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遺伝性乳がん・卵巣がん治療

2017年7月号
う遺伝性乳がん・卵巣がん治療の画像
第7回アストラゼネカ・オンコロジーサイエンス・メディアセミナー(アストラゼネカ株式会社主催)が2017年5月11日、東京都内で開催された。「日本における遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)とそのアンメットニーズ」をテーマに、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室教授の青木大輔氏が日本における遺伝性乳がん・卵巣がんの状況や遺伝子検査の内容、卵巣がんの治療法を解説した。

遺伝子変異陽性の発がんリスクは20倍~40倍

日本における卵巣がんの罹患率は1万人に1.4人程度で、乳がん(1万人に12.4人)と比べて低い一方、死亡率は高く、女性のがんによる死亡の第1位となっている。卵巣がんは乳がんや子宮頸がん、子宮体がんのように検診が存在しないため早期発見が難しい。そこで注目されているのが遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)だ。
HBOCは、BRCA1/BRCA2遺伝子変異が原因で発症する。卵巣がんの90%を占める上皮性卵巣がんのうち約10%が遺伝性卵巣がんとされ、そのうちBRCA1遺伝子変異は70%、BRCA2遺伝子変異は20%を占めることから、遺伝子変異の有無を調べることによって発がんリスクの高い人をスクリーニングすることが可能だ。
慶應義塾大学医学部産婦人科学教室教授の青木大輔氏によると、BRCA1/BRCA2遺伝子変異をもつ人は遺伝子変異がない人に比べて卵巣がんのリスクが20倍~40倍に上昇するという。
慶應義塾大学病院産婦人科が2009年から2011年に受診した卵巣がん患者の家族歴を調べたところ、20歳以上の上皮性卵巣がん102例のうち21.6%は家族や親族に乳がん患者がいると回答した。また、卵巣がんの家族や親族がいる人は9.8%、乳がんと卵巣がんを併発している家族・親族がいる人も3.9%に上った。
青木氏は、「乳がん・卵巣がんの家族歴がある人の約40%はBRCA1/BRCA2遺伝子変異陽性の可能性がある。家族歴のある患者さんは何らかのマネジメントが必要」と指摘する。ただ、遺伝子変異陽性の人が必ずしもがんを発症するわけではないため、患者の過度な不安をあおらないよう配慮が必要な点も強調した。

遺伝的リスクを評価し、遺伝子検査を推奨

HBOCの初期診療では、遺伝的リスクの評価、本人や家族を心理的にサポートする遺伝カウンセリング、遺伝学的検査(BRCA検査)の3つが重要となる。慶應義塾大学病院産婦人科では、専用の調査表で家族歴を調査し、家族歴のある患者には遺伝カウンセリングを実施している。BRCA検査は発がんリスクを特定でき、早期発見につながる一方、すべての変異は検出できないうえに検査費用が高額なため患者の経済的負担が少なくない。また、遺伝子変異陽性と診断された場合、患者に精神的な不利益を与えることになる。検査のリスクとベネフィットを十分に説明したうえで希望する患者には検査を実施しているという。
仮に遺伝子変異が発見された場合、卵巣がんを予防する方法としては、リスク低減卵巣卵管摘出術(RRSO)が推奨されている。RRSOは両側の卵巣と卵管を摘出する手術だが、日本では保険適用外となっている。がんの発症リスクが高まる前の35歳~40歳に手術を行うことが推奨されるが、出産を希望する女性が多い年代であることから、医師と患者が十分に相談したうえで手術を行う。
HBOC治療薬の開発も進んでいる。アストラゼネカ社は希少疾病用医薬品の指定を受け、BRCA遺伝子変異陽性卵巣がん治療薬オラパリブを開発中だ。
青木氏は、今後は遺伝的リスクに応じた予防や治療が進むと見通したうえで、遺伝学的検査における説明と同意のあり方や遺伝子変異に応じて治療を選択するコンパニオン診断の普及を課題に挙げた。

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