本記事は、公益財団法人 日本医療機能評価機構が薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業にて発行している「共有すべき事例」を参考に、事例の概要と関係する薬剤のポイントを中心にサクッと読めるようファーマスタイル編集部が作成、紹介しています。
「共有すべき事例」原本はこちらから
https://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/contents/sharing_case/index.html
スーグラ錠の手術前の服用休止
- スーグラ錠は、手術前後の投与は禁忌とされている(添付文書参照)。
- 患者から手術を受ける予定を聴取した際は、服用薬を術前に休止する必要があるかを確認する。
医療機関Aで手術を受ける予定の患者に、医療機関Bよりメトグルコ錠500mgとスーグラ錠25mgが処方された。薬剤師は、メトグルコ錠500mgには休薬指示が出ていたが、スーグラ錠25mgには休薬指示が出ていないことを患者から聴取。医療機関Bの処方医に確認を行ったところ、スーグラ錠25mgも術前に服用休止となった。
- 本事例は、手術を受ける予定の患者にSGLT2阻害薬が処方された際、薬剤師が術前の休薬の有無を処方医に確認した事例。
- 手術の前後に服薬を休止する可能性がある薬剤が処方されている患者から手術を受ける予定を聴取した際は、服薬休止の判断が処方医・医療機関や手術内容により異なることを理解したうえで、処方医へ服用を休止する必要がないか確認することが重要。
- 日本糖尿病学会1)、日本腎臓学会2)、日本循環器学会・日本心不全学会3)は、それぞれSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendationを公表しており、推奨される手術前後の休薬期間を具体的に示している。
- https://www.jds.or.jp/uploads/files/recommendation/SGLT2.pdf
- https://jsn.or.jp/medic/data/SGLT2_recommendation20221129.pdf
- https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/06/jcs_jhfs_Recommendation_SGLT2_Inhibitors__HF.pdf
参考 |
糖尿病治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendationより手術時に関する記載 手術が予定されている場合には、術前3日前から休薬し、食事が十分摂取できるようになってから再開する。 |
ビラノア錠の「空腹時」服用タイミング
- 「空腹時」に服用するビラノア錠は、目安として食事の1時間前から2時間後を避ける。
- 製剤によっては、服薬前後に食事を避ける時間が異なるものもあるため注意する。
患者にビラノア錠20mg 1日1回1錠夕食前が処方された。同剤は空腹時に服用する薬剤であるため、処方医に疑義照会を行った結果、用法が寝る前に変更。処方医は食前30分の服用であれば食事の影響を受けないと考えた可能性がある。薬剤師は、患者に薬剤を交付する際、ビラノア錠20mgは1日1回寝る前に服用すること、夕食から2時間以上空けることを説明した。
- ビラノア錠に関する食事の影響(添付文書参照):健康成人男性20例にクロスオーバー法で空腹時及び食後(高脂肪食)に本剤20mgを単回経口投与したとき、空腹時に比べ食後投与時のCmax及びAUC0-tはそれぞれ約60%及び約40%低下。
-
一般的に、「空腹時服用」は食事の1時間前から2時間後までを避けて服用することを指すが、製剤によっては服薬前後に食事を避ける時間が異なるものもあるため注意する。
参考 空腹時に服用する薬剤例
アビラテロン、ピミテスピブ、チラブルチニブ、カボザンチニブ、ダブラフェニブ、エルロチニブ、イトラコナゾール(内用液)、アルギン酸、リファンピシン、アナモレリン※1、アファチニブ※2、セマグルチド(遺伝子組換え)(錠)※3
- 一般的に朝の起床直後は空腹状態と考えられるので、「起床時に服用し、1時間以上たってから朝食をとる」が望ましい
- 食事の1時間前から食後3時間までの間の服用は避ける
- 1日1回 空腹時(1日の最初の食事または飲水の前)に約120ml以下の水とともに服用