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骨格の法則

2017年7月号
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ヒトなどの内骨格の生物は、骨と筋肉の健康が重要

映画では、全長数mの巨大昆虫が人を襲うシーンがよく見られます。しかし、昆虫が巨大化の際に新たな能力を身につけず、小さい体が単に大きくなっただけなら、恐れることはありません。なぜなら、その巨大昆虫は動くことができないからです。
昆虫類や甲殻類といった外骨格の生物は、体全体が硬い殻に覆われ、圧力や衝撃から身を守るという長所を持っています。ところが、この殻のせいで大きくなれないという短所もあるのです。大型化を図ろうとすれば重量が増え、その体を支えるために外骨格が厚みを増さなければならず、体を動かすために筋肉を蓄えようとしても厚みを増した殻のために体内にスペースがない、という状態に陥ります。体重が増えると、脚も簡単に折れてしまうでしょう。石炭紀(約3億5900万年前~2億9900万年前)にはメガネウラという体長70cmの巨大トンボがいましたが、その後、これよりも大きなサイズの昆虫は出現していません。むしろ、昆虫は小型化することで、大型化によって問題となる重力の制約を回避でき、しかも天文学的な数まで繁殖することが可能になったと考えられます。
一方、ヒトをはじめとした内骨格の生物は、骨格の外側に筋肉をつけるため、その量は限定されません。同じ年齢の男性なのに、体重が50kg台の人もいれば、250kgを超す力士もいるのはこのためです。
内骨格の生物のうち、哺乳類の大きさに注目すると、世界最小クラスの哺乳類としてはトウキョウトガリネズミが挙げられます。尻尾を除いた体の長さが5cm前後、体重約1.5~1.8gと、1円玉2枚分ほどの重さしかありませんが、哺乳類ではこれが小さくなる限界といわれています。体は小さくなればなるほど体積の割に表面積が大きくなります。通常、体温は外気温より高いので、表面積が大きくなると、体の表面から熱が逃げてしまいます。このことは、体重当たりの消費エネルギーが大きいことを意味します。体が小さくてエネルギーを多く蓄えられないトウキョウトガリネズミは、頻繁に食事をしないと体温を維持することもままなりません。このように、哺乳類が小型化を突き詰めようとすると、食糧が少しでも不足すれば命の危険にさらされます。
逆に、ゾウのような大きい哺乳類は体積当たりの表面積が小さくなり、体温の維持が容易です。飢餓に耐性があり、捕食者から身を守りやすいという利点もありますが、体が大きくなれば体重を支えるために丈夫な骨と筋肉が必要になります。ヒトも同様で、骨が丈夫でなかったら、骨折して身動きがとれなくなりますし、どんどん痩せて筋肉がなくなると動くことが難しくなるでしょう。骨と筋肉がともに健康であることが大切だといえます。

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