高齢者は低栄養に注意
高齢になると全体の食事量が減り、低栄養が問題になることが多いといわれます。あまり動かなくなって全体の活動量が減る→お腹がすかない→食べなくなって栄養が不足する→動けなくなるという悪循環で、食べる量がどんどん減っていきます。とくに減りやすいのがエネルギーとたんぱく質の摂取量です。これらが減るとビタミン・ミネラルの摂取量も減ってきます。また、消化器系や歯が弱くなることで嗜好が変わり、胃にもたれる、硬いなどの理由で肉や魚をあまり食べなくなるのも低栄養になる一因と考えられています。低栄養になると骨粗鬆症や貧血が起こってくるのも高齢者の特徴です。
体重が徐々に減ってきたときはフレイルのサインです。(地独)東京都健康長寿医療センターの調査では、BMI(体格指数)が20以下の「細い人」の生存率は、「太い人」「少し太い人」「少し細い人」のいずれより、顕著に低いという結果が報告されています※1。中高年期は生活習慣病対策で太りすぎを注意されることが多いですが、高齢期はやせすぎのほうが問題なのです。
健康で長生きするための食事とは?
やはり基本はバランスのよい食事です。年をとってくるとおかずが少なくなる傾向があります。主菜と副菜の品数をそろえて、骨や筋肉の材料になる肉や魚もしっかり食べ、栄養が偏らないようにすることが大切です。不足しがちな栄養素は栄養補助食品などで補給するとよいでしょう。高齢者のバランスのよい食事は、農林水産省が作成した「シニア世代の健康な生活をサポート 食事バランスガイド」※2が参考になります。1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいか、食事の目安をわかりやすく示しています。高齢期に必要なエネルギー摂取量はその人の活動量によって異なりますが、一番身体活動レベルが低いところでは、70歳以上では男性が1850kcal、女性が1450kcalです。多くの高齢者が、ここに該当するといわれています。「食事バランスガイド」は1日に必要なエネルギー量が1400~2000kcalの人の適量を示しています。患者さんに栄養指導をするときに役立ててください。
健康食品やサプリメントの注意点
高齢者に人気のサプリメントにセサミン、コンドロイチン、グルコサミンなどがあります。リスクがわかっているもの以外は、患者さんの意志を尊重したほうがよいでしょう。ただし、どんなサプリメントを使っているかはぜひ聞いておいてください。高齢者で心配なのは服用している薬との相互作用ですが、体調が悪くなったときにそのサプリメントをやめることで改善することもあるからです。健康食品やサプリメントの安全性・有効性については、国立健康・栄養研究所のサイト『「健康食品」の安全性・有効性情報』※3に詳しい情報が掲載されています。
- :http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics5_02.html
- :http://www.maff.go.jp/j/balance_guide/b_sizai/pdf/korei_all.pdf
- :https://hfnet.nih.go.jp/
高齢者
栄養管理の基本を知ろう
今話題の「フレイル」という言葉を聞いたことがありますか?英語で「虚弱」を意味する言葉で、加齢に伴って体の機能が低下して、さまざまな健康障害を起こしやすい状態をいいます。1.体重が減ってきた、2.歩く速度が遅くなった、3.握力がなくなった、4.疲れやすい、5.体を動かさなくなった、この5つのうち3つが当てはまるとフレイルと見なされます。フレイルはいわば「要介護状態になってしまうよ」というサイン。食事や運動習慣を改善して、将来寝たきりになるのを防ぎましょう。
高齢者の食事では低栄養に気を付けます。高齢になるとあまり動かなくなって全体の活動量が減る→お腹がすかない→食べなくなって栄養が不足する→動けなくなるという悪循環で、食べる量が減っていきます。とくに減りやすいのがエネルギーとたんぱく質。同時にビタミン・ミネラルの摂取量も減ってきます。低栄養になると骨粗鬆症や貧血になりやすいので、いろいろな食品をバランスよく食べ、骨や筋肉の材料となる肉や魚もしっかり摂るように心がけましょう。
サプリメントや健康食品の注意点
複数の薬を飲んでいる方も多いはずです。サプリメントなどと一緒に飲むと悪い影響を与えることがあるので、必ず医師や薬剤師に相談してください。サプリメントの効果を判断する目安は、1カ月飲んで体調がよければそのまま続けてOK、体調の変化がなければやめる、少しでも気になる症状が出たらすぐにやめる、というのが基本です。セサミン、コンドロイチン、グルコサミンなどが人気ですが、すでに膝の痛みがある人には効果は期待できません。広告に惑わされないことも大切です。
献立を考えるときの工夫
- 年をとるとおかずが少なくなる傾向があります。主菜と副菜の品数をそろえて、骨や筋肉の材料になる肉や魚をしっかり食べ、栄養が偏らないようにしましょう。
- 入れ歯の人や歯が悪い人は柔らかめに調理する、飲み込む力(嚥下力)が弱い人は飲み込みやすい大きさに切る、などです。
- 食が細くて一時にたくさん食べられないときは、おやつで補充しても構いません。栄養補助食品も上手に取り入れましょう。
- お年寄りに食事をつくってあげるときは、栄養バランスだけでなく、嗜好も重視しましょう。食事を楽しめないと食欲もわきません。
- 高齢になるとたんぱく質が不足がちになるので肉や大豆製品などがお勧めの食材です。ひき肉を使うと歯が悪い人でも食べやすいですよ。
おから入り鶏つくね 良質なたんぱく質を摂りましょう!
食事はバランスよく 【材料】(2食分)
(508kcal、たんぱく質42.1g、食塩相当量3.4g)
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鶏ひき肉 150g
おから 50g
卵 1個
白ねぎ(みじん切り) 10cm程度
【調味料】
しょうゆ 大さじ1
めんつゆ(3倍濃縮) 大さじ1/2
砂糖 大さじ1
みりん 大さじ1
水 小さじ1
水溶き片栗粉 適量
【作り方】
- ボールにAと塩ひとつまみを入れて手でよく混ぜ、3cm位の大きさに丸める。
- フライパンに油を熱し、❶を並べて蓋をして中火で焼き、焼き色がついたら裏返し、蓋をして3分ほど焼き、蓋を開けて転がしながら2分ほど焼いて皿に取り出す。
- フライパンに調味料を入れて中火にかけ、少し煮詰まったら水溶き片栗粉を回し入れてとろみをつける。
- ❸につくねを戻し入れ、たれを絡ませ、皿に盛る。