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帯状疱疹後神経痛

2017年3月号
帯状疱疹後神経痛の画像
ピリピリした痛みに続いて現れる皮疹が特徴的な帯状疱疹。時間経過とともに多くは回復していきますが、皮膚症状が治癒しても痛みが残ることがあります。慢性化すると生活の質(QOL)が低下しやすいため、注意が必要です。痛みの治療に詳しい日本大学病院麻酔科教授の佐伯茂氏に帯状疱疹後神経痛の治療を中心に解説していただきました。

さまざまな原因で水痘帯状疱疹ウイルスが活性化 皮膚症状から見られる帯状疱疹

幼少期に水痘を罹った人の体内には、治った後も原因病原体であるヘルペスウイルスの一種、水痘帯状疱疹ウイルスが顔面の三叉神経節、脊髄後根神経節、坐骨神経などに残存します。何かのきっかけでウイルスが休眠状態から目覚めても、通常は免疫の働きでウイルスの活動は抑えられ、特に症状もないまま経過していきます。ところが加齢、疲労、ストレス、悪性腫瘍、感染症のほか、免疫抑制剤や抗がん剤の使用などで体の免疫能が低下すると、それをきっかけに潜伏していたウイルスが復活します。活性化したウイルスは神経を伝わって皮膚に出てきて増殖し、炎症を引き起こします(図)。

図 帯状疱疹回帰発症の病態

図 帯状疱疹回帰発症の病態の画像

水痘の好発時期は冬ですが、帯状疱疹は年中発生します。帯状疱疹はその病名からもわかるように特徴的な皮膚症状を呈し、まず皮膚の紅斑、腫脹が見られます。その後、透明な水疱が集団で出現し、やがてびらんとなって、痂皮(かさぶた)が形成されていきます。帯状疱疹の発疹は体幹部、頭頚部に比較的高頻度で出現し、感染した神経が支配する皮膚の領域(皮膚分節)で、体の片側だけに帯状に見られることが大きな特徴です。こうした独特の所見から帯状疱疹の診断は比較的容易です。
皮膚症状は約3週間前後で回復していきます。実は、皮疹が出現する数日前に前駆症状として痛みが現れることがありますが、この段階で受診する人はほとんどありません。逆にいえば、皮膚病変が出現していない状態で、痛みだけの時期に帯状疱疹と診断することは困難です。

およそ3%は皮膚症状が回復しても残る痛み 神経線維同士のつながり損ないが原因

帯状疱疹の痛みは、ピリピリした痛み、鈍い痛み、鋭い痛みなど、程度も軽いものから強いものまでさまざまです。多くは皮疹の治癒とともに痛みも消失します。しかし、患者のおよそ3%は皮膚症状が回復しても痛みが残り、特に60歳以上でその頻度が高くなる傾向があります。3カ月以上にわたって痛みが残存している場合、ペインクリニックでは帯状疱疹後神経痛として扱っています。帯状疱疹の前駆症状が見られたり、初期に重症だったりすると帯状疱疹後神経痛に移行しやすいといわれています。帯状疱疹後神経痛になると、突き刺すような痛み、焼けるような感じがする痛み、夜も眠れないような激しい痛み、チクチクするような痛みなど多彩な形で現れます。
痛みの分類からいえば、帯状疱疹の初期は皮膚の炎症による侵害受容性疼痛です。帯状疱疹後神経痛は神経の損傷、変性によって生じる痛みであり、神経障害性疼痛に分類されます。
神経がウイルスによって損傷されると、知覚が低下します。また、神経が治癒する過程で、神経線維が元通りにつながらずに間違ったつながり方をすることがあります。神経線維が損傷されて、神経線維のまわりを取り巻いている髄鞘(ミエリン鞘)が失われると、神経線維の絶縁が不十分になります。このような神経線維同士が接触する部分をエファプスといいます。たとえば、触覚を伝達する神経が刺激を受けると、信号が脳に伝わって触れた感覚として認識されます。その神経線維と痛覚を伝達する神経線維とがつながりエファプスが形成された場合、どんなことが起こるかというと、軽く触れただけでも痛みを感じるようになります。この病態はアロディニアと呼ばれます。また侵害受容性の神経線維と交感神経系の線維との間にエファプスが形成されると、持続的に侵害受容性線維にインパルスが伝播され、

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