腰部脊柱管狭窄症型の画像
久野木 順一 監修「スーパー図解 坐骨神経痛(第3版)」法研、2013年を参考に作成

いずれのタイプでも患者さんが訴える症状でいちばん多いのは腰の痛みです。それから足の痛み、しびれと続きます。もう1つ、特徴的なのが間欠跛行(かんけつはこう)という症状です。跛行というのは足を引きずって歩くことです。歩き始めて5分くらいすると足がしびれてきたり痛くなったりして座り込んでしまう。苦痛が和らぐとまた歩けるようになるものの、やはり5分くらいすると症状が出て座り込んでしまう。このような状態を間欠跛行といいます。
坐骨神経痛による腰や足の痛みも問題ですが、間欠跛行により、患者さんは長時間歩くことができなくなってしまいます。そのため日常生活での行動範囲が狭くなり、外出して人と会うのが億劫(おっくう)になるなど次第に家に引きこもりがちになります。また、場合によっては失禁したり、トイレの回数が増えたりするなどの排尿障害が起こるので、生活の質がとても低下してしまうのです。

適切な薬物療法で痛みを取る

患者さんの約半数は、薬物療法でコントロールできます。神経の血流障害や炎症によって痛みなどの症状が現れているので、薬物療法は①血流を良くする、②炎症を抑える、③痛みを取ることを目的に実施されます。一般的に使用される薬剤…

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