Special Report

腎臓病薬物療法認定薬剤師が語る「腎機能低下患者の処方監査と栄養指導」

2021年9月号
腎臓病患者の処方箋・検査値・栄養指導の着目点へ画像
腎機能の低下については日々の投薬の際に目を光らせていることと思いますが、医療機関や診療科を複数受診する患者さんなどでは、思わぬところで引っかかってしまうケースもあります。腎臓病薬物療法認定薬剤師の大野伴和氏に、処方監査のポイントや腎機能が低下している方への栄養指導について解説していただきます。

腎臓病患者と関わる機会が多い薬局 調整食の取扱いも多様

当薬局は総合病院の近隣に位置しており、1日120枚程度の処方箋を応需しています。循環器科と総合診療科では慢性腎臓病(以下、CKD)患者、透析センターでは透析患者の処方箋を受けているため、CKD患者に関わる機会は比較的多い環境といえるでしょう。日本栄養士会が認定する栄養ケア・ステーションの流れもあり管理栄養士が在籍する保険薬局もここ数年増えてきましたが、まつもと薬局では20年以上前から管理栄養士を配置して栄養相談を行う体制を取ってきました。腎臓病関連の成分調整食品の取扱いも多く、近隣の病院から成分調整食品を紹介されて来局されることもあります。

認定取得を目指す薬剤師さんへ
腎臓病薬物療法認定薬剤師へのポイント
筆記試験
日本腎臓病薬物療法学会の腎臓病薬物療法専門・認定薬剤師のテキストを中心に勉強。受験経験者から情報収集を行い、出題された箇所とテキストを照らし合わせながらその周辺を重点的に学習。直近の腎機能関連の話題もあれば押さえておきたい。
提出する自験例数
直近5年間の30症例を提出。整形外科や眼科などの処方が腎機能低下に引っかかるという事例の方が意外に多いので、循環器科や総合内科が近隣になくとも諦めることなかれ。
症例報告内容と書き方
疑義照会に至る根拠(添付文書やガイドライン、文献報告等)➡介入内容結果と経過、を段階的にわかりやすく記載。H2ブロッカーや抗生剤の減量など、腎機能低下で処方に注意すべき典型例ばかりに偏らないように。

大野氏の話をもとに編集部作成

整形外科、眼科の処方に注意 医療事故のニュースもチェック

内科系の診療科では、診察時に患者の腎機能を確認していることが多い一方で、整形外科や眼科など他の診療科では見過ごされることがあります。ここ最近、整形外科でもNSAIDsには気を配るようになってきたと思いますが、慢性疼痛に対してはNSAIDs以外にもデュロキセチンやトラマドールといった薬剤の処方頻度が増えています。見落とされがちですが、デュロキセチンや持効型のトラマドールは高度の腎機能障害のある患者では禁忌となっていますので処方時には注意が必要と感じています。
眼科は比較的高齢者の受診が多い診療科です。先日、心臓血管外科で定期薬としてアゾセミド(利尿薬)を服用している腎機能低下患者が、眼科を受診した際にアセタゾラミド(眼圧降下薬)を通常量処方された事例がありました。アセタゾラミドは90%以上が未変化体として腎臓から排泄されるため腎機能低下時には減量が必要な薬剤です。処方当初、対応した他の薬局で見落とされ、7日間服用した結果、眼圧は低下したものの脱水により腎機能の急激な低下がみられました。その後、心臓血管外科でアゾセミドを減量し改善しましたが眼圧降下薬処方時のチェックも欠かせません。
最新の医療事故のニュースも疑義照会のきっかけになります。2021年7月に、透析患者が抗不整脈薬(ピルシカイニド)の過量投与により亡くなる事例が発生しました。抗不整脈薬は腎排泄型の薬剤が多いと感じている薬剤師の方もいると思いますが、改めて抗不整脈薬について気を引き締められた方もいるでしょう。私も腎排泄型のシベンゾリンで、高齢者では初回投与量50mgが推奨されるところを100mgで開始されていた症例に遭遇したことがあります。こうした最新のニュースにもアンテナを張り巡らすことで、監査の意識が高まるものと思われます。

処方薬からの情報収集 CKD重症度ステージの推測

当薬局の近隣の病院からの処方箋には検査値が記載されていないため、患者情報の収集は処方内容の確認から始まります。一概にはいえませんが、経験上、患者の腎機能低下が疑われる処方例を示します。

腎機能低下が考えられる処方例
  • 高齢者への利尿薬の処方
  • 腎機能低下による尿酸値の上昇を抑える高尿酸血症治療薬(フェブキソスタット等)の処方
  • 腎機能低下による減量が必要な薬剤の用量調節(DPP-4阻害薬、DOAC、H2ブロッカー、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗不整脈薬、スルピリド等)

また、リン吸着薬や高カリウム血症改善剤、球形吸着炭は、いずれもCKD治療薬ですので、これらの処方があった際は確実に腎機能低下例と考え、他の処方薬の用法・用量に注意すべきと考えます。
さらに、処方薬からCKDの重症度ステージ(参考)をある程度推測できます。リン吸着薬や球形吸着炭が処方されていれば、ステージG4以降と考えられますし、鉄剤や高カリウム血症改善剤はG3b以降で使用されることが多い印象があります。

参考 CKDのステージ進行と食事療法の基準
ステージ 摂取エネルギー 塩分 たんぱく質 カリウム
G1
正常または高値
(GFR≧90)
標準体重1kg
あたり
25~35kcal/日
高血圧があれば、
3g以上~6g未満/日
過剰な摂取を
しない
制限なし
G2
正常または軽度低下
(GFR 60~89)
G3a
軽度~中等度低下
(GFR 45~59)
3g以上~6g未満/日 標準体重1kg
あたり
0.8~1.0g/日
G3b
中等度~高度低下
(GFR 30~44)
標準体重1kg
あたり
0.6~0.8g/日
2000mg以下/日
G4
高度低下
(GFR 15~29)
1500mg以下/日
G5
末期腎不全
(GFR<15)

※標準体重(㎏)=身長(m)×身長(m)×22

「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版」をもとに編集部作成

疑義照会の裏付けとなる検査値と確認事項

処方内容から疑義照会をするにあたり、患者が手元に検査値を持ち合わせていない場合には、患者の帰宅後に電話で確認したり、在宅訪問などで外出する機会にあわせてご自宅を訪問す…

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