2020年から義務化となった投薬後の患者フォローアップへの取り組みが本格化してきています。フォローアップシリーズの第2回は、埼玉県で4店舗を展開されている株式会社かくの木のかくの木薬局を取材し、コロナ禍でのフォローアップやフォローアップによる今後の展望などについてお話を伺いました。
フォローアップ本格化への意識
当社では、電話でのフォローアップは義務化以前より日常的に実施していました。例えば、服薬指導の中で気になることがあった患者さんに後日電話をしたり、お薬をお届けしている訪問診療の患者さんには体調確認や服薬指導のために電話をかけたりしていました。
フォローアップへの意識が高まったのは、2015年の『患者のための薬局ビジョン』がきっかけです。より多くの外来患者さんにフォローアップを行うために、その時間をどうやって確保するのか、どのような患者さんを対象に行うべきなのか、という点は課題として感じていました。
コロナ禍で見えてきたフォローアップ対象者
外来患者さんへのフォローアップを本格的に始めようとしていたころ、新型コロナウイルス感染症の流行が始まりました。2020年の第1波、第2波の頃は多くの患者さんが病院の受診を控え、フォローアップどころか、当薬局の来局者数は減少していきました。
経営に影響する一方で、現場では来局されない患者さんを心配する声が上がりました。そこで、流行以降来局のない患者さんに「お変わりはありませか?」というメッセージのハガキを発送することにしました。
ハガキには一定の効果があり、すぐに受診、来局いただけた患者さんもいました。一方で、音沙汰のない患者さんもまだいらっしゃいました。
当薬局は総合病院の門前薬局のため、患者さんの年齢や疾患は多岐にわたりますが、特に心配に感じたのが、糖尿病や高血圧などの慢性疾患の患者さん、がん患者さんなどでした。こうした患者さんには個別に電話し、継続的な受診や服用の重要性をお伝えしました。
受診控えの対策として始めたフォローアップでしたが、対象患者の絞り込みプロセスは、結果として外来でのフォローアップ対象者を考えるプロセスにつながることになりました(表)。
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コロナ禍により生じた業務状況の変化
コロナ禍では、新たな業務も始まっていました。
ひとつは2020年4月に発出された通称「0410対応」です。オンライン診療や電話受診が増え、薬局でも電話での服薬指導、薬の配送などの業務が徐々に増えていきました。その後、医療機関に発熱外来が開設されると、自宅療養の患者さんへの抗ウイルス薬や解熱鎮痛薬などの配送に加え、電話での服薬指導、2日後にも急変等がないかを確認するためにフォローアップを実施しました。
通常業務と並行して行わなければならないので、現場は非常に混乱しましたが、自宅療養者へのフォローアップは再受診や追加処方が必要な患者さんの拾い上げだけでなく、孤独に過ごす患者さんの精神的支えにも役立っていたようでした。ちなみに、新型コロナウイルス感染症の陽性患者さんへのフォローアップ件数は、一番多い時でひと月に75件でした(2022年8月)。
フォローアップの実際
まずは患者さんへのフォローアップの説明です。フォローアップの意義や内容についての丁寧な説明を心がけています。現時点では勧めた患者さんの8割以上が了解してくださっています。
対象は表で示した患者さんですが、このほかに服薬指導をした際に服薬に不安を感じられている方、アドヒアランスが良くない方、副作用の発現の可能性が高い方などにもフォローアップを実施し、適宜、医師にフィードバックしています。
フォローアップの連絡方法は、電話か携帯のショートメッセージ(SMS)を選択していただいています。ここ1年程度で徐々にSMSが増えている状況です。また、薬歴ソフトウエアのバージョンアップにより、フォローアップと薬歴が連動できるようになったので、電子管理が容易になりました。そのおかげもあり実施件数は徐々に増加しており、2022年8月には1カ月で143件(電話:23件、SMS:120件)という結果になっています。
リフィル処方箋のフォローアップ
当薬局ではリフィル処方箋の対応を実施しており、リフィル処方箋の患者さんに対してもフォローアップを行っています。現在、1カ月に10件程度のリフィル処方箋を応需しており、領域は眼科、整形外科、循環器内科などです。
リフィル処方箋では忘れずに来局していただくことも大切なため、投薬時に次回の来局日を確認し、来局予定日の1週間前にフォローアップします。体調が安定されている方がリフィル処方の基本ですが、フォローアップして気になる体調変化がある場合は、受診勧奨しています。
フォローアップの実例
事例1は、フォローアップした結果、剤形が変更になった例です。
チオトロピウム吸入用カプセルが長年処方されていたのですが、吸入できている感覚がないとのことで、投薬時に吸入方法について指導しましたが、患者さんが自宅で継続して正しく吸入できているか分かりません。フォローアップでそれを確認し、吸入薬の剤形が変更となりました。その後も正しい使い方を習慣づけも可能となりました。
処方薬 |
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フォローアップ の背景 |
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フォローアップ の概要 |
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事例2は、OTC薬が関連した例です。
SGLT2阻害薬の開始後に強い便秘に悩まれていた患者さんで、フォローアップでは便秘症状がエンパクロフロジンによる可能性を説明し、受診を勧奨しました。その結果、リナクロチドが処方され便秘は解消、エンパグリフロジンの服用も継続することができました。
ご自身では気づきにくい副作用の早期発見にも、フォローアップは役に立ちます。もし薬局から電話しなかった場合、OTC薬を大量に服用していたかもしれませんでした。
処方薬 |
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フォローアップ の背景 |
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フォローアップ の概要 |
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事例3は、入院中の処方追加が関与した例です。
入院中に腎盂腎炎による血圧上昇のため降圧薬が追加され、退院後、過度の血圧低下、ふらつきを感じていました。主治医は退院時の処方継続を指示されましたが、1週後のフォローアップ時も状況が変わらないことから服薬情報提供書を提出し、降圧薬は処方中止に至りました。
入退院という変化のある期間を、薬剤師が丁寧に関わることで患者さんが安心できる薬物療法を提供できたのではないかと思っています。
処方薬 |
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フォローアップ の背景 |
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フォローアップ の概要 |
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フォローアップで重要となる情報共有
当社は、本店であるかくの木薬局の他に3店舗あります。各店舗にはフォローアップの対象患者を決めたり、マニュアルを作成する中心的なメンバーを配置し、その4店舗のメンバーで月に1度、各店舗のフォローアップの情報共有をしています。
グループ内の4店舗はすべて地域連携薬局・健康サポート薬局を取得しており、それぞれ、病院門前の店舗、訪問業務中心の店舗、栄養相談に注力する店舗、主に精神科の処方箋応需とOTCに注力する店舗と、特徴やフォローアップの対象者が異なります。しかし、フォローアップの成功例やうまくいかなかった例を報告し合うことで、フォローアップの際に新たに注意すべき事項や、患者さんへ状態の聞き取りのコツなどを共有し参考にしています。
フォローアップによる今後の展望
私たち薬剤師は、いつも目の前の患者さんのために何をすべきかと同時に、医療の将来を考えていかなければなりません。地域連携薬局、また健康サポート薬局として、フォローアップを重症化や新たな疾患の予防に繋げていきたいと考えています。
現在、第7次医療計画が進められており、その中の5疾病である、がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患では、体重の増減や食生活、運動、睡眠などの生活習慣の管理が重要です。また最近、注目されている慢性心不全患者の入退院の繰り返しを減らすためには、退院後に患者に寄り添う薬局薬剤師の役割が有効と感じています。フォローアップで生活習慣について聞き取った上で、管理や指導をどのように行っていくか、今後の課題です。