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【特定薬剤管理指導加算】「最初に処方された1回に限り算定」って?
特集

薬剤師よ、医療者たれ!

2020年3月号
薬剤師よ、医療者たれ!の画像

著しい少子高齢化が騒がれる昨今、ついに日本の高齢化率(65歳以上の高齢者の人口の割合)は28%を超えました(2019年9月時点)。高齢化率は今後も上昇し続ける見込みです。医療費の増大のみならず医師数減少も懸念されるため、医療者として薬剤師のこれまで以上の活躍が期待されています。一方で、保険薬局は今後淘汰の時代に突入するという話題を耳にすることもあるのではないでしょうか。これからの時代を生き抜くために、薬剤師に今必要なこととは。服薬ケア研究会の会頭を務める岡村祐聡氏にお話を伺いました。

以前から求められていた対人業務理念と現実の乖離

まず、薬剤師の現状と課題を把握するために、平成以降の薬剤師を取り巻く環境の変化(表1)を俯瞰してみましょう。薬局が医療施設と位置付けられ、薬剤の専門家として積極的にチーム医療に寄与することが求められてきました。また、6年制の薬学教育導入以降、患者さんへの対応も重要視されてきました。2019年の医薬品医療機器等法(以下、薬機法)改正以前から、薬剤師が対人業務に注力することは望まれていました。
しかし、こうした制度の変容の一方で、現場ではそこまで変容しきれていなかったというのが実情です。その原因の1つと考えられるのが、現在の多数を占める調剤偏重ともとれる保険薬局のスタイルといえます。1997年に国が37のモデル国立病院に対して完全分業(院外処方箋受取率70%以上)を指示しました。ちょうどその頃から日本の医薬分業は急速に進展しました。本来の医薬分業の理想像は、薬局の機能を強化し個々の患者の薬歴を一元的に管理することでしたが、実際には全国に門前薬局が乱立する結果となり、処方箋応需件数を追求する調剤偏重の経営方針をとる保険薬局が多くなったのです。そのような薬局では、「とにかく間違いのない迅速な調剤」を求められました。

表1 平成以降の薬剤師を取り巻く環境の変化
1992年
(平成4年)
医療法に薬剤師は医療の担い手として明記
1993年
(平成5年)
医薬分業や「かかりつけ薬局」の必要性を訴求する、薬局業務運営ガイドラインが通知
1996年
(平成8年)
薬事法等の一部改正が行われ、調剤した薬剤についての情報提供が薬剤師に義務化
1997年
(平成9年)
37のモデル国立病院に対して完全分業を指示
日本薬剤師会医薬分業推進対策本部が策定した「薬局のグランドデザイン-将来ビジョンと 21世紀初頭に向けての活動方針-」(最終答申)が公表
2006年
(平成18年)
6年制薬学教育が導入
医療法等、薬剤師法の一部改正
医療法等の一部改正が行われ、「薬局」が医療提供施設として位置付けられた。
薬剤師法の一部改正が行われ、調剤の場所が患者居宅へ拡大された。
2010年
(平成22年)
厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」が発出
医療技術の進展とともに薬物療法が高度化していることから、医療の質の向上及び医療安全の確保の観点から、チーム医療において薬剤の専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加することが非常に有益であるとされ、薬剤師の役割拡大に対する要望が示された。具体例として、薬剤師を積極的に活用することが可能な業務として薬剤の種類・投与量・投与方法・投与期間等の変更や検査のオーダーについて医師・薬剤師等により事前に作成・合意されたプロトコールに基づき専門的知見の活用を通じて医師等と協働して実施すること、薬剤選択・投与量・投与方法・投与期間等について医師に対し積極的に処方を提案すること、薬物療法を受けている患者(在宅の患者を含む)に対し薬学的管理(患者の副作用の状況の把握、服薬指導等)を行うこと等が示された。
2012年
(平成24年)
6年制薬剤師の第一期生が卒業
2013年
(平成25年)
薬剤師法の一部改正 情報提供義務に加えて服薬指導義務が追加
2015年
(平成27年)
「患者のための薬局ビジョン~『門前』から『かかりつけ』、そして『地域』へ~」が公表
医薬分業の原点に立ち返り、保険薬局を患者本位のかかりつけ薬局として再編するため、服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導、24時間対応・在宅対応、医療機関等との連携など、かかりつけ薬剤師・薬局の今後の姿を明らかにするとともに、中長期的視野に立って、かかりつけ薬局への再編の道筋が示された。
2016年
(平成28年)
健康サポート薬局制度が開始
2019年
(平成31年
4月2日)
厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長通知「調剤業務のあり方について」が発出
薬剤師の行う対人業務を充実させる観点から、医薬品の品質の確保を前提として対物業務の効率化を図る必要があるとされ、薬剤師が調剤に最終的な責任を有するということを前提として、薬剤師以外の者に実施させることが可能な業務の基本的な考え方について示された。
薬剤師以外の者が実施可能な業務と実施できない業務
  • 当該薬剤師の目が届く場所で薬剤師以外の者が行う処方箋に記載された医薬品(PTPシートまたはこれに準ずるものにより包装されたままの医薬品)の必要量を取り揃える行為、及び当該薬剤師以外の者が薬剤師による監査の前に行う一包化した薬剤の数量の確認行為
  • 薬剤師以外の者が軟膏剤、水剤、散剤等の医薬品を直接計量、混合する行為は、たとえ薬剤師による途中の確認行為があったとしても、引き続き、薬剤師法第19条に違反すること。ただし、このことは、調剤機器を積極的に活用した業務の実施を妨げる趣旨ではない。
  • 納品された医薬品を調剤室内の棚に納める行為
  • 調剤済みの薬剤を患者のお薬カレンダーや院内の配薬カート等へ入れる行為、電子画像を用いてお薬カレンダーを確認する行為
  • 薬局において調剤に必要な医薬品の在庫がなく、卸売販売業者等から取り寄せた場合等に、先に服薬指導等を薬剤師が行った上で、患者の居宅等に調剤した薬剤を郵送等する行為
2019年
(令和元年
11月27日)
薬機法が7年ぶりに改正
薬局は、調剤のみならずOTC医薬品を含むすべての医薬品を安定的に提供する施設であることが規定された。また、薬剤師が医薬品の適正使用に必要な情報提供及び薬学的知見に基づく指導を行う場所であることが規定されたとともに、患者自身が自分に適した薬局を選択できるよう、機能別の薬局認定制度(地域連携薬局、専門医療機関連携薬局)の導入等が進められることが決定した。また、薬剤師には、調剤時に限らず必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行うこと、患者の使用薬剤の服用状況に関する情報を医師等に提供すること等が義務化された。

「日本薬剤師会のあゆみ」をもとに編集部作成

白衣を着て患者の前に立つ意味 医療者としてのアイデンティティ確立を

私は、薬剤師が元来あるべき姿について、考え続けています。
1996年に薬剤師法第25条の2に情報提供義務が追加され、今回の薬機法改正では、投薬時以降も服用期間中の継続的なフォローが義務化されました。専門家として薬剤を提供する薬剤師が、それに付随する情報を提供することは、当然の行為ともいえます。服用期間中の継続的なフォローにしても、薬剤の効果や副作用管理の面から必要不可欠なケースが存在しますので、義務化されずとも、情報提供している薬剤師がやるべきだったと考えます。しかし実際には、薬剤師として本来行うべきこうした業務は、なかなか実行されてきませんでした。
調剤報酬の観点としても、薬剤師による対人業務を向上させるため、注力が期待される職能に対して重点配分されてきました。国は制度だけでなく報酬の面からも対人業務へのシフトを誘導しようとしてきたわけですが、残念ながら多くの薬剤師は、制度が変わるたびに点数加算のための要件が増え続けるとしか捉えていませんでした。それでは医療者とはいえないばかりか、依然として世間一般に薬剤師はただ薬の数を数えて渡す人と思われても仕方がありません。まず必要なことは、白衣を着て患者さんの前に立つとはどういうことかを考えなくてはなりません。薬剤師という職業を選んだ一個人として、医療者である薬剤師のアイデンティティを自ら確立することが必要不可欠です。薬剤師は医療者として患者さんの命に関わっている職業であるという覚悟を持つ必要があります。

制度の変更が重要なのではない 医療者として必要と考えられる行為が制度になる

調剤報酬うんぬんではなく、以前から当然のように患者さんに丁寧に接してきた薬剤師ももちろんいると思います。そうした薬剤師は、調剤報酬の改定で対人業務に重点的に点数が加算されるようになったことで、当たり前のこととして行ってきた対人業務に対して報酬がもらえるようになったと感じるでしょう。一方で、制度が変わるたびにやらなければならないことが増えると感じる薬剤師は、点数を取れという会社からのプレッシャーに反発してしまうという構図になります。
私は、「制度が変わるので実施する」、「点数のために実施する」という流れに、医療者として違和感を抱いてほしいです。ほかの医療者をみると、たとえば日本看護協会では、認知症看護認定看護師などによる認知症ケアチームを設置し、病棟で各種相談やカンファレンスを実施していました。そして、これを実施している病院数を数値として示した結果、2016年度診療報酬改定で認知症ケア加算の新設を実現しました。これは、制度化されていなくとも医療者として必要と考えられる行為を実施することで、結果として診療報酬に加算されるという好例です。医療者の仕事としてはこれが本来の順序だと思うのですが、薬剤師の世界ではこれまで順番が逆になってしまっており、そのためいくら制度が変わっても本来の目的は達成されずにきました。どこかでマインドをリセットし、前に進む必要があります。今がまさにその時なのではないでしょうか。

0402通知はピンチかチャンスか

2019年4月に発出されたいわゆる0402通知。対物業務から対人業務へシフトするというのは、この通知以前から求められていたことではありましたが、「対物業務で精いっぱい、対人業務まで手が回らない」というのがよく聞かれる薬剤師の声でした。実際の現場ではまだ、対物業務の量が変わらない環境もあるかもしれませんが、0402通知により、少しでも多く対人業務に注力できるよう配慮されました。
皆さんは、これをピンチとチャンスのどちらと捉えますか?薬剤師以外の者も薬剤のピッキングなどの調剤業務に関わることが可能と示されたことで、職が奪われるという脅威を感じ、ピンチに感じる薬剤師の方も中にはいるでしょう。しかし、これまで以上に本来の薬剤師の行為である対人業務に注力できるのですから、これはチャンスです。
薬機法改正の内容をみると、対人業務に注力してもらうことで、地域医療やヘルスケア向上の担い手として、地域包括ケアシステムの中で重要な役割が求められていることがよくわかります。これまでの調剤偏重の考え方で、調剤報酬の点数加算のためという後手の対応をしていくのでは、保険薬局再編成の大きな潮流からは外れてしまう可能性があることは明らかです。

薬局数の適正化 意識変容ができない薬剤師は淘汰される

2018年度末時点の全国の保険薬局数は59,613施設と報告されています(2018年度衛生行政報告例の概要)。これはコンビニエンスストアの店舗数よりも多い数字です。それに対し、保険薬局の適正数は全体で3万程度ともいわれており、今後半数程度は淘汰されていくことになるという話を耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
次回の診療報酬改定では、調剤報酬のうち対物業務はマイナス、対人業務はプラス、門前の調剤基本料はマイナスと予想されています。これは国の考える、今後の薬局のあり方を反映したものであり、この流れに乗れない薬局は淘汰される側になってしまうことを意味します。
地域連携薬局や専門医療機関連携薬局といった、機能別の薬局の認定制度がスタートしますが、これの本来の意味は、薬局の特性をラベル付けすることで、患者さんがケースに合わせて容易に薬局を選択できるための環境作りです。調剤報酬加算のためではありません。また、「調剤のみならずOTC医薬品を含むすべての医薬品を安定的に提供する施設」と薬局が規定されたことを改めて考えると、国はセルフメディケーションまで見越した保険薬局の機能再編を目指していると考えられます。形式的にOTC医薬品を配置するなどの対応をしていては将来的に存続が危ぶまれます。
保険薬局数の適正化が実現された場合、薬剤師数も当然今のままという訳にはいきません。6年制薬学教育で医療薬学や実習教育を受けた薬剤師が相当数世の中に出てきていますが、臨床現場に即した意識変容ができない薬剤師は淘汰されてしまうと思われます。現在の調剤報酬では、処方する薬剤が同じ金額の場合、院内処方に比べて院外処方では3倍程度高い診療報酬(技術料)がかかっています(図1)。それほどまで高いコストをかけてでも医薬分業を推進していくためには、それだけの価値を提供しなければなりません。そのためには、患者本位の医薬分業を実現し、薬局のかかりつけ機能強化が必要不可欠だと思われます(図2)。

図1 院内処方と院外処方における1処方の平均的な技術料(薬剤料6,360円あたり)

図1 院内処方と院外処方における1処方の平均的な技術料(薬剤料6,360円あたり)の画像
薬学管理料 患者との対話による服薬状況等の確認、残薬の状況確認などを実施した場合に算定される「薬剤服用歴管理指導料」など
調剤料 処方した薬剤の剤数等に応じて算定
調剤基本料 処方箋受付につき算定される「調剤基本料(狭義)」など

(出典)厚生労働省「社会医療診療行為別統計(2016年)」
(注1)院内処方は処方料、院外処方は処方箋料の算定回数に基づき1処方あたり金額を計算
(注2)院内処方・院外処方を通じた1処方あたり薬剤料は約6,360円

財務省「財政制度等審議会(財政制度分科会)」提出資料(平成29年10月25日)より

図2 厚生労働省が目指す「かかりつけ薬剤師・薬局」(地域で暮らす患者本位の医薬分業へ)

図2 厚生労働省が目指す「かかりつけ薬剤師・薬局」(地域で暮らす患者本位の医薬分業へ)の画像

厚生労働省「患者のための薬局ビジョン」(平成27年10月)より抜粋

対人業務で重要なのは患者への関心

急激な変容を迫られているような戸惑いを感じている薬剤師の方も多いと思いますが、薬剤師が医療としての対人業務を実践するために最も重要なことは「患者さん中心で物事を考え可能な限りベストな薬物療法を模索する」という使命を常に念頭に置いて行動するということです。そしてそのために必要なのは、まずは「目の前の患者さんに関心を持つ」という基本姿勢です。この原点を忘れないことです。
対人業務を行う上で、薬剤師のコミュニケーションスキルについてはよく注目されます。もちろんスキルが必要な場面もありますが、それはあくまで手段です。相手に関心を向けていない状態で小手先のスキルを使っても、患者さんとの関係には何も変化をきたしません。たとえばテクニックの1つとして「繰り返し」が知られています。これは真に相手の思いを理解できて初めて患者さんの言葉をそのまま繰り返すことで、患者さんは「自分の気持ちをわかってくれた」と感じるというものです。しかし、しっかりと患者さんに関心を寄せずに、ただ患者さんの言葉を繰り返したのでは、患者さんはまるでAIに返答されているような気分になるでしょう。
実際に、「バカにしているのか」と患者さんに怒られた薬剤師もいます。目の前の患者さんにとってベストな薬物療法を考えるために、その患者さんに本気になって関心を寄せるという基本姿勢がなければ、どのようなスキルを駆使しても、良好な関係は築けません。

患者が話さない理由はメリットがないから 患者との関係を構築すれば医師からの信頼も得られる

服薬指導をしようと思っても、全く話をしてくれないという患者さんも多いことと思います。そこで考えなくてはいけないのは、患者さんが話をしてくれない理由です。私は、患者さんが話さないのは、薬剤師に何かを話すことで得られるメリットを知らない、またはその恩恵を受けたことがないと考えるのが自然だと思います。薬剤師を医療者として認識していないケースもあるでしょう。そこで、医療者としての意識で患者さんに関心を向けて細やかに対応することで、「薬剤師は自分を支えてくれる人なんだ」と少しずつ感じてもらえるようになると思います。患者さんとの関係が築けていければ、患者さんは他の人ではなくこの薬剤師に話を聞いてほしいというようになっていくはずです。
こうした関係を構築することで、より介入が必要な患者さんに対するかかりつけ薬剤師の機能説明や同意の取得が円滑に進行できると思われます。
2016年4月よりスタートしたかかりつけ薬剤師制度ですが、少しずつその成果が出始めています。2017年度の診療報酬改定の結果検証に係る特別調査で、疑義照会の割合は、薬剤服用歴管理指導料を算定した場合に3.0%であったのに対し、かかりつけ薬剤師指導料等を算定した場合には9.2%と高い結果が得られました。疑義照会の内容としても、かかりつけ薬剤師の場合は本質的なものが多いようです。薬学的な観点から必要と認められる事項での疑義照会の割合は、かかりつけ薬剤師指導料等の方が多いことが報告されました(図3)。
同調査では、医師の意見も集計しています。医療機関が連携を図りたいと考えるのは、「患者の全ての服薬状況を把握している薬剤師」や、「服用中の患者の状態を定期的にフォローしている薬剤師」という回答が挙がりました(図4)。かかりつけ薬剤師の機能をしっかりと果たせば医師との信頼関係も構築されることがわかります。患者さんの状態を把握した上で、薬物療法についての正確な知識をベースとしたロジカルな疑義照会に対しては、医師もしっかりと耳を傾けるでしょう。そのためには目の前の患者さんのことは誰よりも理解するという姿勢と、薬剤について医師と対等に話すことのできる知識を更新し続ける努力が必要です。

図3 かかりつけ薬剤師とそれ以外の場合の疑義照会の取り組み

図3 かかりつけ薬剤師とそれ以外の場合の疑義照会の取り組みの画像

診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成29年度かかりつけ薬剤師調査)

図4 薬剤の適正使用を進める上で、医療機関が連携を図りたいと考える薬局薬剤師

図4 薬剤の適正使用を進める上で、医療機関が連携を図りたいと考える薬局薬剤師の画像

(注)「その他」の内容として、以下の内容が挙げられた。

診療所: 「生活指導や地域包括ケアシステムに明るい薬剤師」、「認知症の患者等にきちんと内服するよう指導できる薬剤師」、「訪問してチェックしてくれる薬剤師」等。
病 院: 「信頼関係が築けている薬剤師」、「精神疾患を有する患者、家族への理解が深い薬剤師」、「患者と信頼関係のある薬剤師」、「近い存在でコミュニケーションが十分にとれる薬剤師」、「連携システムが導入されている薬局の薬剤師」、「残薬調整をしっかり行っている薬剤師」、「服薬アドヒアランスの把握ができている薬剤師」、「患者にきっちりと指導できる薬剤師」等。

診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成29年度かかりつけ薬剤師調査)

在宅医療は医療者の本質的な役割 死から逃げずに専門家としての役割を果たす

薬剤師の今後を語る上で外せないのは在宅医療の分野です。在宅訪問を実施する場合、看護師やケアスタッフなど多職種の連携が必要となりますが、薬剤の専門家として多職種にアドバイスできることは非常に多くなります。これまでの薬剤師のあり方を踏まえると、多職種に対する能動的な働きかけは少しハードルが高く感じるかもしれませんが、地域医療でリーダーシップをとっていくことはこれからの薬剤師の職責の1つともいえます。衛生材料の供給という点では、地域連携薬局は薬物療法だけでなく地域の在宅医療全体を支える中心的な存在となる必要があります。
在宅に活躍の場を広げるにあたっては、医療者として患者さんの死を意識することが重要です。医師や看護師に比べ、薬剤師は死に直面する機会は圧倒的に少なく、病院薬剤師でさえも少し遠いところにいました。現状では人の死の瞬間に立ち会うなどとんでもないと拒否反応を示す薬剤師の方も多いでしょう。しかし、そのような時に必要とされることは医療者として認められた証拠であるともいえます。その方の人生の最後の時を見守る、これは医療者として非常に重要な役割です。
最近、老人施設で母親を看取ったという方から話を聞く機会がありました。経口での栄養摂取がほとんどできない状態で急性期病院から施設に戻す決断をした家族と、今後の在宅医療について相談する会議の場で、家族が「命の終わりが直前に迫っている状態でこれまで通り薬を飲ませることに疑問を感じている。今さら薬を飲ませるのであれば、代わりに一口でも食べ物を食べさせたい」という希望を伝えると、同席した担当薬剤師は毅然とした態度で医師に減薬についての処方提案をしてくれたといいます。患者さんの死に直面したとき、患者さん本人とそのご家族の思いを前に、逃げずにその思いに応えることが医療者として必要不可欠なことだと思います。それができて初めて真の医療の担い手として機能するのではないでしょうか。そのためには生命倫理や、メンタリティを保つための学習を自ら行っていくことも非常に重要です。

すべては患者中心のスタンス 薬剤師よ、医療者たれ!

ポリファーマシーや残薬の軽減、ジェネリック促進による医療費削減など、薬剤師の寄与が期待されるさまざまな問題がありますが、本質は「国に要求されているから」、「調剤報酬の算定要件であるから」ではありません。すべては患者さんのために実現されるべきことです。患者さん中心に考えるというスタンスがぶれなければ、おのずと問題は解決へ向かうと思います。薬剤師は医療者なのですから。私は、この記事を読んでくれた読者のあなたに期待しています。これからの日本の医療を支えるのはあなたなのです。

服薬ケア研究会

服薬ケア研究会では、薬剤師が行う医療行為の概念を「服薬ケア」と呼び、教育活動および研究活動を行っている。
【服薬ケアとは】
患者さんに使用される医薬品の管理、および、服薬に関わる事柄、認識、意志、人間関係など、服薬を中心とした治療全般とその反応に対するケアの総称であり、医療者が目指していくべき、患者中心の全人的医療の概念である。

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