▪ステロイド、BRAF阻害剤、MEK阻害剤の新規リスク
令和5年12月1日に発出された「使用上の注意の改訂等に繋がりうる注目しているリスク情報」として、ステロイド(デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、コルチゾンなど)や、BRAF阻害剤のエンコラフェニブ、MEK阻害剤のビニメチニブにおける「腫瘍崩壊症候群」が挙げられた。
▪腫瘍崩壊症候群とは
「腫瘍崩壊症候群(Tumor Lysis Syndrome;TLS)」とは、がんの治療開始から12〜72時間以内に現れる副作用で、尿酸増加や電解質の不均衡、血液の酸性化、尿の産生減少などの異常を指す。
化学療法をはじめとしたがん治療を実施することで、腫瘍細胞が急速に崩壊する。それに伴い、細胞内の成分が血液中に多量に放出される。その結果として、高尿酸血症、高カリウム血症、高リン血症、急性腎不全などが引きおこされる。がん治療の効果が強いことが証明された状態とも言えるものの、腫瘍崩壊症候群は致命的な病態である。
腫瘍崩壊症候群は、臨床検査値異常であるLaboratory TLS(LTLS)と、直ちに積極的な治療介入が必要なClinical TLS(CTLS)の2つに分類される。LTLSは、高尿酸血症、高カリウム血症、高リン血症(いずれも>基準値上限)のうち、2つ以上を治療開始3日前~7日後までに認める。CTLSは、LTLSに加え、腎機能障害(血清クレアチニン≧1.5×基準値上限)、不整脈、突然死、痙攣のいずれかを認める、または突然死した場合。
▪発現しやすいがん腫と原因の薬剤
腫瘍崩壊症候群は、造血器腫瘍(悪性リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫など)で発現することが多い半面、固形がんでの発現は低くまれな病態