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【特定薬剤管理指導加算】「最初に処方された1回に限り算定」って?
Special Report

薬剤使用期間中の患者フォローアップの実際<第2回>

2022年10月号
薬剤使用期間中の患者フォローアップの実際の画像

2020年から義務化となった投薬後の患者フォローアップへの取り組みが本格化してきています。フォローアップシリーズの第2回は、埼玉県で4店舗を展開されている株式会社かくの木のかくの木薬局を取材し、コロナ禍でのフォローアップやフォローアップによる今後の展望などについてお話を伺いました。

フォローアップ本格化への意識

当社では、電話でのフォローアップは義務化以前より日常的に実施していました。例えば、服薬指導の中で気になることがあった患者さんに後日電話をしたり、お薬をお届けしている訪問診療の患者さんには体調確認や服薬指導のために電話をかけたりしていました。
フォローアップへの意識が高まったのは、2015年の『患者のための薬局ビジョン』がきっかけです。より多くの外来患者さんにフォローアップを行うために、その時間をどうやって確保するのか、どのような患者さんを対象に行うべきなのか、という点は課題として感じていました。

コロナ禍で見えてきたフォローアップ対象者

外来患者さんへのフォローアップを本格的に始めようとしていたころ、新型コロナウイルス感染症の流行が始まりました。2020年の第1波、第2波の頃は多くの患者さんが病院の受診を控え、フォローアップどころか、当薬局の来局者数は減少していきました。
経営に影響する一方で、現場では来局されない患者さんを心配する声が上がりました。そこで、流行以降来局のない患者さんに「お変わりはありませか?」というメッセージのハガキを発送することにしました。
ハガキには一定の効果があり、すぐに受診、来局いただけた患者さんもいました。一方で、音沙汰のない患者さんもまだいらっしゃいました。
当薬局は総合病院の門前薬局のため、患者さんの年齢や疾患は多岐にわたりますが、特に心配に感じたのが、糖尿病や高血圧などの慢性疾患の患者さん、がん患者さんなどでした。こうした患者さんには個別に電話し、継続的な受診や服用の重要性をお伝えしました。
受診控えの対策として始めたフォローアップでしたが、対象患者の絞り込みプロセスは、結果として外来でのフォローアップ対象者を考えるプロセスにつながることになりました(表)。

表 主なフォローアップ対象患者
  • 糖尿病、高血圧で新規・処方変更(増量・減量・追加・中止・種類変更)があった患者
  • 吸入薬を新規・処方変更された患者
  • 抗がん剤が注射されている患者、抗がん剤服用患者
  • 小児科にお子様を通院させるご家族(特に新規、処方内容変更、服薬に不安がある場合)
  • COVID自宅療養患者
  • リフィル処方箋患者

コロナ禍により生じた業務状況の変化

コロナ禍では、新たな業務も始まっていました。
ひとつは2020年4月に発出された通称「0410対応」です。オンライン診療や電話受診が増え、薬局でも電話での服薬指導、薬の配送などの業務が徐々に増えていきました。その後、医療機関に発熱外来が開設されると、自宅療養の患者さんへの抗ウイルス薬や解熱鎮痛薬などの配送に加え、電話での服薬指導、2日後にも急変等がないかを確認するためにフォローアップを実施しました。
通常業務と並行して行わなければならないので、現場は非常に混乱しましたが、自宅療養者へのフォローアップは再受診や追加処方が必要な患者さんの拾い上げだけでなく、孤独に過ごす患者さんの精神的支えにも役立っていたようでした。ちなみに、新型コロナウイルス感染症の陽性患者さんへのフォローアップ件数は、一番多い時でひと月に75件でした(2022年8月)。

フォローアップの実際

まずは患者さんへのフォローアップの説明です。フォローアップの意義や内容についての丁寧な説明を心がけています。現時点では勧めた患者さんの8割以上が了解してくださっています。
対象は表で示した患者さんですが、このほかに服薬指導をした際に服薬に不安を感じられている方、アドヒアランスが良くない方、副作用の発現の可能性が高い方などにもフォローアップを実施し、適宜、医師にフィードバックしています。
フォローアップの連絡方法は、電話か携帯のショートメッセージ(SMS)を選択していただいています。ここ1年程度で徐々にSMSが増えている状況です。また、薬歴ソフトウエアのバージョンアップにより、フォローアップと薬歴が連動できるようになったので、電子管理が容易になりました。そのおかげもあり実施件数は徐々に増加しており、2022年8月には1カ月で143件(電話:23件、SMS:120件)という結果になっています。

リフィル処方箋のフォローアップ

当薬局ではリフィル処方箋の対応を実施しており、リフィル処方箋の患者さんに対してもフォローアップを行っています。現在、1カ月に10件程度のリフィル処方箋を応需しており、領域は眼科、整形外科、循環器内科などです。
リフィル処方箋では忘れずに来局していただくことも大切なため、投薬時に次回の来局日を確認し、来局予定日の1週間前にフォローアップします。体調が安定されている方がリフィル処方の基本ですが、フォローアップして気になる体調変化がある場合は、受診勧奨しています。

フォローアップの実例

事例1は、フォローアップした結果、剤形が変更になった例です。
チオトロピウム吸入用カプセルが長年処方されていたのですが、吸入できている感覚がないとのことで、投薬時に吸入方法について指導しましたが、患者さんが自宅で継続して正しく吸入できているか分かりません。フォローアップでそれを確認し、吸入薬の剤形が変更となりました。その後も正しい使い方を習慣づけも可能となりました。

事例1 吸入薬変更後のフォローアップ
患者情報フォローアップ事例の画像60歳代、男性、COPD、前立腺肥大
処方薬
[呼吸器] チオトロピウム吸入用カプセル、ブデソニド吸入粉末剤
[泌尿器] タムスロシン
※前立腺肥大の既往があるが、チオトロピウム吸入の継続指示を両医師に確認済
フォローアップ
の背景
  • 2009年よりチオトロピウム吸入カプセルの処方継続
  • 2022年3月に医師より「吸入できていない感覚が時々あるので指導願います」と処方箋上に指示あり
  • 吸入指導実施の際に、本人より吸入時にカプセルが震えている感触や音が分からないとの回答あり。再度吸入方法を確認、それでもカプセルでの吸入が難しい場合、レスピマットへの変更も考慮していただけるよう、吸入指導の結果とともに医師へ情報提供
  • 2022年4月よりレスピマットへ変更、投薬ではカプセルとレスピマットの吸気量の違いを説明、フォローアップを開始
フォローアップ
の概要
  • 1週間後のフォローアップで、吸気量が問題なく、むせることもないことを確認。噴霧が目で見えることで吸入できている実感ありとの回答

事例2は、OTC薬が関連した例です。
SGLT2阻害薬の開始後に強い便秘に悩まれていた患者さんで、フォローアップでは便秘症状がエンパクロフロジンによる可能性を説明し、受診を勧奨しました。その結果、リナクロチドが処方され便秘は解消、エンパグリフロジンの服用も継続することができました。
ご自身では気づきにくい副作用の早期発見にも、フォローアップは役に立ちます。もし薬局から電話しなかった場合、OTC薬を大量に服用していたかもしれませんでした。

事例2 エンパグリフロジン新規患者のフォローアップ
患者情報フォローアップ事例の画像80歳代、男性、心不全、腎機能低下
処方薬
[循環器] エドキサバン、エソメプラゾール
[腎内科] エンパグリフロジン、イミダプリル、フェブキソスタット、アトルバスタチン、アルファカルシドール、ブロチゾラム
フォローアップ
の背景
  • 心不全のため、前々回よりフロセミドが追加、前回よりフロセミドからエンパグリフロジンに変更
  • 血糖値は正常範囲の上限近くで、心不全と腎機能低下があるため、低血糖と脱水の副作用の確認として、フォローアップを開始
フォローアップ
の概要
  • 1週間後のフォローアップで、強い便秘症状、食欲低下。OTCのコーラックを服用したが効果がみられず、とにかく便を出したいとのことから浣腸の購入を検討していた
  • エンパグリフロジン服用により便が硬くなっている可能性を説明し、受診勧奨。内科受診によりリナクロチド処方となる
  • リナクロチド処方1週間後、便通改善との回答あり。エンパグリフロジンは服用継続

事例3は、入院中の処方追加が関与した例です。
入院中に腎盂腎炎による血圧上昇のため降圧薬が追加され、退院後、過度の血圧低下、ふらつきを感じていました。主治医は退院時の処方継続を指示されましたが、1週後のフォローアップ時も状況が変わらないことから服薬情報提供書を提出し、降圧薬は処方中止に至りました。
入退院という変化のある期間を、薬剤師が丁寧に関わることで患者さんが安心できる薬物療法を提供できたのではないかと思っています。

事例3 退院後初処方でアジルサルタンが追加されていた患者へのフォローアップ
患者情報フォローアップ事例の画像80歳代、男性、脳梗塞、肺がん、膀胱がん
処方薬
[神経内科] クロピドグレル、アトルバスタチン、アジルサルタン
[泌尿器科] エンシュア
フォローアップ
の背景
  • がんの影響もあり、食事があまり取れない状態が続き、低栄養
  • 腎盂腎炎で入院し、入院中に血圧上昇のためアジルサルタンが追加され、退院後、神経内科受診後に来局
  • 神経内科にて入院前より服用中のクロピドグレルとアトルバスタチンに加え、アジルサルタンが追加となっていた
  • 投薬時の収縮期血圧が100mmHg程度、ふらつきも見られたため、神経内科へアジルサルタンの必要性の疑義照会を行う。入院時の主治医よりアジルサルタン継続の指示があるため、今回は変更なしとの回答、毎日の血圧測定を指導、フォローアップを開始
フォローアップ
の概要
  • 1週間後のフォローアップ時点で、収縮期血圧100mmHg前後、時々ふらつくとの回答があったため、服薬情報提供書を提出、アジルサルタンの処方中止
  • アジルサルタン中止後は、収縮期血圧は100mmHgを少し超える程度、ふらつきは改善との回答あり

フォローアップで重要となる情報共有

当社は、本店であるかくの木薬局の他に3店舗あります。各店舗にはフォローアップの対象患者を決めたり、マニュアルを作成する中心的なメンバーを配置し、その4店舗のメンバーで月に1度、各店舗のフォローアップの情報共有をしています。
グループ内の4店舗はすべて地域連携薬局・健康サポート薬局を取得しており、それぞれ、病院門前の店舗、訪問業務中心の店舗、栄養相談に注力する店舗、主に精神科の処方箋応需とOTCに注力する店舗と、特徴やフォローアップの対象者が異なります。しかし、フォローアップの成功例やうまくいかなかった例を報告し合うことで、フォローアップの際に新たに注意すべき事項や、患者さんへ状態の聞き取りのコツなどを共有し参考にしています。

フォローアップによる今後の展望

私たち薬剤師は、いつも目の前の患者さんのために何をすべきかと同時に、医療の将来を考えていかなければなりません。地域連携薬局、また健康サポート薬局として、フォローアップを重症化や新たな疾患の予防に繋げていきたいと考えています。
現在、第7次医療計画が進められており、その中の5疾病である、がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患では、体重の増減や食生活、運動、睡眠などの生活習慣の管理が重要です。また最近、注目されている慢性心不全患者の入退院の繰り返しを減らすためには、退院後に患者に寄り添う薬局薬剤師の役割が有効と感じています。フォローアップで生活習慣について聞き取った上で、管理や指導をどのように行っていくか、今後の課題です。

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