薬剤師トップ  〉 ファーマスタイル  〉 業界  〉 Special Report  〉 向精神薬の多剤投与と等価換算
check
【オススメ】生活保護や公費の患者さんは選定療養の対象になる?
Special Report

向精神薬の多剤投与と等価換算

2023年7月号
向精神薬の多剤投与と等価換算の画像

ファーマスタイル2023年4月号の更年期障害特集で登場したように、向精神薬は様々な場面で使用されています。4月にm3.comで実施した薬剤師アンケートでは、向精神薬について知りたいこととして「用量調整の考え方」が多く選ばれました。向精神薬の課題とされている多剤投与と、その解決の糸口となり得る薬剤の等価換算について紹介します。

向精神薬の多剤投与

向精神薬は原則として単剤による処方が推奨されていますが、臨床では複数の薬剤が処方されているのが実情です。一つひとつの薬剤は添付文書の用量範囲内だったとしても、全体として大量投与の状態となっていることも珍しくなく、多剤投与が問題となるケースがあります。
向精神薬の多剤投与とは、1回の処方で、抗不安薬3種類以上、睡眠薬3種類以上、抗うつ薬3種類以上または抗精神病薬3種類以上に該当することを指します(ここでいう向精神薬とは、抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬です)。

多剤投与による問題

向精神薬の多剤投与による代表的な問題が、抗精神病薬の副作用として現れる振戦や固縮などの錐体外路症状です。また、ベンゾジアゼピン受容体作動薬は副作用や依存性、中断した際の離脱症状のリスクは近年では広く知れ渡っていますが症状改善のために現在も活用されています。
処方薬剤数を減らすというのは、多剤投与の明確な解決手段ではありますが、逆に疾患の症状改善が難しくなるという状況をもたらす可能性もあります。効果と副作用のバランスが重要で、精神症状は若干悪化するけれど副作用が大きく改善するという場合には減薬を実施するなど、その患者さんのトータルのQOLを鑑みた判断が必要となります。

向精神薬の等価換算

向精神薬の問題は、薬剤の種類の多さだけでなく、処方されている向精神薬全体の投与量の多さが原因となっていることも多くあります。そのため、向精神薬については現在「減量・単純化」が推進されています。
向精神薬の全体の処方量を把握するために、「向精神薬の等価換算」という手段があります。等価換算とは、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬というカテゴリーに分類し、そのカテゴリーの基準の薬剤で用量の合計を算出するというものです(表)。等価換算は、向精神薬を服用している精神疾患患者さんの服用量の把握だけでなく、向精神薬の切り換えの際の投与量設定の目安としても使用されています。

この記事の関連キーワード

この記事の冊子

特集

2023年最新版 心不全の診断と治療

心不全の患者数は増加の一途をたどり、毎年1万人ベースで患者数が増加していると推定されています。団塊の世代が後期高齢者に突入する2025年以降はさらに患者数が増加すると予測されることから「心不全パンデミック」の到来と危惧されており、その対策が喫緊の医療課題となっています。

2023年最新版 心不全の診断と治療の画像
Special Report

心不全患者の「つなぐ」薬歴管理 確認点と4つのステップ

患者さんの安全を守り、かつ薬剤師がそのために振り返るためのツールである薬歴。オンラインセミナー「心不全患者の薬歴マネジメント」が6月14日に開催され、つなぐ薬局 柏の薬剤師、鈴木邦彦氏が心不全の症例を題材に薬歴管理のポイントを解説しました。

心不全患者の「つなぐ」薬歴管理 確認点と4つのステップの画像
カフェ

脂肪肝による心不全リスクと改善法

7月28日は「日本肝炎デー」。厚生労働省は、7月28日を含む1週間を「肝臓週間」とし、肝炎の病態や予防、治療などの正しい理解が進むよう普及・啓発を行い、肝炎ウイルス検査の受検を呼びかけています。沈黙の臓器とも呼ばれ、自覚症状が乏しい肝臓は、定期的なセルフチェックが大切です。

「脂肪肝による心不全リスクと改善法」 ファーマスタイルカフェVol.14の画像
Special Report

向精神薬の多剤投与と等価換算

向精神薬は様々な場面で使用されています。薬剤師アンケートでは、向精神薬について知りたいこととして「用量調整の考え方」が多く選ばれました。 向精神薬の課題とされている多剤投与と、その解決の糸口となり得る薬剤の等価換算について紹介します。

向精神薬の多剤投与と等価換算の画像
m3オリジナル

向精神薬の用量調整のCase Study【抗精神病薬編】

向精神薬は多剤処方のケースが多く、有効性と副作用のバランスを鑑みて個々の患者さんで薬剤の用量調整を検討する必要があります。『ゆるりとはじめる精神科の1冊目』より、ケーススタディとして向精神薬の調整のポイントを見ていきましょう。

向精神薬の用量調整のCase Study【抗精神病薬編】の画像
m3オリジナル

向精神薬の用量調整のCase Study【睡眠薬編】

精神科主治医より「薬剤について相談がある」との連絡を受け、院内薬剤師が患者Bさんの外来診察室に同席することになりました。睡眠薬と抗うつ薬の種類と用量調整について紹介します。

向精神薬の用量調整のCase Study【睡眠薬編】の画像
m3オリジナル

書籍『ゆるりとはじめる精神科の1冊目』から学べること

向精神薬の用量調整のケーススタディを配信している本企画で参考にしているのが、2021年5月に株式会社じほうから発行された『ゆるりとはじめる精神科の1冊目』です。今回は本書籍で学べることをご紹介します。

書籍『ゆるりとはじめる精神科の1冊目』から学べることの画像

この記事の関連記事

人気記事ランキング