向精神薬の用量調整のケーススタディを配信している本企画で参考にしているのが、2021年5月に株式会社じほうから発行された『ゆるりとはじめる精神科の1冊目』です。今回は本書籍で学べることをご紹介します。
書籍『ゆるりとはじめる精神科の1冊目』の第1章では、精神科薬物療法に携わる薬剤師が押さえておきたい前提知識として、まず「精神疾患をもつ患者との関わり方」「患者とのコミュニケーション、どうとる?」「医師の処方の考え方を知ろう」「剤形の使い分け」「ポリファーマシーの捉え方と対応」という5つのテーマを取り上げています。向精神薬の服薬指導で確認しておきたいこと、患者さんとうまくコミュニケーションをとるためのコツ、意外に大切な剤形の話――など、精神科薬物療法特有の“とっつきにくさ”を解消するための基本的な知識が整理されています。
第2章の疾患編では、精神疾患ごとに症状や診断、治療方法が簡潔にまとめられ、向精神薬が治療の中心となるうつ病や双極性障害、統合失調症、不安症、睡眠障害のほか、認知症、せん妄、発達障害、薬物・アルコール依存も紹介されています。第3章の薬剤編では、精神科領域で使われる各薬剤の特徴だけでなく、「向精神薬の受容体プロファイル」「注意したい薬物相互作用」といった向精神薬の薬理作用や、「現場でみられる主な適応外使用」など実臨床に即した使い方と注意点などにも言及されています。さらに第4章の有害事象編では、精神科領域で起こりうる有害事象ごとに、その特徴や原因薬剤、対処法について、事例も含めながらしっかりと解説されています。
そして、第5章の精神科ものがたり編には、本企画の第1回、第2回で取り上げたような向精神薬の用量調整だけでなく、精神科にまつわるエピソードが小説スタイルでふんだんに紹介されています。例えば、患者さんとの接し方、話の聞き出し方など、服薬指導や患者対応に活かせる内容がリアルに描かれているので、実臨床でもきっと参考になるでしょう。タイトルからして気になりますね(表)。ちなみに、ファーマスタイル2023年7月号の記事で登場した「等価換算」についても、代表的な等価換算表が掲載されています。
最後に、薬剤師として精神科薬物療法に尽力されている編著者の思いを紹介して、今回の連載を終えたいと思います。
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