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薬歴の達人

極める!ハイリスク薬 連続講座 第4回 「これだけで安心! ハイリスク薬の服薬指導 免疫抑制剤」

2020年10月号
ハイリスク薬の服薬指導 第4回「免疫抑制剤」の画像
前号に引き続き、服薬指導ケア研究会のハイリスク薬についての連続講座を取材した。今回のテーマは免疫抑制剤。講義の前半では免疫系についてじっくりと確認され、後半では、各薬剤の機序について解説された。

免疫抑制剤を服薬指導する上で知っておきたいこと

免疫抑制剤は、免疫系の活動を抑制することにより、体内の過剰な免疫反応を抑える薬物であり、臓器移植における拒絶反応の抑制や自己免疫疾患の治療などに対して用いられる。逆に、正常または低下した免疫能を活性化し、抗腫瘍免疫能や感染防御免疫能の増強などに用いられる免疫刺激剤として、サイトカイン製剤(IF・IL)や免疫グロブリン製剤がある。免疫グロブリン製剤は自己免疫疾患などに用いられる場合もある
服薬ケア研究会会頭の岡村祐聡氏は、「免疫抑制剤は、個々の薬理作用を把握しておけば服薬指導の際に問題になることは少ない。ただし、その服薬指導の際、正しく免疫機構を理解せずに薬理作用の部分のみを患者に説明しても説得力に欠ける」と説き、講義の前半で人体の免疫機構について解説した。

免疫とは

免疫とは、人体(自己)にとっての異物(病原微生物など)を「非自己」と判定して排除し、自己を守るためのシステムである。生体内で異物として認識され、抗体産生などの免疫反応を誘導する物質を「抗原」という。免疫系の構成因子としては、リンパ球、好中球、マクロファージなどの免疫細胞(白血球)のほか、抗体、補体、サイトカインなどの免疫に関わる物質や分子、胸腺、骨髄、リンパ節、脾臓などのリンパ器官がある(表1)。

表1 免疫系の構成因子
免疫細胞
(白血球)
リンパ球、好中球、マクロファージなど
免疫に関わる
物質・分子
抗体、補体、サイトカインなど
リンパ器官 胸腺、骨髄、リンパ節、脾臓など

講義資料より編集部作成

自然免疫と獲得免疫

免疫学は、2000年前後から急激に発展した。免疫の種類として自然免疫と獲得免疫の2つがあることはよく知られているが、これらの理解も大きく変化した。
自然免疫は、非自己と認識したものに対して、無差別(非特異的)に働く免疫反応であり、免疫機構の一次防御としての役割を果たしている。皮膚バリア機能といった体表面での異物排除のほか、皮膚を通過した細菌やウイルスなどに対し生体内で機能する(炎症反応)。好中球やマクロファージなどが異物や細菌が貪食・殺菌し、NK細胞がウイルス感染細胞を破壊する。
一方、獲得免疫は、感染などによって生後新たに獲得される、より精密で強力な免疫反応である。ある特定の異物に反応するリンパ球(T細胞、B細胞)だけが増殖し、これに対処する。具体的には、B細胞が抗体を産生し、T細胞がB細胞の分化や抗体産生を誘導、ウイルス感染細胞を特異的に破壊する。獲得免疫は自然免疫に引き続いて起こるが、作用の発現は数日を要する。
自然免疫と獲得免疫の両者が互いに協調・活性化しあうことで、免疫機構が成り立っている。

自然免疫機構の概要

自然免疫では、NK細胞が感染細胞を殺し(獲得免疫で感染細胞を殺すのは細胞傷害性T細胞)、マクロファージや好中球が病原体を貪食する。こうした直接的な攻撃以外に、自然免疫では、感知して警報を出すシステムがあるという。
マクロファージは貪食の後、異物を感知して活性化している。また、自身の活性化と同時に、炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-α)やケモカイン(IL-8)を分泌し、近くのマクロファージの貪食を促す。これにより炎症が惹起される
炎症反応では、血管内皮細胞の収縮とともに、血液透過性が亢進し、体液やタンパク質などを含む血漿成分が組織中へと流出する。さらに内皮細胞が接着分子を発現し、白血球(単球や好中球)が血管内皮に付着、形を変形させることで血管外へと移行する。さらに炎症の起きている部位へと移行する。

獲得免疫の概要

相手かまわず貪食し、その後に異物を認識する自然免疫とは異なり、獲得免疫では、特定の成分にだけ結合する(抗原特異性)。獲得免疫の機序を理解するポイントとして、抗原…

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