
顔に現れる強い痛み
患者さんが訴える症状は、顔の痛みです。食事や歯磨き、洗顔、化粧、ひげ剃りなど、日常生活の何気ない動作時に、ピリッと鋭い痛みが顔面の片側に走ります。
痛みは発作的に起こり、持続時間は数秒から数分と短いのですが、きわめて強いのが特徴です。一方で慢性的な痛みやしびれを伴う痛みの場合には三叉神経痛と診断されないことが多々あります。
三叉神経痛には、発症してから期間をおいて、数カ月から数年にわたる緩解期を有するという特徴もあり、痛みの改善と悪化をくり返しながら経過します。
年間発生率は10万人当たり、女性5.9、男性3.4。生涯有病率は、0.3%と言われています。好発年齢は50~60歳代ですが、年齢とともに増加傾向にあるとする報告もあります1)2)。
後述するように、痛みの原因は頭蓋内にありますが、歯科、耳鼻科、内科などで異常なしと診断され、最終的に脳神経外科を受診する患者さんが少なくありません。
痛みの原因は頭蓋内にある
三叉神経は、脳神経の中で一番太い神経で、顔の感覚を脳に伝えています。脳幹部から左右に1本ずつ出て、目、あご、頰へと3つの方向に枝分かれして伸びているため、三叉神経と呼ばれています(図1)。この三叉神経が過敏になり、顔に痛みを感じるのが三叉神経痛です。
図1 三叉神経の名称

監修:尼崎賢一氏
三叉神経痛は周囲に存在する血管に圧迫されるため痛みが起こります。つまり、血管が三叉神経に当たると、その情報が脳に伝わり、顔に痛みが生じたように感じると考えられています。しかし、なぜ血管が三叉神経を圧迫するのかは、まだわかっていません。
問診、検査と診断
まずは患者さんから痛みの症状や、すでに薬物治療の経験があればその効果、病気の経過を詳しく聞き取ります。この問診は診断に不可欠であり、とても重要です。その情報を得た上でMRIによる画像検査を行います。MRIでは三叉神経への血管の圧迫の様子を確認することができます(図2)。三叉神経痛のうち数%は、脳腫瘍が原因で起こっていることがあり、その鑑別も重要です。