薬剤師トップ  〉 ファーマスタイル  〉 業界  〉 Special Report  〉 2024年度調剤報酬改定 変わる日本の医療 薬局経営の先を読む
check
【オススメ】生活保護や公費の患者さんは選定療養の対象になる?
Special Report

2024年度調剤報酬改定 変わる日本の医療 薬局経営の先を読む

2024年3月号
株式会社アクシス主催 2024年度調剤報酬改定 変わる日本の医療 薬局経営の先を読むの画像

医療・介護・生活支援や介護予防サービスの連携による地域包括ケアシステムの実現に向けて、2024年度の診療報酬改定が実施されます。2024年1月26日、中央社会保険医療協議会(中医協)から改定の個別改定項目案(いわゆる短冊資料)が公開されました。今回は、株式会社アクシス主催「2024調剤報酬改定を読み解く これからどうなる?薬局経営~効率的な薬局経営に必要な考え方~」より、東京薬科大学薬学部生化学研究室客員准教授の巣山貴裕氏による、短冊資料をもとにした調剤報酬改定のポイントなどを紹介します。

※本記事は、2024年1月27日開催のセミナーをもとに作成しております。当セミナー以降の動向によって、解釈が変わることがございます。

薬剤師さんがチェックしている記事
服薬情報等提供料1と2の違いは? >

2025年、2040年問題を見据え地域包括ケアシステムの深化に向けた動き

団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年問題が目前に迫り、団塊ジュニア世代が65歳以上を迎えることで起こりうる2040年問題も現実味を帯びてきた。そのため、地域の実情に応じてマンパワーの確保、効率的・効果的な医療提供体制の構築を進めていく必要があり、これらの実現にむけて8次医療計画が2024年度からスタートする。さらに2025年を目途に構築が推進されてきた地域包括ケアシステムについても、より一層の深化・推進が求められている。

2024年度診療報酬改定基本方針 地域包括ケアシステム・在宅の充実を色濃く

「2024年度診療報酬改定の基本方針」に関する基本認識では、物価高騰・賃金上昇関連の内容も盛り込まれた。この認識のうえ、「現下の雇用情勢を踏まえた人材確保・働き方改革等の推進」を重点課題とし、「ポスト2025を踏まえた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進」「安心・安全で質の高い医療の推進」「効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上」を基本的視点に挙げている。
「2024年度の診療報酬改定は地域包括ケア、在宅医療をさらに充実させていきたい国の考えが反映された内容となっている」と、短冊を概観した巣山氏は述べ、主な注目ポイントとして調剤基本料、地域支援体制加算、連携強化加算、在宅薬学総合体制加算・在宅移行初期管理料、医療DX推進体制整備加算などについて言及した。

調剤基本料

プラス方向に転機へ

厳しい改定が続いてきた調剤報酬だが、近年の物価高への対応や最低賃金の上昇などを踏まえた形で、2024年度の改定はプラス方向に転じると巣山氏は考える。「特に薬剤師の賃上げについては調剤基本料が1~2点程度上がることで補完される可能性がある」という。
処方箋受付回数が多い薬局の評価について、特に大手調剤薬局グループの薬剤師の間では「いわゆる同一敷地内薬局の評価の見直しで、該当店舗だけでなくグループ全体の調剤基本料が一律に下がるのではないか」との懸念がもたれていたが、本件は見送りとなった。ただし、巣山氏は「中医協で継続議論されることになり、2024年度中に何らかの措置が取られる可能性もある」と示唆した。
巣山氏は処方箋受付回数4,000回/集中度70%超の区分にも注目する。今回の改定で当区分の集中度について「上位3番目までの合計」が追加された。これにより、医療モールのような同一区画内にある薬局は調剤基本料2の対象になる可能性がある。「医療モールは安定したビジネスと捉えられていたが、今回の改定で経営戦略の見直しが必要になるかもしれない」と巣山氏は薬局経営の転換の可能性にも触れた。

  • 2024年2月答申後の追加情報より、調剤基本料に関する(参考)を作成
参考 調剤基本料の変更点概要
区分 点数
(改定前
後)
変更点のポイント
調剤基本料1 42
45点
 
調剤基本料2 26
29点
集中度70%超の区分に(上位3番目までの合計)が追加
調剤基本料3(イ) 21
24点
 
調剤基本料3(ロ) 16
19点
 
調剤基本料3(ハ) 32
35点
 
特別調剤基本料A (新)5点 敷地内薬局を想定。施設基準の届け出+関係する医療機関の処方箋50%超
特別調剤基本料B (新)3点 敷地内薬局を想定。施設基準の届け出なし+関係する医療機関の処方箋50%超。地域支援体制加算・連携強化加算・後発医薬品調剤体制加算など算定できない項目が多数あり

2024年2月14日答申の情報をもとに編集部作成

地域支援体制加算

厳格化された施設基準と注目点

地域支援体制加算について、巣山氏は「全体的に厳格化した印象」と語る。
注目点として、まず、施設基準の地域医療に関連する取り組みの要件に一般用医薬品だけでなく要指導医薬品の販売が盛り込まれた点を挙げた。健康サポート薬局の届出要件である48薬効群の品目を取り扱い、来局者が必要な医薬品を選択できるようにする必要がある。この要件について、巣山氏は「店頭での取り扱いが必須か、カタログ等での取り扱いも容認されるのかは現段階ではわからない」と補足した。2点目に、緊急避妊薬を備蓄し、購入者の相談に適切に対応するための体制整備が施設基準に追加された点も挙げた。
医薬品等の供給拠点としての体制の要件では、処方箋の集中率が85%超の薬局について、後発医薬品の使用割合の基準が従来の50%から70%に引き上げられた。この点も大きなインパクトだと巣山氏は感じている。

地域医療への貢献に係る実績に関する要件の増加

今回の改定で、地域医療への貢献に係る実績に関する項目に「小児特定加算」が追加され、9項目から10項目に増えた。
地域支援体制加算1は、表1の10項目のうちを含む3項目を満たす必要がある。地域支援体制加算2では、満たすべき要件が従来の9項目中3項目から10項目中8項目に増えた。巣山氏は「30~50店舗程度を抱え、処方箋受付回数が月4万回未満といった規模のグループ薬局にとっては8項目を満たすのは難しいだろう」とする一方で、おもに大規模薬局グループが対象になる地域支援体制加算3・4は、実績に関する要件では大きな変更はなかったため、あまり影響はないと予測した。

表1 地域支援体制加算1および2の実績要件
区分 概要
時間外等加算/夜間・休日等加算の算定回数:40回以上
麻薬調剤時の加算の算定回数:1回以上
重複投薬・相互作用等防止加算/在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の算定回数:20回以上
かかりつけ薬剤師指導料/かかりつけ薬剤師包括管理料の算定回数:20回以上
外来服薬支援料1の算定回数:1回以上
服用薬剤調整支援料1・2の算定回数:1回以上
在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料など在宅関連の指導料等で単一建物診療患者が1人の場合の算定回数:24回以上
服薬情報等提供料の算定回数:30回以上
小児特定加算の算定回数:1回以上
研修認定薬剤師が地域の多職種連携会議に参加:1回以上
補足)
  • 地域支援体制加算1および2は調剤基本料1を算定する保険薬局を対象。
  • 地域支援体制加算1は10の要件項目のうち、を含む3項目以上を満たす。
  • 地域支援体制加算2は10の要件項目のうち、8項目以上を満たす。
  • ❶~❾項目は直近1年間の処方箋受付回数1万回当たりの実績。項目は直近1年間の実績。

2024年2月14日答申の情報をもとに編集部作成

「地域支援体制加算は、特にフランチャイズやボランタリーチェーンで共同購入している小規模薬局などにとっては要件の達成が厳しくなり、体制づくりが必要になる。ただ、調剤基本料のアップに加え、新設された算定項目を上手に組み込むことで薬局経営はプラスに転じる可能性がある」と巣山氏は調剤報酬全体を見通して分析する。

【2024年2月答申後の追加情報】

地域支援体制加算については、2024年2月14日の中医協の答申によると、点数が現状からそれぞれ

この記事の関連記事

人気記事ランキング