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スイカと腎臓の法則

2018年6月号
スイカと腎臓の法則の画像

「スイカは腎臓によい」ってホント?

「『腎臓によいから』とスイカをわざわざたくさん食べて急死された患者さんを何人も見てきました。」
これは、国立病院機構熊本医療センターのホームページに掲載されている医師の述懐です。いったい、これはどういうことなのでしょうか。
スイカの原産地はアフリカと考えられており、北アフリカのリビアでは5000年前の集落からスイカの種が見つかっています。日本に伝わった時期は定かではありませんが、平安時代(794~1185年)の末期に描かれたとされる『鳥獣人物戯画』(甲巻)には、ウサギが持っている果物の中に縞皮のスイカらしいものが見られます。文献としては、室町時代(1338~1573年)の初期に、臨済宗の僧である義堂周信が著した『空華集』にスイカに関する記述が認められます。
スイカの健康効果についても古くから知られており、古代ローマの博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥス(23~79年)は『博物誌』の中で、解熱作用のある食品として紹介しています。日本では、おそらく江戸時代から「スイカを食べると尿の出がよくなるので、むくみが取れる」という話が徐々に広まっていったようです。
確かに、スイカに含まれるカリウムは、塩分の排泄を促して尿を出やすくします。塩分の摂り過ぎは腎臓に負担をかけますから、スイカによる塩分排泄の作用がクローズアップされて、「スイカは腎臓によい」と広く信じられるようになったと考えられます。また、食品中に含まれるカリウムは、いったん体に吸収されても不要な分は尿に溶けて排泄されるので、スイカを食べ過ぎても問題は生じません。ただし、スイカの健康効果が通用するのは、腎機能が低下していない人に限ります。
腎機能が低下している場合、カリウムがうまく排泄できず、血中に蓄積するようになります。そうした状態のときにスイカをたくさん食べると、高カリウム血症となってしびれなどの神経症状を引き起こしたり、不整脈が出現して、突然死に至ることもあるのです。こうしたことから、多くの医療機関のホームページでは、冒頭に記したようなエピソードを紹介し、注意を促しています。
カリウムを多く含む食品としては、さといも、やまいも、アーモンド、落花生、納豆、ほうれんそう、海藻類、アボカド、バナナ、メロンなどが挙げられます。食品100gあたりのカリウムの含有量は、バナナで360mg、メロンで350mg、スイカで120mg。スイカは特にカリウムを多く含んだ食品ではありませんが、ついつい多く食べてしまいがちなので、腎臓の悪い人にとっては気をつけるべき食品の1つといえます。

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