
緑内障は日本における失明原因の第1位であり、40歳以上の20人に1人が罹患しているといわれる。長期にわたる治療期間に薬剤を継続して使用することが重要であるが、海外の報告によると糖尿病や高血圧など他の慢性疾患に比べて服薬継続率が低く1)、患者のアドヒアランスを維持し、いかに治療の継続を支援していくかが課題となっている。新規緑内障患者に対してアンケートを実施し、結果に応じた点眼指導を実施することで初回脱落率の有意な低下を導いたという阪神調剤薬局 霞が関ファーマシーの野田峻佑氏に取り組みを聞いた。
緑内障の症状と治療
緑内障は眼圧の上昇により視野が狭くなる病気と定義される。眼球は「房水」という液体が内部で循環することで、ほぼ一定の圧力が眼内に発生して形状を保っている。この圧力を眼圧と呼び、眼圧が上昇すると視神経が圧迫され、障害される。自覚症状としては、見えない場所(暗点)が出現する、視野が狭くなるという症状が最も一般的である。多くの場合、病気の進行は緩やかであり、両目が互いの視野を補うために、初期は視野障害があっても自覚しないことがほとんどで、早期発見、早期治療が重要となる。
眼圧の正常値は10~21mmHgとされており、日本人は眼圧が正常範囲内でも発症する正常眼圧緑内障が多い。正常眼圧緑内障の原因や発症メカニズムは分かっていないが、強度近視は緑内障のリスクファクターの一つとされている。
障害を受けた視神経を元に戻すことはできないため、緑内障の悪化を防ぐために眼圧を下げることが基本治療となる。治療法には、薬物療法、レーザー療法、手術療法などが行われる。薬物療法では、プロスタグランジン関連薬、交感神経β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、交感神経α2刺激薬、ROCK阻害薬などが用いられる。

継続率は3カ月で73.2%まで低下
緑内障は生涯にわたる管理が必要となるが、治療効果を実感できるわけではないため、点眼のわずらわしさや副作用のためにアドヒアランスが低下しやすい。新規に診断された日本人緑内障患者約3,000例を対象に薬剤使用の継続率について調査2)した結果によると、緑内障の継続率は開始後3カ月で73.2%まで低下し、治療開始早期の脱落が多い傾向がみられた。開始から6カ月後の継続率は68.1%、12カ月後では60.9%と、治療が長引くにつれて継続率は低下することから、初回の脱落を防ぐことが重要である。
阪神調剤薬局の取り組み
阪神調剤薬局 霞が関ファーマシーの野田峻佑氏らは、患者に必要とされる薬局像を模索する中で、自覚症状がない疾患の治療継続率に着目。新規緑内障患者に薬剤師が介入した場合に来局継続率が向上するか検討した。
調査は、阪神調剤薬局グループ内で眼科処方箋応需数の多い5店舗(薬剤師22名)で、2016年11月21日~2017年2月20日までに過去1年間で緑内障治療剤の処方がなかった患者128人を対象に実施した。投薬の待ち時間にアンケートを行い、128人のうちアンケートに回答した69人に回答内容に応じた服薬指導を行った。
初回アンケートは、①医師からの説明状況と疾患の理解度を測る質問、②患者の治療に対する不安を聞き取る質問、③服薬遵守率を高める質問、④次回来局を意識づける質問─の4つの質問で構成した。現場の薬剤師と患者に必要なことは何かを議論しながら作成したという。
アンケート結果から、①の疾患の理解が不十分な患者には疾患の説明を行い、②の治療に関する不安で「点眼液の効果や副作用」を挙…