薬剤師トップ  〉 ファーマスタイル  〉 知識  〉 Medical Diagram  〉 スイカと腎臓の法則
check
薬剤師がおさえておきたい注目の記事
【調剤報酬改定2024よくある質問】最初に処方された1回に限り算定って?
Medical Diagram

スイカと腎臓の法則

2018年6月号
スイカと腎臓の法則の画像

「スイカは腎臓によい」ってホント?

「『腎臓によいから』とスイカをわざわざたくさん食べて急死された患者さんを何人も見てきました。」
これは、国立病院機構熊本医療センターのホームページに掲載されている医師の述懐です。いったい、これはどういうことなのでしょうか。
スイカの原産地はアフリカと考えられており、北アフリカのリビアでは5000年前の集落からスイカの種が見つかっています。日本に伝わった時期は定かではありませんが、平安時代(794~1185年)の末期に描かれたとされる『鳥獣人物戯画』(甲巻)には、ウサギが持っている果物の中に縞皮のスイカらしいものが見られます。文献としては、室町時代(1338~1573年)の初期に、臨済宗の僧である義堂周信が著した『空華集』にスイカに関する記述が認められます。
スイカの健康効果についても古くから知られており、古代ローマの博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥス(23~79年)は『博物誌』の中で、解熱作用のある食品として紹介しています。日本では、おそらく江戸時代から「スイカを食べると尿の出がよくなるので、むくみが取れる」という話が徐々に広まっていったようです。
確かに、スイカに含まれるカリウムは、塩分の排泄を促して尿を出やすくします。塩分の摂り過ぎは腎臓に負担をかけますから、スイカによる塩分排泄の作用がクローズアップされて、「スイカは腎臓によい」と広く信じられるようになったと考えられます。また、食品中に含まれるカリウムは、いったん体に吸収されても不要な分は尿に溶けて排泄されるので、スイカを食べ過ぎても問題は生じません。ただし、スイカの健康効果が通用するのは、腎機能が低下していない人に限ります。
腎機能が低下している場合、カリウムがうまく排泄できず、血中に蓄積するようになります。そうした状態のときにスイカをたくさん食べると、高カリウム血症となってしびれなどの神経症状を引き起こしたり、不整脈が出現して、突然死に至ることもあるのです。こうしたことから、多くの医療機関のホームページでは、冒頭に記したようなエピソードを紹介し、注意を促しています。
カリウムを多く含む食品としては、さといも、やまいも、アーモンド、落花生、納豆、ほうれんそう、海藻類、アボカド、バナナ、メロンなどが挙げられます。食品100gあたりのカリウムの含有量は、バナナで360mg、メロンで350mg、スイカで120mg。スイカは特にカリウムを多く含んだ食品ではありませんが、ついつい多く食べてしまいがちなので、腎臓の悪い人にとっては気をつけるべき食品の1つといえます。

この記事の関連キーワード

この記事の冊子

特集

「薬が飲めない」摂食嚥下障害とは?

私たちは普段、口腔内や咽頭・喉頭の働きを意識しながら飲食することはほとんどありません。毎日当たり前に行っている、食べ物を見て、それを口に運び、咀嚼し、嚥下する一連の動きは実はとても複雑なのです。その過程を細かく見ていきましょう。

摂食嚥下障害のメカニズム 〜「薬が飲めない」に対処する〜の画像
専門医+エキスパートに聞くよりよい服薬指導のための基礎知識

心不全Part.1 患者数120万人 “心不全パンデミック”の恐怖

心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり生命を縮める病気である。2020年の患者数は120万人とも言われています。今回は心不全の治療と管理、患者への服薬指導について解説していただきました。

心不全Part.1 患者数120万人 “心不全パンデミック”の恐怖の画像
専門医+エキスパートに聞くよりよい服薬指導のための基礎知識

心不全Part.2 心不全患者への服薬指導のポイントは?

合併症・基礎疾患をもつ心不全患者は併用薬剤が多く、併存疾患・基礎疾患の治療薬との相互作用に注意する必要があります。患者の生活背景、病態に寄り添う服薬指導とは?

心不全Part.2 心不全患者への服薬指導のポイントは?の画像
ここに注目!知っているようで知らない疾患のガイセツ

知っているようで知らない 疾患のガイセツ 筋ジストロフィー

根本的な治療法がない遺伝子性の病気として知られている筋ジストロフィー。近年は 遺伝子治療に基づく新薬の開発や患者さんのiPS細胞を用いた遺伝子修復の研究などにより、根本的な治療の時代へと大きく転換しつつあります。今回は、独立行政法人国立病院機構箱根病院の名誉院長 石原傳幸氏に最新の治療動向について解説していただきました。

知っているようで知らない 疾患のガイセツ 筋ジストロフィーの画像
はじめる在宅 現場で役立つ基礎知識

はじめる在宅現場で役立つ基礎知識5 感染対策

感染源を「持たない」、「持ち込まない」。この2点が在宅医療において易感染者である患者さんに対する感染予防の基本です。在宅訪問における感染対策で準備しておくこととは?

はじめる在宅現場で役立つ基礎知識5  感染対策の画像
本田先生のHealthy Days

はじめまして本田由佳です

本田先生が女性の健康をテーマに語るHealthyDaysシリーズ。「健康の知識と食は身体を作る基本」をモットーに女性や子どもの健康情報をご紹介してまいります。

はじめまして本田由佳ですの画像
Medical Diagram

「スイカは腎臓によい」ってホント?

「『腎臓によいから』とスイカをたくさん食べて急死された患者さんを何人も見てきました。」これは、熊本医療センターのホームページに掲載されている医師の述懐です。いったい、これはどういうことなのでしょうか。スイカの健康効果について解説します。

スイカと腎臓の法則の画像

この記事の関連記事

薬歴の達人

人気記事ランキング