薬学部卒業後、製薬メーカーでのOLを経験し、薬剤師として勤務。調剤薬局、病棟薬剤師としての派遣も経験。その後、横浜の調剤薬局に勤めて、そこを受け継ぎ経営。カフェの開業、約2年前には、調剤薬局をもう1店舗を開局。
──かおりんさんは薬剤師兼カフェオーナーと伺いました。
はい、現在、薬剤師として調剤薬局に勤務しつつ、オーガニックカフェを経営しています。オーガニックカフェは約3年前からスタートし私が全ての食事メニューを監修しています。
──なぜカフェを立ち上げられたのでしょうか。
元々、健康と食の関連については興味があり、身体と食に関するセミナーを受講したり書籍を読んだりして勉強していました。食べ物の栄養素はもちろん、食を通じて体調を改善させる可能性を模索していました。
「医食同源※1」という言葉がありますが、ヒトの身体は食べたもので作られますので、私は、体調管理にはまず食事内容に気をつけることが重要だと考えています。
未病※2の段階では、食事で体調を整え、症状の悪化や疾患の発症を抑えることができると言われています。それを薬局に頻繁に来られる患者さんにも実践していただきたいと感じていましたが、思うようにはいかない場面が多く、思い切って薬局の外に活動する場所を作ることにしました。
──薬局に来る患者さんは、未病ではなく既に病気なのでは?
もちろん基本的には、来局される患者さんは、病気と診断され処方せんを持ってこられます。ただ、調剤薬局の業務の中で、薬に過剰に頼られているのでは、と疑問に感じる時もあります。
たとえば、「風邪で少しだけ喉が気になるので、痛くなる前に早めに薬をもらいにきた」とか「とにかく抗生物質をもらいにきた」といった方に対応することがあります。今は新型コロナウイルス感染症の可能性もあるので、用心すること自体は重要だと思います。ですが、消炎鎮痛剤や抗生物質の予防的な服用は、免疫力を弱めたり耐性菌の獲得につながる可能性もあります。やみくもな予防的な薬の服用には弊害もある、と心のうちで思いつつも薬をお渡ししているジレンマを感じていました。
CAFE CURE NATURAの看板メニュー、ヘルシーおから春巻きプレート。
門倉義幸氏による 店内での講演。
CAFE CURE NATURA(カフェキュア・ナチュラ)
東京都世田谷区駒沢4-1-22 JCS駒沢2階
──調剤薬局に処方せんを持ってこられた以上、薬を出さない訳にはいかないですよね。
生活習慣病の患者さんの場合、薬の量や種類が増えていくケースも散見されますが、症状が乏しいので、とにかく薬を服用していれば自分は健康だ、と考えられている患者さんも多いように思われます。私の経験では、こうした患者さんはたいてい、運動や食事などの生活習慣を改善されている気配が全くありません。
──カフェでは、健康のために食に注意してもらいたいというメッセージは届きますか?
私のカフェでは基本的に無添加の素材を使ったお料理をお出ししていますが、それだけでなく、メタトロン※3を使ってお客さまの体質に合った食材を調べるといった試みも実施しています。
また、体の糖化度を表わす指標のひとつにAGE※4というものがありますが、AGEを測定する体内糖化度検査会を定期的に実施しています。糖質の取り過ぎでAGEの体内量が多くなると、免疫力低下や老化促進、意欲低下のほか、生活習慣病発症リスクの上昇も懸念されます。AGEでいわば“体内の年齢”を測定し自分の身体の状況を把握することは、未病の段階で疾患発症を抑えるきっかけになるのではと考えています。
このほか、不定期ですが医師などをお呼びして講演会を開くこともあります。直近では、門倉義幸先生(元 昭和大学横浜市北部病院耳鼻咽喉科准教授、現 葉山かどくら耳鼻咽喉科院長)に、「若年性認知症の前段階における嗅覚低下の可能性」というテーマで当カフェにてご講演いただきました。
──かなり特殊なカフェですね。
新型コロナの影響で大変な状況が続いていると思いますが、薬剤師兼カフェオーナーとしての今後について教えてください。
カフェのメニューにあるお料理はほぼ全てお持ち帰りいただけるようにしています。また、飲食ご提供以外の取り組みとしては、私が実施した食事指導の結果を集積して分析したいと考えています。さらに、医師とのつながりを強めて色々な方をカフェのイベントにお呼びしたり、お客様に健康相談を受けた際に適切な施設のご紹介ができるようにしたいとも思っています。やはり診察のプロは薬剤師ではなく医師ですので。
薬局薬剤師としては、来局される患者さんに服薬だけでなく食事のポイントもお伝えし、ここぞという時に薬をしっかりと適切に服用いただき、薬と食物をうまく使って健康を維持するお手伝いをしたいと思っています。
- 病気の治療と食事は、生命を養い健康を保つには欠くことができないものとして、2つの源は同じという考え。
- 発症には至らないものの軽い症状がある状態。
- 人体の各臓器から発せられる周波数や、全身の生体磁場エネルギーを読み取り、各臓器の画像に6段階の数字で評価する器具。海外では医療機器として扱われている。
- 終末糖化産物。身体の様々な老化に関与する物質の総称。体の糖化度を表わす指標のひとつとされる。