薬剤師トップ  〉 ファーマスタイル  〉 業界  〉 Special Report  〉 心不全患者の「つなぐ」薬歴管理 確認点と4つのステップ
check
【特定薬剤管理指導加算】「イ(RMP)」「ロ(選定療養)」算定Q&A
Special Report

心不全患者の「つなぐ」薬歴管理 確認点と4つのステップ

2023年7月号
心不全患者の「つなぐ」薬歴管理確認点と4つのステップの画像

患者さんの安全を守り、かつ薬剤師がそのために振り返るためのツールである薬歴。オンラインセミナー「心不全患者の薬歴マネジメント」(一般社団法人リード・コンファーマ主催)が6月14日に開催され、つなぐ薬局 柏(千葉県)の薬剤師、鈴木邦彦氏が心不全の症例を題材に「情報収集のスキルの向上」「自分でプロブレムリストと治療計画を立案」「つながる薬歴管理のPDCAサイクルを回す」「心不全の治療管理を実践」を目指した薬歴管理のポイントを解説しました。

まずは心不全の概要を整理

2つのTYPEと重症度分類

心不全は、原因となる基礎疾患があり、息切れや浮腫などさまざまな症状が現れて徐々に進行していきます。大きくはHFrEF(収縮不全)とHFpEF(拡張不全)のTYPEに分類され、TYPEごとに治療戦略が異なる点を踏まえておくこともポイントです。
重症度の分類には、A~Dの4つのステージに分類したACCF/AHAの心不全ステージ分類や、息切れなどの自覚症状を指標とするNYHA心機能分類(Ⅰ度〈無症候性〉~Ⅳ度〈重症、末期〉)が広く用いられています。

複数の心不全悪循環ルート

心機能が低下すると、心負荷を上昇させる複数のルートが生じます(参考図)。

参考図 心不全の悪循環ルートと治療薬

心不全の悪循環ルートと治療薬の画像

鈴木氏の話をもとに編集部作成

ひとつは心拍出量が減少すると、腎血流量も減少し、レニン分泌が亢進するルートです。その結果、アンジオテンシンⅡの産生が亢進し、アルドステロンの分泌が亢進します。アンジオテンシンⅡの産生亢進によって末梢血管が収縮し血圧は上昇。またアルドステロンの分泌亢進により水・Naの再吸収が進み、これらが心負荷を招きます。
別のルートでは心機能の低下によって交感神経が活性化すると、末梢血管の収縮やレニンの分泌が亢進し、心負荷へとつながります。

4段階で進める薬歴管理(事例参照)

【STEP1】 患者情報の収集と作成(患者サマリ)

網羅的に情報を収集し(主訴、現病歴、既往歴、服用薬[OTC薬・健康食品含む]、アレルギー、社会歴[仕事・飲酒・喫煙・趣味など]、家族歴など)、患者サマリを作成します。情報収集は薬歴管理の“肝”であり、治療計画の質を左右するといっても過言ではありません。重要情報を取りこぼさないために、「先生に言い忘れたことなどありませんか」と患者さんに尋ねることも忘れないようにしましょう。

病歴、服用薬がみえる項目をピックアップ 検査値は日付を記載

血液検査の結果を入手したら、いつの検査結果なのか確認することが重要です。薬歴にはすべての検査値を記載する必要はありません。全体に目を通してベースラインを押さえたら、特に病歴、服用薬、生活習慣が反映される項目をピックアップします。薬剤の排泄経路に関わる肝機能(AST、ALTなど)、腎機能(BUN、Scrなど)にも注目します。
心不全のマーカーであるBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心室から分泌されるホルモンです。これに対して、ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)は心房から分泌されるホルモンです。どちらも交感神経活性、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAAS)活性、心筋障害を抑制する働きがあり、心不全が進行するほど数値が高くなります。
検査値は時系列で追えるように日付を記録します。

この記事の関連キーワード

この記事の冊子

特集

2023年最新版 心不全の診断と治療

心不全の患者数は増加の一途をたどり、毎年1万人ベースで患者数が増加していると推定されています。団塊の世代が後期高齢者に突入する2025年以降はさらに患者数が増加すると予測されることから「心不全パンデミック」の到来と危惧されており、その対策が喫緊の医療課題となっています。

2023年最新版 心不全の診断と治療の画像
Special Report

心不全患者の「つなぐ」薬歴管理 確認点と4つのステップ

患者さんの安全を守り、かつ薬剤師がそのために振り返るためのツールである薬歴。オンラインセミナー「心不全患者の薬歴マネジメント」が6月14日に開催され、つなぐ薬局 柏の薬剤師、鈴木邦彦氏が心不全の症例を題材に薬歴管理のポイントを解説しました。

心不全患者の「つなぐ」薬歴管理 確認点と4つのステップの画像
カフェ

脂肪肝による心不全リスクと改善法

7月28日は「日本肝炎デー」。厚生労働省は、7月28日を含む1週間を「肝臓週間」とし、肝炎の病態や予防、治療などの正しい理解が進むよう普及・啓発を行い、肝炎ウイルス検査の受検を呼びかけています。沈黙の臓器とも呼ばれ、自覚症状が乏しい肝臓は、定期的なセルフチェックが大切です。

「脂肪肝による心不全リスクと改善法」 ファーマスタイルカフェVol.14の画像
Special Report

向精神薬の多剤投与と等価換算

向精神薬は様々な場面で使用されています。薬剤師アンケートでは、向精神薬について知りたいこととして「用量調整の考え方」が多く選ばれました。 向精神薬の課題とされている多剤投与と、その解決の糸口となり得る薬剤の等価換算について紹介します。

向精神薬の多剤投与と等価換算の画像
m3オリジナル

向精神薬の用量調整のCase Study【抗精神病薬編】

向精神薬は多剤処方のケースが多く、有効性と副作用のバランスを鑑みて個々の患者さんで薬剤の用量調整を検討する必要があります。『ゆるりとはじめる精神科の1冊目』より、ケーススタディとして向精神薬の調整のポイントを見ていきましょう。

向精神薬の用量調整のCase Study【抗精神病薬編】の画像
m3オリジナル

向精神薬の用量調整のCase Study【睡眠薬編】

精神科主治医より「薬剤について相談がある」との連絡を受け、院内薬剤師が患者Bさんの外来診察室に同席することになりました。睡眠薬と抗うつ薬の種類と用量調整について紹介します。

向精神薬の用量調整のCase Study【睡眠薬編】の画像
m3オリジナル

書籍『ゆるりとはじめる精神科の1冊目』から学べること

向精神薬の用量調整のケーススタディを配信している本企画で参考にしているのが、2021年5月に株式会社じほうから発行された『ゆるりとはじめる精神科の1冊目』です。今回は本書籍で学べることをご紹介します。

書籍『ゆるりとはじめる精神科の1冊目』から学べることの画像

この記事の関連記事

人気記事ランキング