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【特定薬剤管理指導加算】「最初に処方された1回に限り算定」って?
学会クローズアップ

薬剤師の職能と新たな役割とは?

2018年1月号
薬剤師の職能を見つめ直し新たな役割の認識と実践の画像
第50回日本薬剤師会学術大会(大会長:石垣栄一・公益社団法人東京都薬剤師会会長)が2017年10月8日〜9日、東京都千代田区の東京国際フォーラムとJPタワー ホール&カンファレンスで開催された。大会テーマには「薬剤師が自らの職能とそれを支える誇りを見つめ直し、次の50年に向けてさらなる飛躍を」というメッセージが込められ、各会場は立見の参加者が出るほどの盛況ぶりを見せた。

CLOSE-UP1
創面の確認と外用薬の適正使用を推進し褥瘡を治す環境づくりに貢献

分科会「在宅での褥瘡医療における薬剤師の貢献」では、これから特に在宅で増加が見込まれる褥瘡患者に対する薬剤師の役割について意見が交わされた。
小林記念病院褥瘡ケアセンター長の古田勝経氏は、自身が考案した「Furuta Methods」について講演した。古田氏は、薬剤師は外用薬の基剤の吸水性、保水性、創面保護といった特性を理解したうえで患者に適切な薬剤を選択し、適正使用のために実技指導をする必要があると訴えた。そのためには、基剤特性の知識を持つ薬剤師による褥瘡創面の確認の重要性を指摘。外用薬の溶け具合から創面の湿潤状態を確認するという。高齢者の場合、適正な創面の水分量は60%が目安となるが、適正な水分量にするにはどの基剤が適切かを創面の状態から薬剤師が判断しなければいけないと古田氏は話した。また創面への薬剤の滞留維持もポイントだという。高齢者の皮膚は動きやすいため、創面が変形すると指摘。古田氏は、ポケットの動きを考慮したハの字型のテーピング方法や擦れを軽減する医療用パッドを使用することで創面に薬剤をとどめる方法を紹介した。
株式会社サン薬局の森麻美子氏は、外用薬の適正使用に関する取組みを紹介した。看護師のほかデイサービスのスタッフ、患者家族など患者の処置に関わる全員が外用薬を適正に使用でき、かつ適正使用された状態を維持できるように、写真付きの説明書とともに実技指導を初回に実施していると話した。

第50回日本薬剤師会学術大会会場外の画像
第50回日本薬剤師会学術大会が開催された東京国際フォーラム

CLOSE-UP2
薬局への相談をきっかけに適切なOTC医薬品の提供と受診勧奨

分科会「OTC医薬品の販売と受診勧奨」では、今後、かかりつけ薬剤師が地域住民への健康サポート機能を発揮するために必要とされる能力や取組みが紹介された。
昭和大学薬学部社会健康薬学講座准教授の亀井大輔氏は、薬局が患者や地域住民のファーストアクセスを担うためには、ファーマシューティカルケアの実践と症候学的な思考プロセスが求められるという。症候学的な思考プロセスでは、①患者の症候から考えられる疾患を列挙し、②患者から収集した情報を加えて可能性の高い疾患を順序付け、③臨床判断により適切なOTC薬を販売、④販売後の薬効評価・副作用モニタリングなどの継続評価を実施するという。亀井氏は、LQQTSFA※を用いた医療コミュニケーションと客観的なデータであるバイタルサインの確認・評価という2つの情報収集手段を紹介。患者からの情報収集を通して、全身状態を把握するという。
日野薬局の日野寛明氏は、健康サポート薬局の届出経験をもとに講演した。日野薬局はOTC医薬品548品目を取扱い、OTCの相談可能とPRポスターを薬局内に掲示している。日野氏は、骨の健康、物忘れ、ストレスチェックといった健康測定器具を利用したイベントを定期的に実施し、これまでに330名が参加。イベントを通じて来局者から様々な健康相談が寄せられ、13名に受診勧奨、20名に検診勧奨を行ったと話した。

※LQQTSFA:医療面談の手段。L=部位、Q=性状、Q=程度、T=時間と経過、S=状況、F=寛解・増悪因子、A=随伴症状の順に質問し、自覚症状を確認する。

第50回日本薬剤師会学術大会会場内の画像
OTC販売や受診勧奨への取組みを報告した

CLOSE-UP3
超高齢社会における薬剤師の役割 多職種と連携しポリファーマシーを改善

分科会「ポリファーマシー対策、薬の安全性に視点を当てて」では、ポリファーマシー対策における薬剤師の役割について意見を交わした。東京大学大学院医学系研究科地域医療システム講座教授の今井博久氏は、ポリファーマシーが生じる要因として、「疾患別に存在する治療目標」、「ガイドラインを中心にしすぎた治療方針」など医師側の問題点を指摘。副作用を新たな症状と誤認してさらに薬剤を処方する「処方カスケード」やDo処方を挙げ、「医師はポリファーマシーを改善できない。『処方の再設計』を通じてポリファーマシーを改善し安全性を担保することが、超高齢社会における薬剤師の新たな機能として求められる」と語った。
また、「患者は多種多様であり、答えはひとつではない。患者との信頼関係を構築して患者の幸せを確立することがポリファーマシー改善の視点」とし、最適な薬物療法を実践するため、薬剤師は多職種と連携して患者情報を収集することが役割だと語った。
かかりつけ薬剤師の役割については、高齢者や認知症患者、腎機能が低下した患者などに対するポリファーマシーへの介入と長期処方の分割調剤の2つの機能が重要であるとも指摘した。
明治薬科大学薬学教育研究センター教授の佐藤光利氏は、成人に対しては安全な医薬品が高齢者では高リスクになることから、薬剤師は高齢者の病状の変化に応じた処方を提案すること、患者の意思を尊重することが重要だと述べた。また、フレイル予防の観点から、栄養、運動、感染症予防、疾患コントロールに配慮するよう求めた。

CLOSE-UP4
「患者のための薬局ビジョン」で期待されること スイッチOTCのエビデンスづくりやがん患者支援

分科会「『患者のための薬局ビジョン』を踏まえて開局薬剤師に期待すること」で、厚生労働省大臣官房審議官の森和彦氏は、薬剤師に期待する役割として、「高齢化に伴うがん患者の支援」と「オピオイドの使用」の2つを挙げた。革新的な抗がん剤の登場により、症状が改善して退院し、地域で生活するがん患者が増えていることから、副作用のモニタリングやマネジメント、患者支援における薬剤師の役割が重要になっている。また、がんの疼痛管理においてはモルヒネ中心からオキシコンチンやフェンタニルなど多様なオピオイドが使用されるようになり、患者の状態によって適切なオピオイドを選択する際に薬剤師の支援が求められている。さらに「セルフメディケーションにおけるスイッチOTCのエビデンスづくりは薬剤師の仕事」として、副作用報告を通じて実際の使用下における有効性・安全性のエビデンスづくりに貢献することを期待した。
柏市薬剤師会副会長の柏薬局明原店 齊藤泉氏は、千葉県柏市における自治体、医師会、薬剤師会が連携した在宅医療推進のための多職種連携を報告した。同市では機関やサービスを超えて患者情報を共有するクラウドシステムを構築している。情報共有を進める中で感じたこととして齊藤氏は、「服薬指導は基本であり、そのうえで医師や看護師とは違う寄り添い方で患者の信頼を得ることが必要。他職種に対して専門職として情報共有・助言できるスキルが求められる」と語り、「地域の中でフレイルや未病への取組みを積極的に進めていきたい」と今後の抱負を語った。

公益社団法人日本薬剤師会(Japan Pharmaceutical Association)

〒 160-8389 東京都新宿区四谷3-3-1 四谷安田ビル7F

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