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【特定薬剤管理指導加算】「イ(RMP)」「ロ(選定療養)」算定Q&A
Special Report

薬局で活躍する管理栄養士から学ぶ、明日から役立つ指導方法

2021年6月号
薬局は地域の相談役「相談者主体」で栄養指導の実践と継続の画像

食事と健康の関係性は言うまでもない。今号特集で取り上げたIBDを含め、糖尿病や脂質異常症など既に何らかの疾患を抱える患者さんは日々の食事のケアが重要になることや、疾患に至らなくとも健康診断の結果を受けて食生活の見直しを考える方も多い。今回はクオール株式会社関東第二薬局事業本部関東第四事業部の管理栄養士、宮代由佳氏に薬局での栄養相談についてお話を伺った。

クオール薬局の栄養相談体制

全国に817店舗(2021年5月31日時点)を展開するクオール薬局は、薬局店舗における栄養相談にも注力して取り組んでいる。クオール薬局はエリアごとの事業部制を敷き、各事業部は30店舗程度で構成される。管理栄養士は各事業部に2~3名が在籍し、事業部エリア内の1店舗に常勤しながら、エリア内全店舗の栄養相談にあたっている。

離乳食、生活習慣病、在宅など幅広く関わる管理栄養士

宮代氏は、通常はクオール薬局石神井公園店に勤務しているが、同薬局店舗から訪問やオンラインで繋ぐなどして他店舗での栄養相談にも対応している(写真1)。最近は新型コロナ流行の影響を受けてオンラインで実施する機会が増え、相談方法の形態が変化してきていると話す。

対面で栄養相談を行う際の相談コーナーの画像
写真1:対面で栄養相談を行う際の相談コーナー。宮代氏は、「検査値などの確認は、オンラインよりも対面の方がスムーズに実施できる」と話す。(写真はクオール薬局狛江店)

栄養相談における食事指導内容の比重は、管理栄養士が担当するエリアの環境や時期によって異なる。宮代氏は現在、離乳食相談に対応することが多く月に20~30件、成人を対象とした栄養相談は月に数件ほどの割合だ。
過去には在宅にも関わり、地域ケア会議への参加や居宅訪問も行っていたという。居宅訪問の際には、患者さんの食事内容の確認や、実際に食事の様子を見てアドバイスをするなどしていた。現在は少なくなってしまったが、体組成計や口腔内の細菌チェックといった機器を用いた健康イベントも数多く開催し、栄養相談を行うこともあった。イベントには薬剤師が同席することもあり、「自宅に多数の薬があって、どういった作用の薬かわからなくなってしまった」、「飲み合わせを改めて確認したい」といった参加者の薬の悩みを拾う機会にもなっていたという。

栄養相談を始めるきっかけ

1) 離乳食相談

同薬局の離乳食相談は、医師と連携して実施することが多い。乳幼児健診後に、薬局で離乳食に関する説明を受けるよう医師から促される。宮代氏によれば、「月齢によって悩みはさまざまだが、与えている食品の種類に偏りが見られたり、食事量や固さがわからない、アレルギーを心配して食品の種類を増やすことできない、ミルク・母乳と食事の量が適正かといった相談を受けることが多い」という。新型コロナ流行以降、マスクができない乳幼児を連れた外出は避けたいといった要望も多く、宮代氏は相談者の要望に応じてオンライン・対面を選択して対応している。

2) 生活習慣病、健康診断による栄養相談

成人に関していえば、具体的な栄養相談に来る患者さんは、糖尿病や脂質異常症を罹患した方が多く、宮代氏は「今までの経験上、糖尿病と脂質異常の両方があり、悩まれている患者様が多い」と指摘する。また、40~50歳代の男性で、体重、尿酸値、中性脂肪といった健康診断の項目でひっかかってしまい、何から対策を始めたらよいかという相談も多いという。
栄養相談のきっかけは、薬剤師から連携を受けて始めることもあれば、店舗に掲示したポスターなどを見て、患者さんから直接依頼を受けるといったケースもあり、「割合的には半々くらい」と、宮代氏。相談依頼者が服薬していれば、宮代氏は栄養相談に臨む前に、薬剤師から服用中の薬の特徴や注意事項を確認しておく。糖尿病の治療薬のなかには、食欲増進や体重増加を招くものもあり、指導内容に影響する可能性があるためだ。

5つのステップで進め、継続的な指導に繋ぐ

宮代氏は次のような流れで栄養相談を進めている 。

1相談者の現状確認
  • 指導の判断材料とするため、直近の健康診断結果や血液検査結果を必ず持ってきてもらう(体重測定を依頼することもある)。
  • 事前の食事記録の作成は相談者の負担にもなるので、相談時に数日間の食事内容を確認する。
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2相談者主体の目標設定
  • 重要なのは「相談者自身が目標を設定すること」。薬局の栄養相談では、管理栄養士はあくまでフォロー役であり、指導内容を実践する主体は相談者本人である。
  • たとえば糖尿病治療の場合、目指すべき医療的な数値はあるが、まずは患者さん自身がいつまでに体重をどの程度の値まで落としたいか、という希望に応じた目標を設定する。
  • 「自炊できない」、「付き合いで飲み会が減らせない」といった相談者の譲れないポイントを考慮する。
  • 目標設定が高すぎる場合は、達成可能な範囲の目標値の提案もするが、基本的には相談者の希望に合わせる。栄養指導が医師の依頼であれば、医師の依頼内容を相談者に伝えたうえで、話し合って目標を決める。
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3指導内容をひとつずつ実践
  • 最初に指導内容を3つ程度挙げ、初回はそのうちの1つを実践するよう提案する。その1つが実践できれば、2回目の相談以降に2つ目、3つ目と進めていく。基本的に1回の栄養相談の指導内容は1~2つ。
  • 目標設定時に確認した相談者が譲れないポイントは、「代わりにこれを実践すれば問題ない」として、相談者が指導内容に納得して継続的に取り組めることを優先する。
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4次回予約の確保
  • 継続的に指導を受けることが効果的と説明し、「1回の栄養相談では、なかなか食生活を変えることは難しいし、困ることも多いと思うためフォローしたい」と相談者に伝えて、初回相談時に次回の相談予約を取るようにする。
    「次回予約を取るか取らないかで継続に大きな差が出る」と宮代氏はその重要性を指摘する。
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5薬局全体でフォロー
  • 栄養相談実施後には、クオール薬局独自の「相談記録」といった薬局内の情報共有ツールや薬歴に、来局日や相談内容、目標、指導事項、経過などを記録する。
    栄養指導は1回の相談で効果がみられるものではなく、継続的に指導の効果を確認する必要があるので、記録を残して経過を追う。
  • 薬局内で情報を共有することで、管理栄養士が不在時に相談者が来局しても、店舗の誰もが「前回はこうした内容のお話をしたようですね」、「数値がよくなっていたようですね」といった声掛けができるようになる。
  • 店舗全体で見てもらっているとの実感を相談者が持つことで、栄養相談に対するモチベーション維持や指導継続のバックアップになる。

最初の指導内容はハードルを下げて継続させることを優先する

宮代氏は、具体的な指導内容では「ハードルを上げ過ぎないこと」を大事にしている。
疾患にもよるが、相談者がどうしてもお酒をやめられない、尿酸値の高いという方であれば、初回の栄養相談では少量の飲酒は認めたうえで、尿酸を体内から出すために「1日2リットルを目標に水を飲むようにしましょう…

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