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Special Report

調剤薬局事務員の業務を広げることで薬剤師を対人業務に注力させ、会社利益を拡大する

2023年2月号
調剤薬局事務員の業務を広げることで薬剤師を対人業務に注力させ、会社利益を拡大するの画像

現在、薬剤師においては対物業務から対人業務への移行が求められています。その中で、いま注目されているのが、調剤薬局事務員の役割です。薬剤師の補佐にとどまらず、調剤薬局の責任の一端を担う存在となることが期待されています。いち早く調剤薬局事務員の役割に着目し、その活用に踏み切ったHYUGA PRIME CARE株式会社の巣山貴裕氏と、調剤薬局事務員として後進の指導に当たる清水万里氏に話を伺いました。

設立以来、在宅訪問薬局事業が業務の中心

当社は2007年11月、福岡県太宰府市で設立されました。現社長の黒木の「地域に密着した医療を提供できるような調剤薬局をつくりたい」という思いが出発点になっており、今現在(2022年12月)、全国に39店舗(関東で13店舗、福岡地区で26店舗)あります。メインは在宅訪問に特化した調剤薬局で、その7~8割を占めます。
調剤薬局以外の事業としては、中小薬局向けの経営支援などを行うコンサルティング業務(きらりプライム事業)、介護施設の運営をする介護本部事業、それらに付随するICTの開発を行っています。
現在当社は営業利益率で10%を目標としています。人件費がかかる在宅訪問業務を中心にする薬局としては、非常に高利益率を保っている企業体ではないかと自負しています。

参考 きらりプライム サービス

01
HYUGA PRIMARY CARE社の在宅ノウハウの公開
在宅支援
HYUGA社これまで培ってきた独自の在宅におけるノウハウを公開
02
在宅用報告システムの貸与
在宅支援
HYUGA社が開発した在宅に必要案薬剤師の書類作成業務、提出業務をICT化したシステムを貸与
03
在宅業務の総合サポート
在宅支援
1回4時間~の在宅患者獲得手法レクチャー、アクションプラン策定、営業広報同行など、要望に応じた加算の取れる仕組みづくりを支援
04
オンコール対応サポート
在宅支援
以下のオンコール対応をサポート
  • 休日夜間出勤
  • 在宅患者獲得支援/助言等
※エリアによっては非対応
05
薬剤交渉代行
運営支援
医薬品の納入価格交渉をHYUGA社で代行。自社単体での直接交渉より高い割引を実現でき、経営状況の改善を支援
06
店舗教育支援サービス
運営支援
在宅服薬支援に関することから、薬局経営に関することまで幅広く研修を実施
きらりプライム サービスに関するお問い合わせ先
TEL 092-558-2120 WEB きらり薬局 https://kirari3.com

調剤薬局事務員だけで店舗が回るような体制を目指す

当社では調剤薬局事務員をPCという役割としています。PCはファーマシー・クラーク(Pharmacy Clerk)の略です。PCと呼ぶことで、単なる事務ではなく、医療関係者の1人であることを意識づける目的があります。
そのため一般にいわれる調剤薬局事務の業務内容よりも幅広く「薬剤師でなければできない業務以外は全部担当する」という認識でいます。
処方箋入力はもちろん、その後の処方箋に基づいたピッキング業務、調剤業務も、薬剤師でなければできない散剤、水剤等々以外はほぼすべてPCに担ってもらいます。在宅業務は先服薬で、薬剤師が服薬指導で患者さん宅に行った後で、PCが薬の配送をします。
薬剤師は基本的に対人業務に特化してもらいます。当社は在宅訪問薬局でもあり、薬剤師は外に出て往診同行をしたり、在宅で服薬指導をしたりすることが多いです。その為、店舗に残る薬剤師が少なくなっても、PCを主軸として店舗が回るような体制をとっていきたいと考えています。

調剤事務未経験者の採用を優先

当社ではPCとしては、調剤事務未経験者を優先して採用するようにしています。その理由としては、従来の調剤事務業務しか経験してなかった方だと、事務業務以外の業務を行うことに難色を示すことがあり、これまで調剤事務を経験してなかった方が当社のPC業務への適応が高いためです。
当社の場合、PCは入社後、まずピッキング業務や調剤業務を覚えてもらいます。今まで薬剤師が担っていた部分をPCが担当することで、薬剤師が在宅業務に専念できるようにするとともに、薬剤師の人件費の軽減にもつながります。
PCに対する教育や研修に関しては改善を繰り返しています。現在はOJT(日常業務につきながらの職業教育)の形で行っていますが、それだと人的依存度が高いのが課題です。来期からは東日本と西日本に教育店舗を1店舗ずつ作り、そこで教育することを考えています。現在も「教育パッケージ」があり、入社1日目、1週間目、1か月目等の研修内容をまとめていますが、それだけではまだ足りないのが現状です。
PCに対してはスキルチェックがあり、処方箋が入力できる、保険がわかる、調剤業務がどこまでできるなどの細かいチェック項目があり、その1つ1つができるようになるとスキル評価の報酬が加算される仕組みになっています。それに加えて、今年4月からはPCのレベルに合わせた給与体系に変更する予定です。一般に事務の給料は低いのですが、当社では業務内容が幅広い分、通常よりも多く還元したいと考えています。

図 HYUGA PRIMARY CAREでの薬剤師とPCの業務分担フロー
調剤行為に関しては、薬剤師の管理指示のもと運用
工程 標準時間 担当 すること
前日準備
30秒/件 PC
(薬剤師)
翌⽇処⽅受付予定の施設の受付チェック表、患者の調剤シートをピッキング
処方受付
- PC
(薬剤師)
  1. 残薬調整等の疑義照会・臨時薬の有無を⽬視確認し、ナンバリングスタンプを押印する
  2. 処⽅箋FAXをコピー
  3. 調剤シートをカゴに⼊れる(⼊⼒確認時でも可)
処方入力
2分/件 PC
(薬剤師)
  1. 処⽅⼊⼒
  2. 変更があれば薬剤師へ報告➡(必要があれば疑義照会・MTAV表更新)
  3. 必要書類(薬袋等)の印刷
  4. 薬袋や薬情等を調剤シートが⼊ったカゴに振り分ける
入力確認
処方監査
1分/件 薬剤師
  1. 調剤録と処⽅箋コピーによる⼊⼒確認
  2. 調剤シートを⾒て注意事項を確認
  3. 併⽤薬・相互作⽤・重複投薬等の確認
  4. 疑義照会
  5. 調剤シートの更新(処⽅変更時)
ピッキング
2分/件 PC
(薬剤師)
  1. ATC充填薬以外の集薬
  2. 調剤容器のピッキング
  3. 調剤容器に患者名、薬品名を記⼊
一包化
6分/件 PC
(薬剤師)
  1. 調剤指⽰書と分包機Do履歴の照合
  2. 処⽅変更ありの場合、Do履歴の修正
  3. 別包や印字などの調剤⽅法は調剤シートMTAV表でなどで判断
  4. 分包機へのデータ送信
  5. 分包機のDTAジャーナル⼜は分包機本体の指⽰画⾯を⾒ながらDTAへ薬を⼊れる
  6. 散剤や⽔剤の計量・分包(薬剤師)
  7. 軟膏剤の計量や混合(薬剤師)
ファースト
7分/件 PC
(薬剤師)
  1. ⽇付印字等の確認
  2. ⼀包化薬の錠数・刻印確認
  3. 調剤シートを確認し、ホチキスどめやライン引き
  4. 薬袋等が揃っているかの確認
ラスト監査
10分/件 薬剤師
  1. 薬情チェック(⼊⼒チェック)
  2. 調剤指⽰書にMTAV表、印字⽇付の記⼊
  3. 2を元に⼀包化薬監査を⾏い、その他処⽅された薬すべての監査を⾏う
  4. 調剤シートに調剤指⽰書の貼付(ファイリング)
配達準備
- PC
(薬剤師)
  1. 印刷物等の仕分け
  2. ⼀包化薬のちぎり
  3. 報告書事前⼊⼒
  4. 受付チェックシートの印刷
  5. カレンダー・ボックスセット
訪問
服薬指導
- 薬剤師
  1. 施設へ時間通りに訪問
  2. ⼿帳ラベルの貼付
  3. 残薬の確認
  4. 薬情、受付チェックシートを使⽤して施設職員へ説明
  5. 居室を訪問し、本⼈へ⾯会、体調変化や副作⽤が疑われる症状の有無などについて聞き取り
  6. 定期薬の納品予定⽇を説明
配達
- PC
(薬剤師)
  1. 施設へ訪問
  2. 定期薬のセット
報告書の
作成・提出
  薬剤師 報告書(薬歴)を作成し主治医、ケアマネに提出

HYUGA PRIMARY CARE社 提供

発想を変えることで利益率が上がる薬局に

処方箋の入力は現状ではPCの主要な仕事ですが、当社では集中入力センターをつくり、そこで一括して入力することを考えています。また、調剤の外部委託も議論されています。それができるようになれば調剤センターをつくり、そこで一括して調剤を処理することが可能になります。
そう考えると、今後はPCも薬剤師のように、対物業務から対人業務にシフトしていってほしいと思っています。すでに薬局は薬剤師で回していく時代ではなくなっています。いかに事務を雇って、その事務を教育することで戦力にしていくか。そう発想を変えるだけで、利益率が高い薬局になるはずです。

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