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専門医+エキスパートに聞くよりよい服薬指導のための基礎知識

part.2 食物アレルギー 正確な情報提供で食物アレルギー患者の生活を支援

2019年6月号
食物アレルギー:エキスパートの服薬指導の画像
食物アレルギーは、乳幼児期に発症、成長とともに耐性が獲得され、多くの場合寛解するが、その間の日常生活は制限される。また、重症例では、生涯を通じて原因食物の誤食によるアナフィラキシーが出現する可能性がある。食物アレルギーの診断や治療、管理では、正確な対処が求められる。今回は、独立行政法人国立病院機構 相模原病院 臨床研究センターの副臨床研究センター長・アレルギー性疾患研究部長である海老澤元宏氏と、同センター薬剤師の杉崎千鶴子氏、湘北短期大学 生活プロデュース学科の准教授で管理栄養士の林典子氏に、食物アレルギー診療のポイントについて伺った。

正確な情報提供で食物アレルギー患者の生活を支援

栄養食事指導のポイント

 医師の診断に基づき必要最小限の食物除去を行う
 食品のアレルギー表示について説明し、誤食を防ぐ

服薬指導のポイント

 アレルギー症状出現時に薬剤が適切に使用できるよう指導する
 医薬品にも原因抗原の成分を含むものがあるため注意する

必要最小限の食物除去で「健康的な」「安心できる」「楽しい」食生活を

前述のとおり、食物アレルギーの治療・管理の原則は、正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去である。湘北短期大学生活プロデュース学科准教授で管理栄養士の林典子氏に、「必要最小限の除去」について伺った。
「食べると症状が誘発される原因食物だけを除去することが重要です。食物アレルギーの頻度の多い食物を、『念のため』『心配だから』という理由だけで避けるべきではありません」と話す林氏。保護者の心配や不安や食物アレルゲンに関する誤った知識から、不要な除去を行うケースがみられるが、これは避けるべきだと注意を促す。抗原特異的IgE抗体検査や皮膚プリックテストの結果のみから疑われる原因食物を除去している場合には、必要に応じて専門施設でOFCを受け、症状が誘発されるか確認することが望ましい。
また、林氏は「原因食物であっても、症状が誘発されない“食べられる範囲”までは食べることができます」とも解説する。「食べられる範囲は、患者さんごとに異なります。そのため、OFCなどで症状が誘発されない量を確認します」。ここで判明した食べられる範囲の中で、自宅で原因食物を食べるよう医師が指示する。食べられる範囲でも、患者の体調不良時や運動などに伴いアレルギー症状が誘発される可能性があるので医師の指示に従って慎重に試していくことになる。
さらに、誤食を防ぐ情報として、加工食品のアレルギー表示として表示義務がある特定原材料7品目(卵、乳、小麦、えび、かに、そば、落花生)と、表示が推奨されている20品目(あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン)の説明や、外食などでの食品の選び方、生活の中での原因抗原への接触や混入に対する注意点などを指導する。
海老澤氏は「小麦の安全摂取可能量が分かっても、市販の食品にどれくらいの量の小麦が含まれているかなど、われわれ医師では十分なアドバイスができませんので、専門知識をもった管理栄養士に担当してもらっています」と話す。ただ、もちろんどの施設にも食物アレルギーの専門知識をもった管理栄養士がいるとは限らない。そのような状況でも適切な栄養食事指導が行えるように、食物アレルギー研究会では海老澤氏を中心に「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017」を作成し、また、実際の栄養食事指導についてのQ&Aの情報を食物アレルギー研究会のHPに公開している。

症状出現時に備えた薬剤処方 医薬品の成分にも要注意

適切に必要最小限の食物除去を行っていても、体調不良時や誤食などにより症状が出現することがある。前述のとおり、食物アレルギーによる症状は、複数臓器に及ぶ可能性があり、重篤な場合はアナフィラキシーショックが出現することもある。食物アレルギーの即時型誘発症状に対しては、症状ごとに重症度を適切に判断し、速やかに治療を開始するとともに、経時的な変化を常に再評価する必要がある。また、アナフィラキシー発生時は、アドレナリンの使用が第一選択であり、早期の治療は重症化を防ぐ。
こうしたことから、症状出現時に備え、抗ヒスタミン薬や気管支拡張薬、アドレナリン自己注射薬などが処方される。薬剤選択は、表4に示すとおり、症状ごとの重症度に基づいて行われる。薬剤師は、症状出現時にそれぞれの薬剤をど…

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