薬剤師トップ  〉 ファーマスタイル  〉 業界  〉 Special Report  〉 服薬ケア医療学会第13回大会 SP研修をしてみよう!
check
薬剤師がおさえておきたい注目の記事
【調剤報酬改定2024よくある質問】最初に処方された1回に限り算定って?
Special Report

服薬ケア医療学会第13回大会 SP研修をしてみよう!

2023年12月号
服薬ケア医療学会第13回大会SP研修をしてみよう!の画像

対人業務の重要度と期待が高まる中、服薬ケア医療学会第13回大会では、「SP研修」の実践型講演が行われました。SP研修は、ロールプレイとどこが異なり、何が学べるのでしょうか。

SP研修とは

「SP」とはSimulated Patient、すなわち「模擬患者」であり、薬剤師におけるSP研修は模擬患者に対する服薬指導の研修だ。服薬ケア医療学会では、前身の服薬ケア研究会の時からSP研修を全国で実施してきた。
本学会理事長の岡村祐聡氏は、薬剤師相手のSPの必要条件として、医師とのコミュニケーションは十分か、処方薬に対する不安や不満はないか、治療のモチベーションはどうかなど、「患者さんの気持ちをフィードバックしてくれること」を挙げている。

ロールプレイvs. SP研修

ロールプレイとは、登場人物がそれぞれの役割(ロール)を決め、そこで何らかの目的をもって模擬応対(プレイ)をすること。SP研修も、ある意味ではロールプレイではあるのだが、一般的なロールプレイとは似て非なるものであるという。何が違うのだろうか。
岡村氏は、「通常のロールプレイは、セールストークのような内容を流暢に話す練習になります。それ自体の意義はあります。しかし、それだけでは薬剤師が実際に応対する患者さんへの服薬指導の練習にはならないと思います」と話す。患者さんが持つ感情などが細かく設定されていないため、リアルな患者さんの反応が体験できないという。
岡村氏は「家族構成や日常生活が事細かく設定されているSP研修では、患者さんの表情や態度から、反応の善し悪しを見ることができます。まるで本当の患者さんに応対する時のように練習できるということです。そのためSP研修は、トークの練習になるだけでなく、薬剤師の患者応対の善し悪しをリアルに見極めることが出来るのです。もちろん非言語表現を読み取る練習にもなります」とSP研修の長所を強調する。

患者の感情への着目

講演で岡村氏が示した「必要なSPの資質(表1)」では、とりわけ患者の感情への着目が重視されている。

表1 SPの資質
  • 自分の感情の動きをしっかりと感じ取り、それを言葉にして表現できること
  • 薬剤師の応対(態度、表情、言葉など)で、患者としての心が動く場面があったのなら、それをきちんと覚えていて、薬剤師にフィードバックできること
  • 医師に言っていないこと、薬剤師からの質問に答えたくないことがあった場合、その理由と(改善点があるなら)改善提案をハッキリとした言葉で薬剤師に伝えられること

服薬ケア医療学会の講演内容をもとに作成

岡村氏は、「人間の行動は感情に大きく左右されます。感情面がポジティブであれば、行動もポジティブになりがちで、逆もまた然りです。患者さんが、理性として『自分はこの薬を飲む必要がある』とどんなに分かっていても、『嫌だ。飲みたくない』という感情がどこかにあるなら何とかして飲み忘れようとするものなのです。」と説明した。
服薬指導の現場では薬剤師の何気ない言葉によって、患者さんが嫌な気分になったり、逆に嬉しくなり「がんばって生活改善しなくちゃ」と思うことがある。薬剤師の応対の善し悪しによって心の動きを完璧に再現することは、本物の患者さんとの応対により近い状況を作り出す。

患者設定の細かさ

服薬ケア医療学会のSPでは、ここまでは要らないだろうと思うようなものも細かく設定されている。岡村氏曰く、細かく設定すればするほど患者さんの非言語に厚みが出て、リアルな反応が返ってくるようになる。「家族構成、年齢はもちろんのこと、夫の年収、持ち家の住宅ローンがまだ残っているかどうか、最近家族で喧嘩したエピソードや、どこかに出かけて楽しかったエピソードまで決めることもあります。生活サイクルは分単位で細かく設定しています。近隣との交流を大切にしているSPの場合、ご近所さんの名前やいつもどんな付き合いをしているのか、昨日はその人と会ったのか否か、どのような話をしたのかまで決めることもあるのです」と語る。
本学会では、SP研修の実演が行われた。その際に薬剤師役に支給されたSPの基本情報が表2。これはあくまで基本情報。ほかにも極めて細かい部分までSPの人物像を設定しているという。10分間の薬剤師応対としてはまず聞かれないだろう内容もあるそうだ。

表2 SP研修で薬剤師役に支給された情報
患者本人
基本情報
患者氏名:梅里 ゆり子(うめさと ゆりこ)
生年月日:昭和31年4月11日(67歳)
体格:身長157cm、体重63kg、BMI 25.56
既往:花粉症(スギ、ヒノキ、イネ科) 、高血圧症、高脂血症、糖尿病
副作用歴:なし
併用薬:なし(サプリメントの利用もなし)
嗜好品:喫煙歴なし、お酒は好きでご主人との晩酌が日課
車の運転:する
来局時の
言動や印象
  • どんなときも静かに待っておられる。
  • 自分の順番が来ても、混雑時には気を遣って下さる。
    (そのため質問をしたいと思っていらしても

この記事の関連記事

人気記事ランキング