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Special Report

実例から学ぶ 薬剤師力を発揮する薬剤師外来とは

2024年6月号
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2024年度診療報酬で新設された「がん薬物療法体制充実加算」。医師の診察前に、薬剤師が服薬状況や副作用の発現状況等について確認・評価を行い、医師に情報提供、処方に関する提案等を行った場合に評価される。がん研究会有明病院では、診療報酬で評価される以前から、このような「薬剤師外来」の体制を構築してきた。今回は同院の薬剤師外来を牽引する薬剤部調剤室長の川上和宜氏に、実践例や薬剤師外来あたる薬剤師の姿勢などを伺った。

薬物療法の質を上げるために薬剤師から動きだした薬剤師外来

がん研究会有明病院では、2009年頃から薬剤師外来の取り組みを始めていた。その活動や効果が注目され、2024年度の診療報酬でも評価されるに至ったと川上氏は語る。
同院の薬剤師外来は、薬剤師側から医師に提案して始まった。「薬剤師外来を行う以前は、医師が服薬スケジュール等を含め処方内容を薬剤部に指示していたが、1日何十名もの患者さんを診察する医師には負担も大きく、疑義照会を実施することも多かった」と川上氏は振り返る。また、院内の窓口で患者に薬を受け渡す際に、残薬の話をされることも多かったという。患者が抗がん薬を服薬できていない状況を医師も把握できていないうえに、休薬期間中に誤って残薬を飲んでしまう恐れも高い状況だ。川上氏は「多忙な医師に頼ってばかりではいけない。『薬物療法の質を上げる』という薬剤師本来の役割に向け、積極的にかかわって課題を解決していかなければいけない」と薬剤師外来発起の経緯を話す。

導入によるメリットと薬剤師の認識を変える必要性

薬剤師外来を開始し、薬剤師が積極的に患者にかかわるようになると、薬物療法に関する疑問や懸念等について、「患者さんから相談される機会が増えた」と川上氏。服薬の中止基準(例:カペシタビン服薬時に手足に痛みを感じた時)や便秘時の服薬方法など、服薬中に不安に感じる点について、薬学的な情報を加えて解消していくと、「患者さんの薬物療法への納得感や満足度も高くなった」と川上氏は薬剤師外来の効果を実感する。
薬剤師は、患者からの聴取事項や症状、検査値から副作用の重症度を評価し、「休薬/減量/継続可」などを判断して医師に連携する。このような外来活動を繰り返しているうちに、薬物療法の質が上がっていく。薬剤師外来は、医師の業務負担の軽減や、医師との関係構築、患者の満足度の向上の側面もあると考えられる。
がん薬物療法体制充実加算は、算定要件として、薬剤師が「医師の診察前に情報提供や処方の提案等を行った場合」と定義されている。川上氏は、「診察前」の重要性と、それによって「薬剤師の認識も変えなくてはいけない」と訴える。「従来、薬剤師は医師の処方内容を説明することに専心してきました。薬剤師外来では、診察前に薬剤師が抗がん薬の副作用や服薬の状況を見極め、副作用の重症度を評価し、抗がん薬の休薬や支持療法薬の必要性の有無を判断して処方提案をします。説明にとどまってきた役割を根本的に変えて、薬剤師は医師に薬物療法の提案をし、協働して薬物療法の質を向上させる役割を担わなくてはいけないのです」。

薬剤師外来での対応事例 アドヒアランスが悪くなりやすいもの

アドヒアランスが悪くなる典型例として、胃がん患者における味覚異常があるという。胃がん患者は、胃の切除などにより、もともと食事が摂りにくい状態のうえに、ドセタキセル+S-1、S-1+オキサリプラチン等のレジメンの薬剤の副作用として味覚異常があらわれることが多い。川上氏によれば、抗がん薬の味覚異常には特徴があり、「非常に辛い」や「非常に甘い」ものは感じやすく、全般的には「何を食べても味がしない」ため美味しくないと感じる。食べようと思っても自分が考える味と異なるため、食べたくなくなってしまう。味覚異常に対し亜鉛製剤を提案することもあるが、服用薬も増え、劇的に改善するわけではないことが多いため、川上氏も対応に苦慮している。
また、服薬回数の多さも、当然、アドヒアランスの低下につながる。1日3回の服用薬の場合、川上氏は、3回全ては飲めていない可能性が高いという前提で接している。面談時、まず「お薬は飲めていますか?1日3回はなかなか大変ですよね」と尋ねると「昼は飲めていない」と回答する患者さんは少なからずいる。副作用の発現状況や検査値などを確認し、実質的に1日2回服用となっていても症状が安定していれば、強制的な指導はしない。副作用や症状に問題が生じていれば服薬回数のより少ない薬剤も提案するなど、薬学的な視点で選択肢を検討する。

患者対応時に求められるもの

1)聞き出す力と否定しない姿勢

川上氏は、患者との面談において重要になるのは「いかに話を引き出すか」だと強調する。今まで薬剤師教育は、

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