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薬歴の達人

PからはじまるSOAP

2020年2月号
PからはじまるSOAPって⁉の画像
薬機法が改正され、患者フォローアップのための資料として、薬歴の重要性は高まりつつある。服薬ケア研究会による、より良い薬歴を書くためのセミナー「薬歴の達人」第7回は、11月23日(土、祝)に名古屋市の愛知県薬剤師会館で開催された。会場のほかにweb中継で参加した薬剤師も多く、薬歴作成への関心と熱意が伺えた。

実務上ほぼ必須のノウハウ 「PからはじまるSOAP」

今回のテーマは「PからはじまるSOAP」。本誌前号(2020年1月号)に掲載した薬歴の達人では、アセスメントを更新する重要性を紹介した。本来であれば、アセスメントを更新しながらプロブレムを見つけていくのが正攻法である。しかし、実臨床では、患者から十分な情報を引き出し、プロブレムの発見やプランへ繋げられる環境が常ではない。情報入手の時間すら想定したようには確保できないケースを経験している読者も多いことだろう。今回は、こうしたケースのように、アセスメントを中心にSOAPを完成させることができなかった時のための方法論である。
理想的な手順で服薬指導ができなかった場合、自身が指導した内容を元に、P、A、O、Sの順で、SOAPを逆向きに組み立てていくと、多少、情報入手やアセスメントが十分でなくとも、それなりのSOAPを完成させることができる。そして、これが実施できると、ほぼすべてのケースで、Problem Oriented(問題指向型)に指導を組み立てることができるようになる、とのことだ。

「PからはじまるSOAP」の方法

まず、自分が行った「指導内容」(P)に着目する。そのためには、服薬指導をする際、患者の発言だけでなく自身の発言(指導内容)のメモをとっておくことが必要となる。そのメモがあれば、Pに着目し、内容を振り返ることが簡単にできるからだ。次に、そのPがなぜ必要と思ったのか(A)を考える。そして、OやSをクラスタリング(同じアセスメントを導くためのOやSをいくつかのグループにまとめること)し、それぞれのクラスターに当てはめていく(表1)。

表1  「Pから始まるSOAP」のやり方

1.まず自分が行った「指導内容」(P)に着目する
2.この時、そのPをなぜ必要と思ったのか(A)を考えながら、クラスタリングする
3.次に、その指導の元になった事実(患者情報)を、クラスタリングしたそれぞれのクラスターに当てはめていく
  • Aの根拠となる事実(Aと考えた証拠)がO
  • そのプロブレムに着目したきっかけや、そのことを患者自身がどう思っているかがS

服薬ケア研究会ご提供

「PからはじまるSOAP」の実践

今回のワークショップでは、処方時に薬剤師と患者で交わされた全会話が記録されたシナリオが配布された。まず、シナリオを読んで、指導内容(P)に当たる部分に線を引く。また、Aを意識した上で、同じクラスターになると考えられるPに仮に番号を付ける。次に、患者情報(SまたはO)にPとは異なる色の線を引き、Pに対応する番号をそれぞれ振る。SなのかOなのかという判断は、SOAPに仕上げる最終段階で行えば良い。
薬歴は通常、服薬指導を終え患者が帰ったあとにその会話をメモや記憶から逆向きに辿ることも多いため、この方法では会話の後ろからPを探す。表2のシナリオで実践してみると、Pとして薬剤師のセリフ⑬が発見される。薬剤師のセリフ⑫、⑧、⑦、⑥もPだが、⑬とは異なる内容のため、異なる番号をつける。Pの内容が、どれと同じでどれと異なるのか、その判断が重要だ。この場合、⑬は降圧薬関連、⑫⑧は食事関連、⑦⑥はコレステロール関連という、3種類のPがあることが判明した(表2の123)。

表2  シナリオでPを探す

愛知花子さん
S43.9.20 51歳 身長:158cm 体重:60kg BMI:24
夫53歳(会社員)、息子23歳(会社員)の三人暮らし
処方
Rp.1 アムロジピン 5mg 1錠  朝食後
28日分
薬剤師の発言患者の発言
薬① 愛知花子さん。こんにちは。本日担当させていただきます、薬剤師の名古屋太郎です。よろしくお願いいたします。問診票のご記入ありがとうございます。こちらの薬局は初めていらっしゃったようですが、病院も初めてですか?
患① はい、初めてです。先月千葉から引っ越してきました。今まではそちらの病院でお薬もらっていました。
薬② アムロジピンは千葉の病院でもらっていたんですね。今日は血圧測りましたか?
患② はい、131と80だったと思います。
薬③ いつもこれくらいですか?家でも血圧測っていらっしゃいますか?
患③ はい、朝と寝る前2回測っています。血圧手帳あります。先生にも毎回見せています。
薬④ (血圧手帳確認)そうですね、大体130/80くらいで安定していらっしゃいますね。めまいやふらつきもないですね。何か気になっていることはないですか?
患④ 前の病院でも言われたことがあるのですが、今日も先生から「コレステロールが高いね」と言われました。「お薬どうしようか」って。「検査してみましょう」と。今日は出ませんでしたが・・・。
薬⑤ そうですか。今までもコレステロールの値が高かったんですね。
患⑤ 健康診断でいつも少し高めだねって。 なぜコレステロールが高いといけないんですか?
薬⑥ コレステロールが高いと血管にコレステロールがはりついて血管の通り道が狭くなってしまいます。そして血管が弾力性を失って、もろくなってしまうのです。これを動脈硬化と言います。3
患⑥ ええ、動脈硬化は聞いたことがあるわ。
薬⑦ 動脈硬化が進むとやがて血管が詰まってしまい、脳梗塞や心筋梗塞が起こってしまう危険性があります。コレステロールのお薬は、 血液中のコレステロールの量を減らして、 血管にコレステロールがたまらないようにするんです。3
患⑦ そうなんですね。だからお薬飲まないといけないんですね。よくわかりました。何か普段気を付けた方が良いことってありますか?例えば食事とか・・・。
薬⑧ 動脈硬化の予防のための食事の冊子がありますので、こちらを差し上げます。この中にお食事について詳しく載っていますので、よく読んで参考にしてください。2
患⑧ ありがとうございます。これを読んで気をつければいいのね。
薬⑨ おタバコやお酒はどうですか?問診票には無しになってますが。
患⑨ タバコは全く吸わないです。お酒はたまに、月に1、2回くらいかしら。お友達と食事するときにお付き合いで飲むくらいです。
薬⑩ そうなんですね。ご家族でもタバコを吸われる方はいらっしゃらないですか?
患⑩ いないです。主人も止めましたから。
薬⑪ ご主人はやめられたんですね。それは良かったですね。
患⑪ タバコは体に良くないからって止めてもらったんです。今は食事もおいしいって言ってくれて。でもそのせいでちょっと太っちゃったけど。
薬⑫ それでは奥様の腕の見せ所ですね。ご自分のためだけでなく、ご主人の健康のためにも、お食事気を付けてみてください。2
患⑫ そうね、主人のためと思えば、食事も頑張れそうだわ。
薬⑬ そうですね。では今までと同じお薬が出ていますので、 毎朝1錠お飲みになってください。血圧の薬はきちんと続けることが大切です。ではお大事にしてください。1
まずPに着目すると、薬⑬は降圧薬関連(1)、薬⑫⑧は食事関連(2)、薬⑦⑥はコレステロール関連(3)として、Pが発見される。

服薬ケア研究会ご提供

表3  さらに患者情報(SとO)を探す

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