薬剤師トップ  〉 ファーマスタイル  〉 業界  〉 学会クローズアップ  〉 特別講演「COVID-19 最近の話題」
check
【特定薬剤管理指導加算】「イ(RMP)」「ロ(選定療養)」算定Q&A
学会クローズアップ

特別講演「COVID-19 最近の話題」

2022年12月号
特別講演「COVID-19 最近の話題」の画像

2022年11月5~6日、「変革への挑戦~未来の医療を支えるために~」をテーマに、第16回日本薬局学会学術総会が開催された。ここでは、新型コロナウイルス感染症をテーマにした忽那賢志氏による特別講演「COVID-19 最近の話題」を紹介する。

オミクロン株の感染力の要因

忽那氏は講演前半で、新興感染症の概要や新型コロナウイルス感染症のここまでを振りかえった後、現在のオミクロン株について解説した。新型コロナウイルス感染症は、オミクロン株が出現したことで爆発的に流行が広がった。オミクロン株の感染力が強い理由として、忽那氏は「世代時間の短さ」と「免疫逃避の強さ」の2つを挙げた。
「世代時間」とは感染者が次の感染者を生み出すまでの間隔を指す。従来株の世代時間は約5日だったがオミクロン株では約2日に短縮された。これにより蔓延するまでの速度が上がる。
「免疫逃避」とは免疫から逃れる力を指す。オミクロン株では感染歴やワクチン接種の経験者であっても感染するケースが多く、感染の連鎖が起こりやすい。「オミクロン株の亜系統のBA5になってから特に免疫逃避の力が強くなっています。」と忽那氏は指摘する。

オミクロン株対応ワクチンの仕組みと効果

こうした中で登場したオミクロン株対応ワクチン。このワクチンは、従来株のmRNAとオミクロン株のスパイク蛋白のmRNAが1対1で配合されている。これにより、オミクロン株のスパイク蛋白に対する抗体が体内で産生され、感染・発症と重症化を防ぐことが期待できる。忽那氏は、「オミクロン株対応ワクチンは、従来のワクチンに比べオミクロン株に対する中和抗体(感染予防効果に相関するとされる指標)を多く産生するとのデータがあります。デルタやアルファなど他の変異株に対する中和抗体もオミクロン株対応ワクチンで少し高くなるというデータもあり、多様性のある免疫を獲得できるだろうと考えられています」と説明する。

軽症患者の治療と重症化リスク

感染後の発症から一定期間は体内でウイルスが増殖している。この時期の治療には抗ウイルス薬や中和抗体薬を用いてウイルスの増殖抑制や中和する。現在では、軽症例に対する治療薬の選択肢が増加している(表)。ただし、今のところ、軽症患者のうちこうした治療薬の対象となるのは重症化リスクのある人のみ。酸素や人工呼吸管理が必要な重症段階では宿主免疫反応の発生が考えられるため、ステロイドやトシリズマブなど免疫抑制薬を使用する。これまで知られている重症化リスクは、糖尿病、肥満、心不全、肺疾患、高齢などだが、「これらに加えて考慮すべきは、『ワクチン接種の有無』です。接種していない人では亡くなる頻度が高くなるデータがあります」と忽那氏は強調する。

表 軽症患者に対する治療薬
抗ウイルス薬(末尾がビル) 中和抗体薬(末尾がマブ)
  • レムデシビル
  • モルヌピラビル
  • ニルマトレルビル/リトナビル
  • カシリビマブ/イムデビマブ
  • ソトロビマブ

忽那氏の講演内容より作成

コロナ治療における抗ウイルス薬の特徴

オミクロン株以降、オミクロン株に対する中和抗体の活性が弱くなり、中和抗体薬が使いにくくなったという。そのため、オミクロン株に対する現在の治療薬は、抗ウイルス薬のレムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル/リトナビルの3種からの選択が原則となる。
レムデシビルは最初に承認された抗ウイルス薬で、軽症患者への有効性が認められている。ただし、点滴のため軽症患者には使いにくいのが難点。一方、投与量調整で腎機能障害例や肝機能障害例、妊婦にも使用可能など、禁忌が少ないことは利点という。
モルヌピラビルはウイルスのRNA合成でエラーを起こさせることで増殖を阻害する。
ニルマトレルビル/リトナビルは、2剤併用によりニルマトレルビルの血中濃度を高く、長く維持することができる薬剤。効果の高さもデータで示されているが、難点は併用注意の薬剤が多さ。
忽那氏は、「点滴できる状況ならレムデシビルでよいが、多くの場合は内服薬になるので、基本的には有効性が高いニルマトレルビル/リトナビルを使います。併用薬や腎障害などで使用不可の際はモルヌピラビルを選択します」と治療の流れを解説した。

本講演は2022年11月6日に発表された講演内容のまとめです。最新の新型コロナウイルス感染症の状況とは異なる可能性があります。

この記事の冊子

特集

かゆみのメカニズムを理解する

「かゆみでは死なない」。このような認識からかゆみは痛みより軽視され、研究も大きく遅れをとっていました。しかし、痛みとは別にかゆみの神経伝達経路があることが発見されたことでかゆみ研究が進み、かゆみの発生メカニズムが徐々に明らかになってきました。順天堂かゆみ研究センターでかゆみ研究に携わる冨永光俊氏に現在までにわかっている知見について解説いただきました。

かゆみのメカニズムを理解するの画像
Special Report

医療情報・システム基盤整備体制充実加算ポイント解説

政府のマイナンバーカード一体型健康保険証(マイナ保険証)の導入を加速させる方針もあり、今年10月に特例的な診療報酬改定により、マイナ保険証利用時の患者負担額を減額する「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」が新設されました。今回は新設された「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の概要を解説します。

医療情報・システム基盤整備体制充実加算ポイント解説の画像
Special Report

服薬指導に役立つ患者様向け資材特集 かゆみ編

かゆみの裏には様々な疾患が関連しています。本記事ではかゆみ関連の疾患の患者向け資材を紹介します。本誌面で紹介しきれない服薬指導や会話で役立つ情報の資材も多くありますのでぜひ探してみてください。

服薬指導に役立つ患者様向け資材特集 かゆみ編の画像
学会クローズアップ

特別講演「COVID-19 最近の話題」

2022年11月5~6日、「変革への挑戦~未来の医療を支えるために~」をテーマに、第16回日本薬局学会学術総会が開催された。ここでは、新型コロナウイルス感染症をテーマにした忽那賢志氏による特別講演「COVID-19 最近の話題」を紹介する。

特別講演「COVID-19 最近の話題」の画像
m3オリジナル

薬剤師業務 意識調査

薬剤師業務に関して、どのような課題を感じているのか、医療従事者専用サイト「m3.com」の薬剤師会員にアンケート調査を実施致しました。

薬剤師業務 意識調査の画像

この記事の関連記事

人気記事ランキング