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薬剤師がおさえておきたい注目の記事
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Special Report

薬剤使用期間中の患者フォローアップの実際<第1回>

2022年9月号
薬剤使用期間中の患者フォローアップの実際の画像

2020年から義務化となった投薬後の患者フォローアップ。診療報酬改定としても患者フォローアップなど対人業務を適切に評価するために服薬管理指導料が新設するなど、薬剤師によるフォローアップが本格化してきています。グループ全体としてフォローアップに取り組み始めているブルークロス調剤薬局を取材しました。

フォローアップ本格化の背景

当社では、フォローアップが義務化となる2020年以前から、個々の薬剤師の判断で患者さんの不安解消のために、電話でのご体調確認を適宜実施していました。しかし、個人の考えや裁量によるものが大きく、実施状況のバラつきが目立っていました。

表 かつてのフォローアップ実施の状況とできない理由
フォローアップ
実施状況
  • 個々の薬剤師の判断で2020年以前から患者さんの不安解消として、電話での体調確認を実施
  • フォローアップの方針や手段はバラバラ。高齢の患者さんは朝早くから活動されているため朝に電話する、買い物ついでに薬局に寄ってもらえるよう声がけを行い、対面での体調確認など
フォローアップ
を実施できない
理由
  • フォローアップした方が良いのは分かっているけれど、患者数が多い店舗ではその余裕がない
  • 個々の判断に任せると結局はフォローアップできない、あるいは、実施件数が少ない店舗では何をどうすれば良いのか分からない
  • フォローアップをすべきか否か、判断がその場ですぐにできないまま、他の業務に忙殺されてしまう

加瀨氏の話を元に作成

上の表でみられるように、個人業務から組織業務へ変換させることが当社の課題でした。また、昨今の流れとして対人業務の加算対象が増えています。取り組みを数値化し、「好事例を店舗間で共有できる仕組み作り」が必要な状況でした。

フォローアップのグループ内への波及

服薬フォローアップを当社全体に根付かせるためにはどうすればいいのか、服薬フォローアップ機能を提供している株式会社メドレーと協議しながら進めています。フォローアップ実施の組織変革として、目標の設定や推進メンバーの選定、店舗内スタッフへの成功事例の共有、他店舗への拡大などのステップを確認させてもらいました。
当社は全14店舗の薬局チェーンですが、そのうちの3店舗からフォローアップの組織変革を実施しました。具体的には、まず3店舗に推進メンバー1名を配置し、各店舗でその3名がフォローアップを実施。翌月に3店舗の推進メンバー以外の薬剤師に波及させ、その翌月には3店舗の事務スタッフ含め店舗配属の全メンバーがフォローアップの事例を共有しその重要性について意識する、というステップです。

患者へのフォローアップの紹介と同意取得

フォローアップをされた経験がない患者さんに対し、フォローアップをどのように紹介し同意してもらうか、これは課題の一つだと思います。当社では株式会社メドレー提供の資材を活用し、来局された患者さんに「アンケート」という形でフォローアップの説明と意思確認を実施しました。その結果、1カ月でお声がけした約550件中、529件でフォローアップ実施の賛同を得ました。
この96%超のフォローアップ賛同率には事務スタッフが大きく貢献してくれました。事務スタッフは日ごろから処方箋を受け取る際に患者さんに雑談交じりに上手にコミュニケーションをとってくれているので、彼女らからフォローアップを紹介することで患者さんが構えずに聞いてくれます。
薬が目の前に来たら、話を聞いて受け取って早く帰りたいという患者さんの心理を想像し、調剤監査から服薬指導にかけての若干の「間」をフォローアップ紹介のタイミングとしました。
なお、本アンケートではご連絡方法として電話か携帯電話のショートメッセージ(SMS)のいずれを希望されるかを調査しましたが、高齢の患者さんでもスマートフォンをお持ちの方が多いといった新しい発見もありました。

集計と数値化の重要性

フォローアップをグループ全体に浸透させる上で重要なのは、取り組みを集計し、数値化することです。「頑張りました」だけでなく、何がどの程度の期間で何件できたのか。フォローアップ実施の数値を他の店舗に共有すると、他店舗でも同程度あるいはこれ以上もできるのでは、などといった期待感や可能性を示すことができます。
先述の3店舗のフォローアップの実績は、1カ月(24営業日)あたり3店舗合計で109名のフォローアップを実施、うち17件のトレーシングレポートを提出という数値になりました。アンケートの形でフォローアップの同意を得た患者さんはこの月で529件でした。
つまり、同意を得た患者さんのうち約20%にフォローアップを実施したことになります。フォローアップを実施する基準は、「初回投与、薬剤変更、用量変更のいずれかに該当する」、「患者さんの実感として体調に不安がある」のいずれかを原則としました。

フォローアップの手段

フォローアップの手段としては、電話が全体の50%程度、次点でSMSが約40%と多く、後日来局や別のアプリケーションも少数ながらあります。患者さんの個々のご希望に沿った方法を選択していますので、これは現状の患者さんの要望としてある程度当てはまる割合だと思います。
電話は、特に高齢者の患者さんにとってわかりやすく抵抗感をもたれない点で非常に優れています。昨年までは全て電話対応でした。ただ、かける側の業務負担があるという意見が上がっています。
SMSは日中労働していて電話に出られない方の希望が多いです。また、内容の漏れがないことや返信がしやすいことでSMSは需要が増加している印象です。その他、別のアプリケーションを使用しているケースが約10%、他のご用ついでに後日来局いただき対面でフォローアップするケースが数件あります。
ただし、先述のアンケートでは、電話とSMSの両方をご希望(どちらでも良い)という方も一定数いました。実施していくうちに、どちらがより良いのか、使い分ける場合はどうするかが見えてくると思います。今後薬歴などで情報共有を行い、フォローアップ手段も定期的に見直しを行っていく予定です。

フォローアップの事例

ここから、フォローアップの事例をご紹介します。
事例2は、当薬局で投薬した薬剤の副作用ではなく、患者さんが別で処方されている薬剤のフォローアップです。患者さんからしてみれば、服用している薬剤がどこの薬局でもらったとしても、服用している薬剤への不安は変わりませんので、当薬局で投薬していなくとも来局された患者さんの体調不安に対しフォローアップを実施することがあります。

事例1
患者情報フォローアップ事例の画像3歳、男性、アトピー性皮膚炎
フォローアップ
の背景
  • アトピー性皮膚炎で再発が繰り返されていた
  • 処方薬は、マイルドクラスのステロイド外用薬、保湿軟膏剤、タクロリムス軟膏小児用

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