2003年に年間自殺者数は34,427名と最多人数を示した後、減少傾向だったが、2020年は増加に転じた。新型コロナウイルス感染拡大が精神面に与えた影響、今後の自殺対策について公益社団法人日本精神神経科診療所協会主催、第10回自殺対策講演会「これからの自殺対策について─ウィズ・コロナ、ポスト・コロナを見据えて」を取材した。
2020年の年間自殺者数内訳
2020年の年間自殺者数は21,081名(2020年1~12月)、うち男性14,055名(前年より23名減)、女性7,026人(前年より935名増)で2019年より912名増加した。小中高生の自殺者数は499名(小学生14名、中学生146名、高校生339名)と2016年以降、最多だった。
「弱み」を悪化させるコロナ既存のサービス、治療の維持と強化を
NPO法人メンタルケア協議会理事の西村由紀氏は、精神保健福祉士として電話相談やSNS相談事業に従事している。西村氏が年間約6万件の相談を受ける関連部門(東京都と神奈川県で6か所)の2020年3月~2021年1月の相談内容を分析したところ、新型コロナを主訴とする相談が増加していた。最も多いものは、仕事の形態の変化や生活リズムの乱れ、外出自粛による不自由さなどの「生活の変化」で全体の36.1%、次いで感染に対する「漠然とした不安(身体症状なし)」が20.2%と続く。感染への恐怖が妄想や受診抑制に繋がった結果、「精神症状の悪化」も14.0%あった。
西村氏は新型コロナ流行下での自殺企図には、3つのパターンがあると指摘する。①失業など本人を打ちのめす出来事により精神状態が悪化、②夫婦・家族関係で、もともと進行していた問題が急激に悪化、③受診抑制、不規則な服薬、生活の変化や感染不安等のストレスなどによる精神病性の症状の悪化、である。
自殺企図における②と③のパターンが示すとおり、新型コロナは家族間の問題、不安が強い、潔癖、新しい環境が不得手などその人が持っていた「弱み」に付け込み、状態を悪化させるきっかけになっている。また認知症患者や発達障害の子どもを抱える家庭では、支援施設の閉鎖により、家族(特に女性)への負担が増加している。一方で、感染対策として人との接触を減らすことが推奨され、困難な状況を乗り越えるために必要な協力関係が希薄になっているという。西村氏は、新型コロナの特別な相談を設けるだけでなく、介護や子育て、精神疾患など既存の問題の悪化を防ぐため、サービスや治療の提供を維持し、より力を入れる必要があるとまとめた。
コロナストレスによる精神科受診の増加とセルフケア
日本精神神経科診療所協会会長の三木和平氏は、新…