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女性の疾患とホルモン製剤の正しい理解Part.1 月経困難症・PMS/PMDD

2019年7月号
婦人科月経関連疾患 月経困難症・PMS(月経前症候群)/PMDD(月経前不快気分障害)の画像
女性のヘルスケア領域における疾患とホルモン製剤の正しい理解
毎月の月経に随伴する月経困難症やPMS(月経前症候群)/PMDD(月経前不快気分障害)の症状、また更年期に女性ホルモンレベルの低下によって起こる更年期障害の諸症状は、QOLを低下させる。これらのスタンダードな薬物療法としてOC(経口避妊薬)・LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)やHRT(ホルモン補充療法)がある。これらにおける薬剤の適切な服用と治療継続には、薬局での対応が重要な役割を担っている。東京歯科大学市川総合病院産婦人科教授の髙松潔氏に、各疾患の特徴と治療について解説していただいた。

Part.1 月経困難症やPMS/PMDDを改善するLEPOCとともに正確な理解の上で服用指導を

生涯月経回数の増加 現代女性が抱える健康リスク

月経困難症とは、日常生活に支障をきたし、臥床・鎮痛薬を必要とするほどの月経痛をはじめとする病的症状を指す。思春期から性成熟期の女性の25%以上に見られるとされ、症状は下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、吐き気、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、イライラ、下痢、憂鬱などである。痛みは月経の初日から2日目が最もひどく、痙攣性、周期性を伴うのも特徴だ。
月経時に子宮内膜上皮から産生されるプロスタグランジンにより子宮は収縮する。子宮の収縮は、月経血を子宮から排出させる合目的な作用ではあるが、過収縮により子宮筋を貫く血管を攣縮させて、子宮筋の低酸素状態を招くことから痛みが発生するといわれている。

Check Points

 LEPの適切な使用は子宮内膜症の予防につながる
 OCやLEPの種類や適応を覚える
 OCやLEPの慎重投与と禁忌について理解する
 OCやLEP中止後の月経再開や妊孕性について理解する
表1 機能性月経困難症と器質性月経困難症
  機能性月経困難症 器質性月経困難症
好発年齢 10歳代~20歳代前半 20歳代後半以降
症状 月経開始より2~3日間
持続する下腹部痛、腰痛、下痢、嘔吐
月経時以外にも及ぶ持続性疼痛
加齢に伴う変化 次第に軽減 徐々に増悪
既往症 ないことが多い 認めることがある
内診所見 正常または発育不全 器質的病変による
原因 プロスタグランジン過剰分泌
による子宮の過収縮・虚血
子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫、
骨盤内炎症、骨盤内癒着、子宮頸管狭窄、子宮奇形など

堀川道晴ほか; 臨婦産. 2006; 60: 468-471を一部改変

図1 初経から月経困難症発症までの年数

図1 初経から月経困難症発症までの年数の画像

Suvitie PA, et al: J Pediatr Adolesc Gynecol, 2016; 29: 97-103.

症状の背景に何らかの疾患がある器質性月経困難症と、疾患を伴わない機能性月経困難症がある(表1)。月経開始 間もない10歳代では機能性月経困難症が多いが、「若年時のひどい月経痛を放置し続けると、子宮内膜症になりやすくなる」と東京歯科大学市川総合病院産婦人科教授の髙松潔氏は語る。
また、現代女性は昔の女性に比べ生涯月経回数が格段に多いことが、月経困難症や子宮内膜症などの増加の一因とされている。初経年齢が早まったことや、少子化・晩産化による出産回数の減少、授乳期間の短縮により、生涯月経回数は1900年頃の約3倍にもなるという。髙松氏は「子宮内膜症の発症機序にはまだ不明な点も多い」としながらも、「毎月の月経のたびに月経血が卵管を逆流して腹腔内に飛び出し、増殖するという『逆流説(子宮内膜移植説)』をとるならば、月経回数の多い現代女性の子宮内膜症などのリスクは過去に比べて多くなり、放置すると将来的な不妊につながる可能性もある」と語る。
月経困難症の有病率は、初経から1年で約5割に上るという報告がある(図1)。中高生女子の患者は母親とともに受診することがほとんどだが、OC(経口避妊薬)やLEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)で治療することへの母親の不安感が強かったり、前述の子宮内膜症発症リスクなどの知識がないと、治療開始に抵抗を示す場合もある。「まず、鎮痛薬や、芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)や当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)などの漢方薬の処方を通じて信頼関係を築き、その後OC・LEPへと段階的に進めることもある」と髙松氏は語る。
疼痛のコントロールに最も多く処方されるNSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛薬)は、プロスタグランジンの産生過剰を抑制することにより鎮痛作用を示す。ただし、痛みを我慢し続け、プロスタグランジンの分泌のピーク時に服用するのでは、タイムラグにより効果が出にくい。月経痛発現の初期段階、または月経開始時に服用することで、効果が得られやすく、服用回数の減少にもつながる。

LEPは排卵を抑制し月経困難症の改善に効果

低用量OCは、含有されるエストロゲンおよび黄体ホルモンの排卵抑制効果などによる安全な避妊薬として、日本では1999年に発売が開始された。当初より、副効用として月経困難症の痛みや過多月経を抑制することが知られていた。その後、含有するホルモンはOCと同じであるが、月経困難症の治療薬として2008年に、ノルエチステロン・エチニルエストラジオール配合製剤(ルナベル®)が子宮内膜症に伴う月経困難症の適応で認可され、LEPと呼ばれるようになった。LEPは自費のOCと区別するための日本での便宜上の区分である。
OC・LEP製剤は「エストロゲン量を減らす」「黄体ホルモンの種類を変える(第1世代から第4世代へ)」「配合量を変える(1相性・3相性)」「飲み方を変える(休薬期間の短縮)」によって、より効果的かつ副作用を減らす方向で進化してきた。低用量OCとはエチニルエストラジオール(EE…

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