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骨太の方針2017と調剤報酬

2017年8月号
骨太の方針2017と調剤報酬の画像
政府は2017年6月9日、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(骨太の方針2017)*1を閣議決定しました。経済・財政の一体改革では、主要分野の一番目に社会保障が掲げられ、薬価制度の抜本改革や調剤報酬の見直し、薬剤の適正使用を進めていくことが明示されました。骨太の方針2017から今後の医療界の変化を読み解きます。

経済財政の政策を明示 薬価制度の抜本改革が目玉

骨太の方針は国の経済財政に関する政策の基本骨格を示す重要なものです。内閣総理大臣を議長とする経済財政諮問会議で議論したあと、毎年6月に政府が閣議決定します。経済財政諮問会議は、経済財政政策に関して内閣総理大臣のリーダーシップを発揮することを目的に、関係閣僚や有識者から意見を聞く場として内閣府に設置されました。現在のメンバーは、総務大臣や経済産業大臣に、日本銀行総裁やサントリーホールディングス株式会社社長など民間議員を加えた総勢11名。薬価制度の抜本改革などの議論には厚生労働大臣が臨時議員として参加しました。
骨太の方針2017の第1章は「日本経済の課題と考え方」で始まります。日本の雇用・所得環境は、有効求人倍率の上昇や失業率の低下、企業によるベースアップの実施といった改善がみられる一方、潜在成長力と消費は伸び悩み、中間層の活力が低下しています。こうした課題の解決に向けて、労働生産性を上げるための働き方改革として、非正規雇用の処遇改善や長時間労働の是正、少子化対策や女性の活躍推進などで具体的な施策を掲げています。
次に2020年度までに基礎的財政収支の黒字化を達成するため、骨太の方針2015で盛り込まれた経済・財政再生計画を着実に実行し、社会保障の効率化を進め、社会保障の持続性の確保を図るとしています。
 経済・財政再生計画の進捗は「経済・財政再生アクション・プログラム」の改革工程表(2016年12月に改定)*2に基づいて管理されています。工程表では2016年度〜2018年度までを“集中改革期間”と定めて、2020年度に向けた様々な改革を行うことになっています。社会保障分野は44項目について年度ごとの工程が示されていますから、今後どのような改革が実施されるかがわかります。

対物業務から対人業務へ 在宅訪問や残薬解消を重視

骨太の方針2017で社会保障について何が記載されているのか詳しく見てみましょう。社会保障分野のトピックスは次の8つです。①地域医療構想の実現、医療計画・介護保険事業計画の整合的な策定等、②医療費適正化、③健康増進・予防の推進等、④平成30年度診療報酬・介護報酬改定等、⑤介護保険制度等、⑥薬価制度の抜本改革、患者本位の医薬分業の実現に向けた調剤報酬の見直し、薬剤の適正使用等、⑦人生の最終段階の医療、⑧生活保護制度、生活困窮者自立支援制度の見直し。骨太の方針で薬価や調剤報酬に関して具体的に記述されるようになったのは2014年からです。それだけ薬価や調剤報酬が経済財政に与える影響は大きくなってきているのです。
調剤報酬については、薬剤の調製などの対物業務に係わる評価を引き下げ、「在宅訪問や残薬解消などの対人業務を重視した評価を、薬局の機能分化の在り方を含め検討する」方針です。また「保険薬局が実際に果たしている機能を精査し、それに応じた評価を推進する」とも記載されました。骨太の方針では「推進する」「検討する」「促進する」「目指す」という表現で政府の力の入れ具合がわかります。薬局の機能分化は「検討する」ですから、政府も重視していることが見てとれます。
薬剤の適正使用においては、病状が安定している患者等に対し医師のリフィル処方を推進することや、高齢者の生活習慣病治療薬等の重複投薬・多剤投与を含む処方の在り方を見直すことになりました。後者について厚労省は内部に検討会*3を設置して、高齢者の処方に関するガイドラインの作成を検討しているところです。
セルフメディケーションの推進に関する事項も盛り込まれました。その中では「健康の維持・増進に関する相談や一般用医薬品等を適切に供給し、助言を行う機能をもった健康サポート薬局の取り組みを促進する」と書かれています。
また、かかりつけ薬剤師・薬局が地域の多職種・関係機関と連携し、患者の服薬情報を一元的・継続的に把握する方策のひとつとして、あらゆる薬局で活用可能な電子お薬手帳を推進していきます。
今回は薬価制度の抜本改革が注目を集めました。薬価調査および薬価改定の毎年実施や新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度の抜本見直し、費用対効果評価の本格導入による薬価制度の改革などです。新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度は、革新性のある医薬品の薬価を加算する仕組みですが、必ずしも革新性のある医薬品にだけ加算される仕組みになっていないとの指摘があり、対象を見直して、より革新的な新薬に絞って加算する仕組みに改める方針です。保険適用時の見込みよりも大幅に販売額が増加した薬剤の薬価の引き下げや長期収載品の薬価の引き下げも検討することとしています。
一方で、今回の骨太の方針に盛り込まれなかった事項もあります。先発医薬品と後発医薬品の差額を患者負担とする案*4が素案では記載されていましたが、最終的に削除されました。しかし、改革工程表には検討項目として残っていることから、今後の議論が注目されます。
薬価制度の抜本改革はこれから厚労省内の議論が本格化し、年末までには各項目の内容が固まります。これらの議論は診療報酬・介護報酬の同時改定と合わせて進められていきますから、これからの医療業界の動向を決める重要な議論となるでしょう。

  1. 内閣府HP「経済財政運営と改革の基本方針2017」
    http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2017/decision0609.html  
  2. 内閣府HP「経済・財政再生アクション・プログラム2016(平成28年12月21日)」(工程表編)
    http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/index.html  
  3. 高齢者医薬品適正使用検討会(本年4月に設置)ttp://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-iyaku.html?tid=431862  
  4. いわゆる参照価格制度

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