ファーマスタイル2023年4月号の更年期障害特集で登場したように、向精神薬は様々な場面で使用されています。4月にm3.comで実施した薬剤師アンケートでは、向精神薬について知りたいこととして「用量調整の考え方」が多く選ばれました。向精神薬の課題とされている多剤投与と、その解決の糸口となり得る薬剤の等価換算について紹介します。
向精神薬の多剤投与
向精神薬は原則として単剤による処方が推奨されていますが、臨床では複数の薬剤が処方されているのが実情です。一つひとつの薬剤は添付文書の用量範囲内だったとしても、全体として大量投与の状態となっていることも珍しくなく、多剤投与が問題となるケースがあります。
向精神薬の多剤投与とは、1回の処方で、抗不安薬3種類以上、睡眠薬3種類以上、抗うつ薬3種類以上または抗精神病薬3種類以上に該当することを指します(ここでいう向精神薬とは、抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬です)。
多剤投与による問題
向精神薬の多剤投与による代表的な問題が、抗精神病薬の副作用として現れる振戦や固縮などの錐体外路症状です。また、ベンゾジアゼピン受容体作動薬は副作用や依存性、中断した際の離脱症状のリスクは近年では広く知れ渡っていますが症状改善のために現在も活用されています。
処方薬剤数を減らすというのは、多剤投与の明確な解決手段ではありますが、逆に疾患の症状改善が難しくなるという状況をもたらす可能性もあります。効果と副作用のバランスが重要で、精神症状は若干悪化するけれど副作用が大きく改善するという場合には減薬を実施するなど、その患者さんのトータルのQOLを鑑みた判断が必要となります。
向精神薬の等価換算
向精神薬の問題は、薬剤の種類の多さだけでなく、処方されている向精神薬全体の投与量の多さが原因となっていることも多くあります。そのため、向精神薬については現在「減量・単純化」が推進されています。
向精神薬の全体の処方量を把握するために、「向精神薬の等価換算」という手段があります。等価換算とは、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬というカテゴリーに分類し、そのカテゴリーの基準の薬剤で用量の合計を算出するというものです(表)。等価換算は、向精神薬を服用している精神疾患患者さんの服用量の把握だけでなく、向精神薬の切り換えの際の投与量設定の目安としても使用されています。