special Interview

薬剤師が病院を支える「医療安全」という役割

2021年5月号
コロナと闘った1年、そしてこれからの画像
ECMO等の設備を兼ね備え、850床と千葉県下でも有数の病床数を持つ千葉大学医学部附属病院。2020年2月ダイヤモンド・プリンセス号で発生したCOVID-19患者の受け入れを契機に、手探りの状態から感染対策、治療に取り組み、現在も多くの重症患者の治療にあたっています。今回は同院薬剤部のこれまでの活動と2021年4月より高齢者向けの優先接種が始まったワクチン接種について、薬剤部部長の石井伊都子氏にお話し頂きました。

2020年2月から患者受け入れ開始 最多時期の入院患者数は30名以上

皆さんもご存じのように、2020年2月ダイヤモンド・プリンセス号(DP号)内にて700名を超えるCOVID-19の集団感染が発生しました。千葉大学医学部附属病院は、もともとECMO治療で知られていることもあり、東京都や横浜市で対応しきれないDP号の患者受け入れ要請が当院にも来ることが予測されました。そのため、2020年1月末から2月頭の段階で、薬剤部含めて感染制御部、ICT(感染制御チーム)、救急部などと打合せを始め、「新型コロナウイルス感染症対策本部」(対策本部)を設置して準備を進めました。2月初め頃にDP号の患者さんが移送されてきましたが、これが当院初のCOVID-19患者受け入れ事例です。
当院はCOVID-19重症患者のみを受け入れています。最多時期の入院患者数は1日30名以上に上りました。その際はECMOが2名、人工呼吸器が10名弱と、想像を絶するような光景だと思います。現在の入院患者数は10名程度となり、少し状況は落ち着いています。

院内ルールの策定と動画を活用した職員教育

対策本部は、COVID-19対策に関する具体的な院内ルールとして、表のような事項を取り決めて運用しています。
職員へのCOVID-19対策教育には、感染制御部や広報、薬剤部が中心になって動画(P13写真)を作成し、それを確認してもらうようにしました。当動画は千葉大学医学部附属病院HP上の「YouTube千葉大学病院公式チャンネル」からも確認できますが、ガウンなどの個人防護具の脱着方法をはじめ、ワクチンの希釈や接種手順なども解説しています。いまは皆さんスマホを持っているので、こうした動画の活用は、少しの合間に見て学習してもらえる、家に帰ってふと思い返したときにすぐに見直しができるというメリットがあります。対面せずに済むので、感染リスクを考えるうえでも非常に有用ですね。

医療者向けのワクチン希釈手順の画像

医療者向けのワクチン希釈手順の動画。その他、個人防護具の脱着方法や感染予防の基礎知識などが5分程度の動画で解説されている。

責任感と不安で強いストレスを感じる薬剤部職員も

当院には現在67名の薬剤師が勤務しています。通常業務の対応でも人員数が厳しいなか、COVID-19対策によってさらに個々の薬剤師に業務負荷がかかることが多くなりました。緊急事態宣言発令中はBCP(事業継続計画)を策定し、それに準じた対応をしていましたが、BCPと薬剤管理指導や病棟薬剤業務実施加算を両立させるのは非常に大変でした。また、精神面での負担も大きく、COVID-19対策以降、院内で定期的に実施しているストレスチェックで急に高い値を示す薬剤師もいました。
BCPにおいて、薬剤部も院内のゾーン・動線分けと同様に、院内調剤やミキシング、TDM(薬物血中濃度モニタリング)といった中央業務の担当者と病棟業務の担当者は接触しないように動線を分けることにしました。通常時は、病棟業務はチーム単位で担当し皆で話し合いながら行っていました。
それを1日ひとり1病棟担当としたところ、もちろん電話などで相談はできるのですが、責任感と不安で強いストレスを感じていた人もいました。
対策本部内には職員のストレスケアのための精神科医や臨床心理士もおりますが、その方達によれば、COVID-19対策で必要な対応とはいえ自身を変化に対応させなくてはいけないときは誰しもストレスがかかるものだといいます。薬剤部職員のメンタルケアに注意し、ストレスを強く感じている人には面談を行うようにしました。

表 COVID-19対策における院内ルール

  1. 患者さん対応
    入院患者への面会は禁止
    入院患者には全員PCR検査を実施
    外来患者にはマスク着用の義務化。呼吸器疾患等でマスクが着用できない方は、見分けがつくようバッジ等のマークを付けてもらう
  2. 院内の職員対応
    朝、各部署にて職員の健康チェックと報告
    (37.0℃以上の職員数を確認、37.0℃以上は休ませる)
    職員に感染が疑われるような症状がみられた場合は、積極的にPCR検査を実施
    製薬メーカーなど業者との面会は基本的にWebを利用
  3. 設備面の対応
    2つの病棟フロアをCOVID-19患者専用とし、うち1つは合併症が多い、非常に高齢といった特に重症な患者用とする
    レッド(COVID-19患者病室など)・イエロー(COVID-19専用病棟の廊下)・グリーン(COVID-19専用病棟スタッフステーションとその他一般の病棟など)の3つにゾーン分け
    エレベーターなどCOVID-19専用病棟への運搬・動線を指定

石井氏の話をもとに編集部作成

内製、状況に応じた使い分けで消耗品不足に対応 地域からの寄付にも感謝

2020年春の緊急事態宣言時は、他の医療施設と同様に物資が入手しづらい状況でした。周囲を清拭するための消毒用アルコールは80%の消毒用のエタノールでよいので、卸業者から消毒用アルコールの欠品予測情報を受けるとすぐにアルコールの一斗缶を購入しました。実習に来ていた学生にも手伝ってもらって大量のガロン瓶を1回に20本くらい作り、薬剤部作成の消毒用アルコールを院内の各部署に配布しました。ガ…

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